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基板レイアウト設計に起因する問題や設計時の注意点を解説

レンテックインサイト編集部

基板レイアウト設計に起因する問題や設計時の注意点を解説

電子回路を物理的なプリント基板に落とし込むためには、まず電子部品や配線の配置に関するレイアウト設計を検討する必要があります。入念に設計した回路でも、レイアウト設計が不適切であれば期待する性能を発揮できません。本記事では、基板のレイアウト設計の概要と、レイアウトに起因する問題、設計時に注意すべきポイントについて解説します。

基板のレイアウトとは

プリント基板を製作する際には、ICや抵抗、コンデンサーなどの電子部品の配置や、それらを接続する配線の引き回しを検討します。このレイアウト設計が不適切であると、基板のサイズが不必要に大きくなる、基板の動作が不安定になるなどの問題が発生します。一方で、最適化された高密度のレイアウト設計ができれば、小型化と低コスト化を実現でき、高速信号を扱う場合でも安定した動作が期待できるでしょう。

レイアウト設計の際には、目的に応じて重視すべきポイントが変わります。製品に組み込むためコストより高集積化が求められる場合もあれば、デバッグ用の試作基板のためサイズを大きくしてテストポイントを複数設置する場合もあります。

レイアウト設計には専用のCADソフトウエアが用いられ、配線のパターン幅や部品同士のクリアランスなどの制約条件を自動でチェックする機能もあります。設計したレイアウトを元に基板を製造する際は、基板製造業者にCADデータを渡して依頼します。中にはレイアウト設計も含めて請け負う業者もあり、設計した回路図のみ渡して基板の製造まで外注することが可能です。

基板レイアウトに起因する問題

基板のレイアウトが不適切であると、基板製造後にさまざまな問題が発生することがあります。基板の改造での対応が困難な場合、レイアウトを修正して基板製造をやり直すことになり、手戻りが大きくなることもあるでしょう。

筐体との干渉

プリント基板を製品に組み込む際に、基板のサイズやねじの位置、コネクタの位置などに制約が生じます。筐体の設計者との間で認識のずれがあれば、基板が取り付けられず、製品に組み込めない可能性があります。物理的な配置だけでなく、組み付け作業も考慮に入れてレイアウト設計を行わなければなりません。 例えば、部品の背が高すぎて筐体に干渉する、使用するねじのサイズが大きすぎてねじ穴付近の部品と干渉する、ねじを締める工具が周辺部品と干渉する、コネクタを差し込むスペースが確保できないなどの問題が考えられます。

部品の故障

レイアウト設計が不適切なために、部品が故障する可能性もあります。電子部品の中には、MOSFETなどのスイッチング素子やセメント抵抗、マイコンなど、動作中に高熱を発生する部品があります。こういった部品のすぐ近くにほかの部品を配置すると、熱が伝わって故障することがあります。

また、基板や部品の金属部分はクリアランスを十分確保するように注意してください。基板上の配線パターンは絶縁性のあるレジストで覆われていますが、ビアや部品を乗せる電極などは金属がむき出しになっています。周囲にほかの金属があると、放電してショートする可能性があります。

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不安定な動作

故障まで至らなくても、レイアウトの影響で基板の性能が十分に発揮されないこともあります。例えば、アナログ信号の配線はノイズに敏感なため、ノイズの影響で電圧が変動し、センサーの値が正確に読み取れなくなる場合があります。

また、リセット信号ラインも十分なノイズ対策が必要です。対策が不十分であると、外部ノイズの影響で不意にリセットがかかり機器が停止する可能性があります。ほかにも通信ラインのインピーダンス整合が不適切であることが原因で、通信エラーが発生し機器が動作しないというケースもあります。

レイアウト設計で注意すること

レイアウト設計を行う際には、まず基板の面積や部品の配置など制約の強い部分から設計を始めます。次に高速信号やアナログ信号など重要な配線の引き回しを行うとよいでしょう。

基板面積と部品の配置

回路図で指定された部品を搭載するには最低限必要な基板面積があり、筐体内に十分なスペースが確保されていなければなりません。また、特にコネクタや大型部品、熱の制約がある部品については、配置場所が限られる場合が多いです。制約が多い部品の配置を先に決めておくと、後の配線作業が容易になります。

筐体のスペースが不十分な場合は、筐体の設計者との調整も必要になるでしょう。基板面積がどうしても不足する場合は、基板の層数を増やす、二枚基板の構成にする、小型の部品を選定するなどの対応で解決することもあります。

重要な配線の引き回し

高速、高周波信号、アナログ信号などは、外部ノイズの影響を受けやすいため、最短距離で配線することが望ましいです。また、配線の周囲にベタグラウンドを配置してノイズから保護することも有効です。

通信線ではインピーダンス整合を取る必要があり、複数の層に信号が流れないよう、同一面上での配線が推奨されます。大電流を流す配線には十分なパターン幅が必要で、パターン幅が狭いと配線抵抗が大きくなり、電圧が落ちてしまいます。

こういった重要な配線の設計を後回しにすると、すでに配置された部品や配線を含めた設計変更が必要となる場合があります。

設置環境やノイズの影響をイメージして設計しよう

基板のレイアウト設計が不適切だと、手戻りや性能低下のリスクが高まります。特に、制約の多い部品の配置や重要な信号の配線は、設計の初期段階で注意深く考慮してください。さまざまな制約や問題点を事前に考慮して設計することで、最終的な製品の品質と信頼性を高められます。

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