『令和4年通信利用動向調査』(総務省)によると、クラウドサービスを利用している企業の割合は年々増加をつづけており、令和4年(2022年)には72.2%に達しています。「場所・機器を選ばずに利用できる」「資産・保守体制を社内に持つ必要がない」など多くのメリットが挙げられている一方、押さえておきたいのがクラウドにはオンプレミスとは異なる導入・運用のメソッドがあるということです。
本記事ではその中でもコストにまつわる「クラウドコスト最適化(CCO)」についてご紹介します。
クラウドはそもそも、コスト面でオンプレミスに対し優位性があるとして導入される場合も少なくありません。
経済産業省の委託調査報告書である『令和3年度重要技術管理体制強化事業(クラウドを活用した重要情報管理体制強化に向けた調査事業)調査報告書』掲載のアンケート調査では、積極導入企業におけるクラウド導入理由の2番目に「コスト削減」が位置付けられており、特に「初期投資額の削減」で効果が得られていると感じる企業は多いようです。
ただし、コスト面に懸念を覚える企業もまた多く、さらに「利用無し→消極利用→積極利用」とクラウドの利用頻度が高いユーザーほど、懸念が高まる傾向にあることもまた同報告書に記述されています。
クラウドの多くは利用料やデータ量、規模に応じた従量課金制であり、初期投資額の削減に適している一方、「運用コストが予想外に大きくなってしまった」「これまでのシステム構成を継続するには多くのコストがかかる」といった事態の原因ともなります。
そこで企業に求められるのが「クラウドコスト最適化(CCO)」の考え方と手法をインストールすることなのです。
「クラウドコスト最適化(Cloud Cost Optimization:CCO)」とは、その名の通りサーバー、ストレージ、はたまた個々のアプリケーションなど、クラウドサービスの利用コストを最適化することです。
CCOが必要になるのは、クラウドサービスの運用コストはオンプレミスと異なり動的に変化するため、運用しながら常に最適化のためのモニタリングとプランニングをしなければならないからです。
例えば、クラウドの利用において注意しなければならないのが「クラウドスプロール」という問題です。スプロール(sprawl)とは、無秩序な拡大を意味し、クラウドスプロールはクラウド利用の状況や規模が管理者にもコントロールできなくなってしまっている状況を意味します。ICT利用が容易になった弊害として、サーバースプロール、VMスプロールなどクラウドに限らず管理が無秩序化してしまうリスクは以前より存在していました。クラウドの場合はより立ち上げやリソース拡大が容易なため、スプロールに陥るリスクが高いといえます。
また、そもそも適切な容量やスペックのプランを選定できているのかという問題も存在します。冗長化は企業がITシステムの可用性を保証するにあたって決して無視できないポイントです。とはいえ、オンプレミスと同じ考えで冗長性確保に努めれば、オートスケーリングやフェイルオーバーといったクラウドのメリットが享受できず、コストは必要以上のものとなります。
さらに、クラウドのキャパシティープランニングにおいては、冗長性を確保しながら負荷に耐えうる構成を予測するのではなく、負荷テストを通して適切なパフォーマンスや利用形態を見極めることが求められるのです。もちろん、実際に運用しなければわからないことは多数存在します。そこで、デプロビジョニングなどスピード感を持ってコストを最適化できるのがクラウドの利点でもあるのです。
また、そもそもコストを可視化することはクラウドコスト最適化のはじめの一歩といえます。特にマルチクラウドやハイブリッドクラウドといった環境を利用するにあたっては、データを包括的に管理するダッシュボードなどの構築も導入にセットとなるといっても過言ではありません。
従量課金や適切なパフォーマンスの見極めのほかに、クラウドコスト最適化のポイントと言えるのが「エグレス料金」の観点です。エグレス料金とは、クラウドサービスから外部へデータを取り出す際の転送にかかる料金であり、データ量の増加に応じて莫大となる可能性があるとともに、ベンダーロックインの要因ともなりかねません。クラウド導入時には、月々の利用料とともにエグレス料金にも着目し、今後の利用拡大に際してネックとなるケースはないか検討するべきでしょう。
事前に利用枠をまとめ買いする「リザーブドインスタンス」、遊休リソースが割り当てられる「スポットインスタンス」など、プランによっては大幅な割引が存在するのもクラウドならではの特徴であり、エグレス料金についても交渉次第で最適化できる可能性はあります。
クラウドを利用するすべての企業が導入すべき「クラウドコスト最適化(CCO)」について解説してまいりました。ここで重要なのが、コストを“抑制”するのではなく“最適化”するという視点です。必要に応じてリソースやスペックを迅速に切り替えられるのがクラウドの特性であり、コストに関してもそのメリットは同様です。クラウドとセットで、ブラックボックスや余剰リソースはないかを監視し、最適化のサイクルを回しつづけられる体制を構築していきましょう。