近年、クラウドコンピューティングが広く普及する中で、「ベアメタルサーバー」や「ベアメタルクラウド」という言葉を目にする機会が増えてきました。本記事では、これらの概要や特長、メリット・デメリット、主なユースケースなどを解説します。
ベアメタルサーバーとベアメタルクラウドについては、ベンダーによっては両者を厳密に区別せず、同義語として扱っている場合もあります。本記事では、「処理性能の高い物理サーバーリソースをクラウド経由で提供する」という点に着目し、ベアメタルクラウドと統一して表記します。
「ベアメタル(bare metal)」とは、本来「むき出しの金属」を意味する英単語です。IT業界においては、OSやソフトウエアがインストールされていない物理サーバーやストレージのことをベアメタルと呼びます。ベアメタルサーバー・ベアメタルクラウドは、このベアメタルの状態のサーバーリソースをユーザーに提供するサービスのことで、専用の物理サーバーをクラウド経由で利用できます。
ベアメタルサーバーとベアメタルクラウドについては、厳密にはベンダーによって両者の定義は異なり、同一のものとして扱われる場合もあれば、明確に区別されることもあります。一例として、ベアメタルサーバーはユーザーの申し込み後にベンダー側で物理サーバーを準備して提供する形態、ベアメタルクラウドはデータセンター内で事前に用意された物理サーバーをすぐに利用可能な状態で提供する形態などの違いがあります。
従来のクラウドサービスは、サーバーの仮想化技術を活用しています。1台の物理サーバー上で複数の仮想マシン(Virtual Machine)を動作させ、その仮想マシンをリソースとしてユーザーに提供しています。一方、ベアメタルクラウドでは仮想化技術を用いず、代わりに物理サーバー自体をユーザーに提供します。
仮想化によるオーバーヘッドが存在しないため、サーバーのリソース(CPU、メモリー、ストレージなど)を最大限に活用して、高い処理性能を発揮できるのが大きな特長です。また、仮想マシンを共有するのではなく、物理サーバーを専有できることから、セキュリティ面でのメリットもあります。
ベアメタルクラウドは、物理サーバーを使用するため処理性能が高く、クラウドサービスとしての利点も備えています。一方で費用が高く、従来のクラウドと比べると柔軟性や拡張性が劣る点にも留意が必要です。
ベアメタルクラウドの最大のメリットは、処理性能の高さです。仮想化によるオーバーヘッドがないため、物理サーバーのリソースを最大限活用できます。また、クラウドの利点である柔軟性と、物理サーバーの専有によるメリットを同時に享受できます。必要に応じてリソースを手軽に調達できるだけでなく、自動スケーリングなどのクラウドサービスの恩恵も受けられます。
物理サーバーを専有できるため、従来の仮想化クラウドよりもセキュリティを強固にできるというメリットもあります。オンプレミスの物理環境からクラウドへの移行を検討する際も、ハードウエア環境をほとんど変える必要がないため、移行がスムーズに行えます。
個別に物理サーバーを用意する必要があるため、費用が高くなりがちです。また、物理サーバーを専有するという性質上、CPUやメモリー、ストレージなどのリソースの変更に制約があります。従来の仮想化クラウドならある程度自由にリソース変更ができますが、ベアメタルクラウドでは柔軟性や拡張性が劣ってしまいます。
ビッグデータの解析や処理に要する高い計算リソースを必要とするワークロードでは、処理性能が高いというベアメタルクラウドの性能が活かせます。また、企業のオンプレミス環境をクラウド化する際も、ベアメタルクラウドを選択することで、スムーズな移行が可能です。クラウド移行に伴うライセンス変更などのコスト増も抑えられます。
セキュリティや法規制の観点から、物理サーバーの専有が不可欠とされるケースにも対応しやすいです。また、セキュリティ要件が高く、リソースの物理的な分離が求められる場合にも適しています。
ベアメタルクラウドは、サーバーの専有がもたらす高性能なクラウドサービスです。AWSやGCPなど主要クラウドベンダーでもこのサービスが提供されるようになり、存在感が高まっています。
ベアメタルクラウドはサーバー利用の新たな選択肢となるでしょう。業務のユースケースに合わせてベストな選択ができるよう、その特長を理解しておくことをおすすめします。