コロナ禍の現在、生産性を向上させるための働き方として注目されているのがテレワークです。
ここではテレワークを導入することによって生産性は向上するのか、生産性向上につながらない場合の原因として考えられる要因、生産性を向上させるためにはどのように対策をとれば良いのかについてご紹介します。
新型コロナウイルスが流行し、特に緊急事態宣言後は出社して働くことが難しいケースが増えたことから生産性が落ち込んでしまった企業もあります。
この状況を打破すべく、多くの企業がテレワークを導入しました。
テレワークを導入するにあたり、「仲間とコミュニケーションが取りにくくなる」「新たな環境を整えなければならない」などのデメリットはありますが、電車通勤や人が多く集まる場所での労働を避けることによって、新型コロナウイルスの感染リスクを抑えられたり、ワーク・ライフ・バランスが向上したりするなどのメリットもあります。
総務省が行った「通信利用動向調査(令和元年調査)」によると、テレワークを導入している企業の割合は20.2%であり、特に情報通信業や金融・保険業の導入割合が高い結果となりました。
導入目的の中で最も多かったのが、「業務の効率性(生産性)向上」で全体の68.3%です。平成30年時点(※1)で導入目的として同理由を挙げた割合は56.1%だったため、生産性を求めて導入を決めた企業が大幅に増えたことがわかります。
※1 平成30年調査では「定型的業務の効率性(生産性)」として調査
参考:(PDF)総務省:令和元年通信利用動向調査の結果[PDF]
しかし、Adobe(アドビ)が2020年9月28日に発表した調査によると、在宅勤務を経験した日本人のうち43%が「在宅勤務は生産性が下がる」と回答しています。「生産性が上がる」と回答したのは21%にとどまっています。
参考:Adobe Blog:アドビ、グローバル調査「COVID-19禍における生産性と在宅勤務に関する調査」を発表
また、2020年11月4日に東京商工会議所が発表した資料(調査期間:2020年9月28日~10月12日)では、前回調査時(調査期間:2020年5月29日~6月5日)と比較するとテレワークの実施率が14.2ポイント減少し、53.1%との結果になりました。
調査結果の中で「一時期テレワークを実施していたものの取りやめた企業」が22.1%ありますが、そのうち45.7%が「業務の生産性が下がる」ことを理由として挙げています。
参考:東京商工会議所 中小企業のデジタルシフト推進委員会:「テレワークの実施状況に関するアンケート」調査結果
この結果から、テレワークでは生産性が低下してしまうケースがあることがわかります。
「テレワークを導入すればそれだけで生産性が向上する」と考えるのではなく、生産性が下がるケースもあるため、その原因を理解し対策を練ることが重要です。
では、なぜ生産性が低下してしまうケースがあるのでしょうか。その原因として、各個人に関係する要因と、会社側の環境等による要因に分けて考えることができます。
特に新型コロナウイルスの急速な感染拡大の影響により、十分な準備期間を取ることができないままテレワークを導入した企業では、テレワーク時の報連相システムの構築や、テレワークに適した通信環境・使用ツールなどの用意が不十分なまま開始してしまったケースが多く、生産性に悪影響を与えていると考えられます。
各要因の中には自分で対策を取ることができないものがありますが、テレワークの働き方にまだ慣れていない、集中できる環境が整えられていないなどの要因はある程度自分で対策を取ることも可能です。
参考:(PDF)内閣府:新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査[PDF]
テレワークで生産性を上げるためには、各個人の生活環境を整え、コミュニケーションにも目を向けていくことが重要です。
体が健康な状態でなければ生産性の向上は期待できないため、食事や睡眠、適切な休息などに注意し、一日の中で運動を行ったりすることも大切です。
また、生産性を上げるためには、集中力を向上させることも重要です。
これらの注意点とともに、どれくらい働くかだけでなく、いつ休憩を取るかも計画を立てておくことが重要です。
また、生産性を高めるためにビジネスツールを整えることも検討しても良いかもしれません。
デュアルモニターを取り入れたことにより表示切り替えの手間が減る他、一度に確認できる情報量が増えることから、作業効率が42%アップした事例もあります。
参考:Steelcase:How Multiple Monitors Affect Wellbeing
そして最も重要な点といえるのがコミュニケーションです。
朝起きてそのまま個人で自分の仕事を始めるよりも、朝礼を行い、会社のメンバーと顔を合わせることにより仕事モードに気持ちを切り替えやすくなります。
また、業務中の報告や相談が必要になったときのため、いつでもメンバー同士で連絡が取れるよう、チャットなどのオンラインツールを活用するとコミュニケーション不足を補いやすくなります。報告や相談をしやすい環境を整えておくことで、在宅勤務でも仕事のモチベーションを保ちやすくなります。
業務終了時には、短時間でもビデオ会議ツールで業務報告することもおすすめです。
その日行った業務内容や、他のメンバーへの確認、困っていることなどを報告するなどの時間を作ることにより、各メンバーが現在どのような状況に置かれているのかを理解することが可能です。
コミュニケーション不足が原因で生産性が落ちてしまうケースもあるため、ビデオ会議ツールやチャットツールなどを有効活用し、コミュニケーションを取ることをルール化するのも良いとされています。
また、テレワークのサポートに繋がるようなツールも多数あるため、メンバー同士で情報を共有し合い、必要なデバイスやツールを積極的に取り入れていくとより効果的です。
テレワークは出社しての業務とは環境が異なります。生産性を落とさずに業務を行うために何が必要となるかを関係者と協議することが、テレワークにおける生産性の向上に繋がっていくと考えられます。