ハイテク活用を支える製造業のDXは、国内外を問わず多くの関心を集めているデジタル化施策です。製造業DXにはいくつかのアプローチがありますが、中でも高い注目を集めているのが、NVIDIAによる「Omniverse」です。
この記事では、Omniverseとはどのようなサービスなのか、導入によって製造業界はどんなメリットを得られるのかについて、解説します。
Omniverseは、アメリカに本社を置く世界有数の半導体メーカーであるNVIDIA社が製造業界向けに提供している、メタバースプラットフォームです。
Omniverseの特長は、自社で構築した仮想空間を、いつでも誰とでも共有して、その中でさまざまな情報を共有できる点にあります。例えば自社で作成したデジタルグラフィックをOmniverseの仮想空間の中で公開し、そこにマスコミ関係者を招くことで、製品のプロトタイプを立体的に確認してもらったり、性能イメージを体験してもらったりすることができます。
Omniverseは、このようにこれまで現実世界に限定されていた設計やデザインの試行錯誤やお披露目を、仮想空間で実行するのを支援するためのサービスです。
現実世界と変わらないテストを仮想空間で行うというテクノロジーには、高度な情報収集と再現能力を備え、現実と仮想空間で違いのない体験ができるデジタルツイン技術が採用されています。
Omniverseを製造業界に導入する最大のメリットは、コストの心配をすることなく高精度なシミュレーションを実行できる点にあります。
これまでプロトタイプを制作したり、プロトタイプを使ったシミュレーションを実行したりするには現実世界で行わなければならず、その度に多くの費用と時間がかかっていました。
一方で、Omniverseを使ったシミュレーションの場合、データを作成しそのままシミュレーションを実行できるだけでなく、不備があった場合はデータを修正するだけで再度実験を行えるため、費用も時間も最小限で済みます。
また、物理的な制約のない働き方を実現する上でもOmniverseは活躍し、海外出張やオフラインのカンファレンスを行わずとも、仮想空間上でいつでも実験や発表会を実施できるというわけです。
Omniverseを活用する上で知っておきたいのが、メタバースにおける標準フォーマットとして定着が進む、USDの実装が必要である点です。
USDはUniversal Scene Descriptionの略称で、メーカーを問わずメタバースにアクセスしたり、メタバースを活用したりする上で導入が進んでいるフォーマットです。
OmniverseではUSDを標準採用しているため、USD規格に則ったテクノロジーであれば、相互運用が可能になります。具体的な相互運用のケーススタディについては十分な数が揃っていないものの、今後数年以内にその可能性を示す事例も登場するはずです。
メタバース運用の課題の一つとして、企業や技術格差の壁を乗り越えられず、メタバース空間が閉じたものになってしまう可能性を抱えていることが挙げられます。
一方でOmniverseは世界的な標準規格を早期より実装し、オープンなメタバース空間を利用することができるため、さらなる技術革新を促すきっかけにもつながるでしょう。
この記事では、NVIDIAが注力する期待のメタバースプラットフォームであるOmniverseについて解説しました。
製造業のDXを効果的に進める上で、グローバルな規格化は必要不可欠な施策となると考えられています。Omniverseはそんなオープンなメタバースや、高度なデジタルツイン環境を前提とした技術として設計されています。 すでに多くの企業がOmniverseの本格実装に向けた環境整備や検証を進めており、大手メーカーでも同プラットフォームの有用性について確認が取れつつあります。
Omniverseは単なるメタバース空間を提供する一つのサービスではなく、製造業界のDXを後押しする上で欠かせない、重要な基盤としての活躍が期待できるプラットフォームとなるかもしれません。