新型コロナウイルスの影響によって、より必要性が浮き彫りになったペーパーレス化。在宅勤務は普及したものの、紙の書類が手元にないためにコミュニケーションやプロセスに支障が出ているケースも多いのではないでしょうか。ペーパーレス化することにより価値ある新しいコミュニケーションを作ることを目指した製品「moreNOTE」は、3500社を超える企業・組織で導入されています。moreNOTEの強みや今後目指す方向性について富士ソフト株式会社 moreNOTE事業部の佐伯 知則課長と小宮山 卓課長にお話を伺いました。
富士ソフト株式会社は1970年に創業し、受託開発を主軸に事業を展開してきました。富士ソフトグループは1万人の技術者集団を形成し、近年は付加価値向上を目指して「AIS-CRM(アイスクリーム)」を重点技術として掲げています。AIS-CRM とは、AI(A)、IoT(I)、セキュリティ(S)、クラウド(C)、ロボット(R)、モバイル(M)の頭文字をつなげた言葉です。こうした技術要素を積極的に取り入れ、業務系ソフトウエア開発からネットビジネスソリューションまで、幅広く提供しています。
また同社は蓄積した技術・ノウハウをもとに、数々のプロダクトを展開しています。その一つが今回ご紹介する「moreNOTE(モアノート)」です。
moreNOTEが誕生したのは、2013年。ちょうど2012年にiPadの第4世代が発売され、日本にも浸透しつつあった頃です。「当時私たちにもiPadが配布されました。今でこそ多くの人が使っていますが、その当時は何に使ってよいかもわかりませんでした」(佐伯氏)。使い道が確立していなかったiPadをどうしたら活用できるかを考えた結果、大量の紙の書類をiPadで安全に持ち運ぶというアイデアが生まれました。このアイデアをもとに開発されたのがmoreNOTEです。
moreNOTEは、アップロードされた資料をモバイル端末あるいはPC端末で閲覧できるツールです。アプリをダウンロードすることで、デバイスを選ばない資料の閲覧や画面の共有が可能になります。「当初は経営会議や取引先へのプレゼンテーションを想定していたため、高齢の方、ITに不慣れな方でも簡単に利用してもらえるように、画面の構成や操作感にはこだわりました」(小宮山氏)。
moreNOTEは画面同期機能を備えており、発表者がページをめくると、各参加者の端末でもページがめくられます。また発表者が資料の上にポインタを表示したり、手書きの文字を書いたりすると参加者が見ている画面にも反映されます。
ページめくりやポインタなど発表者の画面情報が参加者の各端末に同期される。参加者の端末では一時的に同期を解除して自分自身でもページめくりやメモ書きが簡単にできる。
この機能は一般的なWeb会議ツールでも搭載されている機能ですが、Web会議中に画面を共有すると通信が遅延して描画が遅れるといったこともあります。moreNOTEはこの画面共有時の情報の受け渡しを最小限に抑えて、快適な速度で画面共有を実現しました。「他社の機能と比較して、100分の1程度の通信量に抑えられています。社内では1000台以上の端末を同時に使用するテストもしていますので、大人数でも快適に使えます」(小宮山氏)。
moreNOTEのストレスフリーな操作感を評価し、Web会議と併用している企業も多く存在します。「当社の社内でも、打ち合わせはWeb会議で行い、その時に使用する資料はmoreNOTEで参照しています。Web会議は画面共有の権限移譲など、慣れないと操作が難しいのですが、moreNOTEは画面操作者の切り替えも簡単です」(小宮山氏)。
社内の機密文書を扱う際にはセキュリティが気になるところですが、moreNOTEでは各端末にダウンロードされた文書を暗号化することで、万一端末を紛失してデータを取り出されたとしても、文書の中身が見えないようになっています。また、退職者がデータを持ち出すことがないように、長期間ログインしていない場合に端末の中の文書をすべて削除する機能や、資料の公開期間や閲覧権限を設定できる機能が提供されています。またアクセスする端末を限定できるので、外部の人間が社員になりすますことを防ぎます。
機密情報を流出させないためのセキュリティ機能は、金融業界や行政機関からも高い評価を受けている。
企業ではさまざまな会議や打ち合わせが日々行われるため、資料を格納するフォルダの階層が深くなり、探すのに時間がかかることもあります。moreNOTEでは、資料を探しやすくするようカレンダー機能を用意しているのも大きな特徴です。「〇月〇日の会議資料を見たいという場合はカレンダーから探すことができるため、お客さまからも好評です」(小宮山氏)。
