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SAP S/4 HANAとは?業務効率化をサポートする新ERPシステムを紹介

レンテックインサイト編集部

SAP S/4 HANAとは?業務効率化をサポートする新ERPシステムを紹介

企業経営においてヒト、モノ、カネといった資源を適切に管理し、意思決定を迅速に行うことは非常に重要です。そのための手段としてERPと呼ばれる経営資源計画システムがあり、特にSAPが提供するERPパッケージは、世界中の大手企業に幅広く採用されています。

従来のSAP ERPシステムは2027年末にサポート終了が予定されており、次期バージョンとしてSAP S/4 HANAが注目を集めています。本記事では、SAP S/4 HANAについて概要や特長、移行に関する対応策などをご紹介します。

SAPとSAP S/4 HANAの概要

SAPは、企業の業務効率化や迅速な意思決定をサポートするERPパッケージ製品を提供しています。最新版のSAP S/4 HANAでは、企業のDXを推進するため、従来のSAPをベースにリニューアルを施されています。

SAPの概要

SAPは1972年に設立されたドイツに本社を置くソフトウエア開発企業の名称です。システムの分析とプログラム開発が主な事業で、特に企業向けのERPパッケージにおいて高い評価を得ています。

同社のERPパッケージは、企業内の部門やバリューチェーンを横断する業務プロセス全体をカバーするソリューションを提供しています。統合データベースを用いてビジネスの状況や実績を一元的に管理し、各業務を連携することが可能です。特に大企業での導入が多く、グローバル企業への対応力も高いことが特長です。各国の法制度や商慣習にも対応しており、購買や経費精算など個別業務にも細かく対応したアプリケーションを提供しています。

SAP S/4 HANAとは

SAP S/4 HANAは、SAPが2015年にリリースした最新のERPシステムで、従来のSAP ERP 6.0の後継として開発されました。従来のSAP ERPをベースに、インメモリデータベース「SAP HANA」を核とするシンプルな設計が特長です。加えて、ユーザーエクスペリエンスの改善や業務プロセスの最適化など、さまざまなリニューアルが施されています。企業のビジネスプロセスの最適化とデジタルトランスフォーメーションの実現を目的としたシステムです。

SAP S/4 HANAの特長

SAP S/4 HANAは以下のような特長を持ち、企業内の状況をリアルタイムに把握し、業務の効率化を実現します。

高速データ処理

SAP S/4 HANAではインメモリデータベース「SAP HANA」を採用し、データ処理の高速化を実現しています。インメモリデータベースはコンピュータのメインメモリであるRAM上にデータを一旦すべて展開し、メモリ上で処理します。これにより、従来の外部ストレージを使用する方式に比べて数百倍から数万倍という高速なデータの読み書きが可能となります。

ただし、メモリ上のデータは電源オフで消失してしまいます。そのため、インメモリデータベースでは障害発生時のデータ復旧のため、一定周期でデータの状態を保存しておく必要があります。

同一基盤での分析とレポーティング

従来は、ERPシステムとは別に分析やレポーティング用のデータウエアハウスと呼ばれる基盤を構築する必要がありました。一方、SAP S/4 HANAでは同一のシステム基盤上で分析やレポーティングが可能になりました。これによってデータの重複が解消され、システムリソースを効率的に活用できるだけでなく、より迅速な経営判断を下すことが期待できます。

使いやすいUI

SAP S/4 HANAでは、新しいユーザーインターフェースであるSAP Fioriを標準で採用しています。SAP Fioriは最新の携帯端末やウェブブラウザにも対応したマルチデバイス環境で操作でき、シンプルかつ直感的に理解できるデザインが特長です。どのデバイスを使用しても同じ操作性が保たれ、ユーザーの役割に合わせてメニューをカスタマイズできます。ほかにも、最小限の操作で目的の業務アプリケーションを呼び出せるなど、作業の効率化が図られています。

クラウド対応

SAP S/4 HANAはクラウド環境にも対応しており、パブリッククラウドサービスの活用やプライベートクラウド環境の構築が可能です。AWS、Azureといったパブリッククラウドのほか、SAPが提供するクラウド基盤の利用も可能です。クラウド化のメリットとして、初期投資の抑制、システムのスケーリングの容易さ、サーバー管理作業の削減などが挙げられます。特にSAP HANAとクラウド環境の連携により、データベースのコストを抑えながら高速データ処理を実現できます。

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SAP ERPサポート終了とシステムの移行

SAPの基幹システムである従来のSAP ERPのサポートは、2027年末に終了する予定です。これを受けて、多くのユーザー企業がSAP S/4 HANAへの移行 (マイグレーション)を検討しています。移行作業では、まずシステム移行のロードマップを策定し、移行方法やスケジュールなどを明確にします。その後、実行環境でのシステムテストを行い、適切に動作することを確認する必要があります。

なお、SAP ERPでは複数のデータベースに対応していましたが、SAP S/4 HANAではSAP HANAのデータベースのみを使用できます。データベースのアーキテクチャが刷新されていることから、移行に伴う手間やコストが大きくなるため、一部の企業では移行を断念するケースもみられます。そのため、SAP以外のERPパッケージへの乗り換えや、第三者による保守サービスの利用も選択肢として考えられます。

基盤システムの刷新でビジネスの競争力を高めよう

このようにSAPの最新システムであるSAP S/4 HANAは、インメモリ技術とシンプルな設計によって、リアルタイムなデータ処理と迅速な意思決定をサポートします。既存のSAPシステムが2027年にサポート終了を迎えることから、多くの企業がSAP S/4 HANAへの移行を検討している状況にあります。

移行を具体的に進める際には、まず自社のビジネス要件を十分に踏まえた上で、移行に伴うコストや工数、移行期間などを精査することが重要です。DXの実現に向けて、基盤システムの刷新は避けて通れない重要な課題といえるでしょう。

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