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工場排気ガスから合成メタンを生成するメタネーション

レンテックインサイト編集部

工場排気ガスから合成メタンを生成するメタネーション

本記事では、CO2排出量削減の技術「メタネーション」とは何か、その特徴や導入の背景、今後の課題と動向について解説していきます。

工場で出る排気ガスからメタンを合成する「メタネーション」は、工業炉やボイラーといった都市ガス設備のCO2排出量削減に貢献する技術として注目されています。今後人口増加が続く地球では、かつてない深刻な温暖化が予想されています。その原因と考えられるCO2排出量の増加に対して、削減に取り組む重要性がますます高まっています。

日本国内では、政府主導でCO2排出量削減のためにカーボンニュートラル技術の導入を積極的に推進しています。今後製造業がグローバルにビジネスを継続するためには、工場の生産活動で排出するCO2を削減することが求められています。

メタネーションとは

メタネーションは、工場や発電所から出る排気ガス中のCO2(二酸化炭素)と、添加したH2(水素)を化学反応させてCH4(メタン)を合成する技術です。排気ガス中のCO2排出量を削減できる上に、合成したメタンをそのまま工業炉などで燃料として利用できるという特長があります。

CO2とH2からCH4を合成する技術は、1911年にフランスの科学者ポール・サバティエが発見しました。サバティエ反応と呼ばれるこの反応は、ニッケルやルテニウムなどを触媒として、反応時には300度近い熱を発生します。CO2に含まれるCと、添加したHの原子量を1対4で反応させると、一つのCH4が生成されます。

CO2+4H2→CH4+2H2O

メタネーションで使う水素に、CO2フリー水素を利用することでCO2排出量ゼロのCH4(メタン)を生成可能です。

これまで欧州主導で実証実験が進められてきたメタネーションですが、最近では国内メーカーが実証実験に取り組むケースが増加しつつあります。

メタネーションはなぜ求められるのか

メタネーションに取り組む国内メーカーが増加している理由は下記の3点です。

温室効果ガス削減目標の達成

日本では2050年までに温室効果ガスの排出量をゼロにする、カーボンニュートラルに取り組むことを国際的に公表しています。その実現には全体の約三割を占める製造業のCO2排出量の削減が欠かせません。製造業では都市ガスを燃料とする多くの設備が稼働しており、メタネーションによってCO2排出量を削減することが求められています。

欧米など環境先進国企業からの認証取得

国内メーカーであっても、多くの企業がグローバルな製品の輸出入を当たり前としたビジネスが増えています。カーボンニュートラルの取り組みが進む欧米の企業では、原材料や製品の調達先にも、自社と同様のCO2排出量削減目標の達成を求めています。もしその目標に達していない場合は、製品の品質に問題がない場合でも取引先から除外される可能性があります。

都市ガス代替燃料として安価

電気で動く設備と異なり、都市ガスを使う設備のCO2排出を削減する手段は限られています。燃焼炉のようにバーナーを燃やして製品を加熱する設備などでは、電気炉に入れ替えると効率が下がり、コストが増大するリスクがあります。バーナーの燃料として、水素やアンモニアガスといった代替燃料を検討するメーカーもありますが、漏洩性や有毒性の違いがあるため、そのまま都市ガスの代わりにすることは困難です。その点、メタンは成分が都市ガスと同等のため、同じインフラを利用することができてコストを抑えることが可能です。

工場排気ガスから合成メタンを生成するメタネーション 挿絵

メタネーションの課題

メタネーションは、都市ガス設備の有望なCO2排出量削減技術として期待されていますが、まだまだ課題が残っています。

メタネーション用設備導入のスペース・コスト

メタネーションの実現には、排気ガス内のCO2を回収してCH4を合成するための設備を導入する必要があります。現在の技術レベルでは、工業炉と同等のメタネーション設備スペースが必要になるなど、スペース効率には課題が残っています。

また、そのサイズのメタネーション設備の製作・設置には莫大な設備投資が必要となり、投資回収にも長い期間が必要とされます。

水素価格が高い

メタネーションは設備投資だけでなく、ランニングコストにも大きな課題が残っています。CO2との反応に使うH2を海外から輸入する場合は購入価格が高額となり、収支が大きくマイナスとなることが想定されます。輸入水素の価格は今後低下する見通しがありますが、想定通りに推移するかは分かっていません。

安全性の検証が不十分

メタネーションの実証実験は国内でも徐々に進められています。しかし、まだ実用化レベルの大規模な実証実験は例が少なく、水素など可燃性ガスを扱う大規模設備としての安全性は検証が不十分です。今後さらに実証例が増加することで、安全性の向上が期待されます。

メタネーションの今後の動向

日本政府は2021年に「2050年カーボンニュートラル戦略」を改訂し、メタネーションを重要分野に位置付けました。これまで日立造船やIHIなどの大手メーカーが実証実験に取り組んできましたが、最近では東京ガス・大阪ガスなどのガスメーカー、自動車メーカーなど別業種でも徐々に後続の企業が現れています。

企業がカーボンニュートラルに取り組む重要性は、今後ますます高まることが予想されます。水素価格の低下など社会的なインフラが整っていくと、よりメタネーションの普及がさらに活発化する可能性があります。

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