カレンダーからその日に開催された会議の資料をワンクリックで閲覧できる。
moreNOTEは3500社以上の企業・組織に導入されています。「ツールの特性もあって企業規模あるいは業種業態にかかわらず幅広くお使いいただいています」(小宮山氏)。そこで実際に導入した事例をご紹介いただきました。
「moreNOTEは約100の自治体で導入実績があります。ある自治体では議会で使用する資料をペーパーレス化し、10万枚の紙の資料を削減しました。moreNOTEを選定する決め手となったのは端末認証機能、データの暗号化、コンテンツの公開期間の設定といったセキュリティ機能でした。また議員は年齢層も幅広いため、誰でも簡単に操作できる画面構成も高く評価されました。導入後は会議だけでなく、議員の調査研究活動でも活用されています。『市民との対話において、膨大な資料から該当の資料をすぐに探し出し、正確に回答できるようになった』と好評です」(小宮山氏)。
また、事務局と議員との連絡手段としても活用されています。これまでは郵送、FAX、電話で行っていた連絡事項をmoreNOTEで行い、閲覧ログにより議員が資料を閲覧したかを確認しています。
会議資料だけでなく、仕事で使用するすべての資料をmoreNOTEに格納した企業も存在します。すべての資料を格納することで、定例会議だけではなく、ちょっとした打ち合わせでも使用できるようになりました。すべての会議・打ち合わせにmoreNOTEを使うというルールにしたことで、今では役員の方も積極的に使っているそうです。図面などA3サイズの文書についても、ズーム機能を使ってストレスなく閲覧できています。
導入の際は本社で1カ月使い、その後に全事業所に展開しました。「説明会をしていないにもかかわらず、操作についての問い合わせもなく、問題なく使えているということが評価されています」(小宮山氏)。
「経営会議、役員会議のような『フォーマル会議』で使われることが多かったmoreNOTEですが、今後は日々の打ち合わせといった『カジュアル会議』でも気軽に使えるように機能を拡充していきます」と語る佐伯氏が語る通り、2020年8月には「moreNOTE Hello!」がリリースされました。
moreNOTEはアプリを端末にインストールして資料を閲覧しますが、moreNOTE Hello!は資料のアップロード・閲覧をブラウザで行います。moreNOTEのユーザーだけでなく、ゲストユーザーにもURLとパスワードを発行して資料を共有できます。
moreNOTE Hello!はゲストユーザーが利用でき、ブラウザで資料が閲覧できるなど社外の人でも参加しやすい仕組みになっている。
moreNOTEのユーザーであれば、moreNOTE Hello!の機能を追加料金なしで利用することができます(10名以上で使用する場合は別途有償)。「moreNOTEの使い分けとしては、メンバーが固定しているフォーマル会議にはmoreNOTEを、メンバーが変動する社内の会議や、外部の取引先との打ち合わせにはmoreNOTE Hello!をおすすめしています」(佐伯氏)。
またmoreNOTE 本体にはOffice文書編集機能があり、例えば営業担当者が外出先から編集したり、打ち合わせで出席者がみんなで書き込んで文書を作成したりといった使い方も可能です。
なお、moreNOTEには「クラウド版」「オンプレミス版」、クローズドなネットワークで使うための「スタンドアローン版」がありますが、moreNOTE Hello!を利用できるのはクラウド版のユーザーのみとなっています。
「moreNOTEは、ペーパーレス会議システムに位置づけられていますが、私たちは新たなコミュニケーションを作るという思いで開発しています」と佐伯氏は力を込めて語ります。
新型コロナウイルスの影響で、強制的に遠隔でのコミュニケーションをする中で、どうしても紙を使わなければならない部分が改めて浮き彫りになりました。「ビジネスシーンでどうして紙でなければならないのか、という課題に今まで向き合ってこなかったところはあったと思います。このコロナ禍をきっかけとして課題が明らかになれば、デジタル化が進んで新しいコミュニケーションが生まれると考えています」(佐伯氏)。
また、今後はデジタル化された情報をどのように整理していくかが重要なポイントになると小宮山氏は見ています。「moreNOTEは会議だけでなく、働き方が変わる中で、新しいコミュニケーションを作ることをお手伝いしていきたいと考えています。働き方改革から始まった在宅勤務がコロナ禍によってこんなに浸透するとは思っていませんでしたが、moreNOTEで情報を効果的に整理して働き方を変える一助になるように、これからも機能を拡充していきたいですね」(小宮山氏)。