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AIを活用した新人研修の可能性

レンテックインサイト編集部

AIを活用した新人研修の可能性

働き方改革による残業規制やDX人材のニーズ増などを背景に、情シス人材の不足は深刻化の一途を辿っています。「新人育成に取り組む必要があるのは分かっているが、そのための余裕がない」。

そんな声が多くの現場で聞かれる中、本記事でご紹介したいのが「AIを活用した新人研修の可能性」です。どんなメリットが得られるのか、実際にどのような活用可能性が考えられるのか、必ず注意すべきポイントとは何かなど、AIを新人研修で活用するためのポイントをまとめてご紹介します。

AIを新人研修に活用するメリットとは?

AI(人工知能)を新人研修に活用することは、多くの企業にとって有効な手段となり得ます。AIを新人研修で活用するメリットを三つのポイントで見ていきましょう。

より効果的で手厚い学習の実現

AIを新人研修に活用することで従来の新人研修では手が届かなかったより効果的な学習を実現できます。従来の新人研修ではリソースの都合上、一律に知識が与えられ、あとはOJTやフォローアップで対応するという状況が現実的でした。しかし、AIをコーチングや進捗分析に活用できるようになったことで、一人一人のスキルや適性に合わせてよりきめ細かいフォローアップを実施する可能性が開かれたといえるでしょう。

継続的なサポートとフィードバックの提供

現代の企業にとって、最も貴重な経営資源の一つが人材であり、新人研修中だけでなく全キャリアを通じてリスキリングや目標設定をサポートすることが求められます。そこで重要なのが、期間を問わないトータルな学習サポートを実現するためのシステムや仕組み作りです。面接時から人材の特性を分析し、そのデータを入社後、研修期間後も評価やフィードバックに活用するなど、‟長期的な目線で新人研修を生かす”ために、AIを活用するという視点が求められます。

コストと時間の削減

AIによる自動化と効率化は、新人研修におけるコストと時間の削減に寄与します。AIが研修の管理や運営を支援することで、人的リソースへの依存を減らし、教育担当者はより戦略的な業務に集中することができます。さらに、AIが生成する詳細なレポートにより、研修プログラムの有効性を測定し、改善点を即座に特定することが可能です。これにより、長期的な視点で見ると、より効果的な研修プログラムを低コストで実施することが可能になります。

このように新人研修の質と効率の観点でAIの活用は効果的であり、新人研修後の人材育成にも大いに寄与することが期待されます。

AIを活用した新人研修の可能性3パターン

研修・教育担当者の方々にとって最も気になるのが、AIを“どのように新人研修に活かしていけばいいのか”という実際の活用法でしょう。本パートでは、三つの可能性をご紹介します。

1.「AIコーチング」で疑問の深掘りやモチベーション管理を実現

チャット型AIとの対話を通して、学習していることへの疑問を深掘りし、スキルアップを目指すAI活用法の一つに「AIコーチング」があります。コーチングとは対話を通して自発的な気づきを促し、自律的な人材の成長を支える手法のこと。時間を気にせずいくらでも対話でき、性能の進化により、より人間的な返答ができるようになった現在の生成AIは、アイデアの壁打ちや、思考の深掘りを行う際の相手として最適です。これまでの常識では「AIが人の感情やモチベーションをサポートできる」というのは、にわかには信じがたく感じられるかもしれません。しかし、すでに『コーチングGPT』『Pandatron』『リフレクこ』などAIコーチングに特化したサービスなども見られます。まずは実際に触ってみて、コーチングの効果をテストするところから始めてみましょう。

2.学習プログラムの提案から試験問題の作成、コードの説明など直接的な知識の提供

英語、プログラミングや資格試験の対策など、より直接的な知識を得るためにも生成AIは活用され始めています。「〇〇検定に合格するための学習プログラムを考えてください」「□□検定□級のサンプル問題を考えてください」などさまざまな指示を出せば、AIを講師兼学習アシスタントとしても利用できるというわけです。また、『GitHub Copilot』『Microsoft Copilot』など、AIプログラミング作成ツールを用いて自然言語でプログラムを作成し、その上で仕組みを説明させることで学習サイクルを回す、といった使い方もポピュラーです。

3.センシング・データ分析による「テーラーメイド学習」の実現

画像・映像解析やデータ予測においてAIはすでに大きな成果を達成し、ビジネスでも利用されているのはご存じの通りです。「テーラーメイド学習」とは、個人ごとの課題や特性に合わせた学習のことを意味しており、実際の回答や行動をAIが学習・分析することで可能となります。例えば作業者の動きを分析し、熟練作業者との違いを指摘してくれるAIや、AI搭載のタレントマネジメントシステム(従業員のスキルやケイパビリティ管理に特化したシステム)などがすでに実現されているケースとして挙げられます。

新人研修×AIで必ず押さえるべき二つの注意点

AIを新人研修に活用することで何か問題は起こらないのか、何に注意すべきか。その点について気になっている方も多いはずです。 そこで、必ず押さえるべき二つの注意点を解説します。

注意点1:AIのハルシネーション対策と‟自分で考えること”の促進

AIを活用した従業員教育では、AIの能力と限界を明確に理解しておくことが非常に重要です。AIは高度なタスクを効率的にこなすことができますが、その出力は完璧ではないことがあります。不正確な情報をもっともらしく提示する現象(ハルシーネーション)は、AI活用の注意点として広く知られています。教育担当者は、AIが提供する情報やガイダンスが常に正しいとは限らないことを受講者に説明し、情報を表に出したり、知識を身につけたりする場合には、信頼のおける複数のエビデンスにあたることを求めましょう。情報をうのみにせず自分で考えること、批判的視点をもって検証することはAIを利用する場合のみならず、我々が知識を扱うにあたって必ず必要な姿勢です。

「AIのハルシネーション」について詳しくは、「生成AIの活用で注意すべき「ハルシネーション」とは?」をご参照ください。

注意点2:情報流出を防ぐルールと仕組みづくり

AIを教育プログラムに導入する際は、情報流出を防ぐルールと仕組みづくりが非常に重要です。例えばChatGPTでは、オプトアウト設定や法人向けプランへの加入をしなければプロンプトとして入力したデータはAIの学習に用いられる可能性があります。また、入力したデータが流出する可能性は、外部サービスである以上否定できません。個人情報や機密情報の流出を防ぐため上記の事情についての社員教育を徹底し、『Azure OpenAI Service』や『ChatGPT for enterprise』などセキュリティ機能が搭載された法人向けの環境を用意することが取りうる対策となるでしょう。

AIは「単なる道具」だからこそ、人材育成担当者に貢献する

AIを活用した新人研修の可能性について、メリットと注意点の両面で解説してきました。AIはあくまでも道具であり、人材育成という人間同士の対話が重要な分野においてすべてをカバーすることはまだまだ難しいはずです。しかし、単なる道具だからこそ、適切な使い方を見つけることで人間の業務の質や効率の向上に大きく貢献してくれます。

よりマクロな視点での企業のAI活用法と注意点について知りたい方は『情報システム部門に求められるAI技術の活用法と注意点とは』をご覧ください。

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