半導体技術は、スマートフォンや自動車など、私たちの身の回りのさまざまなデバイスで使用されています。本記事では、この半導体技術がSDGs、つまり持続可能な社会の実現に向けた取り組みに、どのように貢献できるのかを解説します。

SDGsとは

SDGs（持続可能な開発目標）は、世界全体が持続可能な開発を目指すための目標で、2015年の国連サミットにおいて全会一致で認められました。この目標は、17のゴールとそれに付随する169の達成基準から成り立っており、多岐にわたる社会課題を取り扱っています。SDGsの大きな特徴として、「誰一人取り残さない」社会を目指すことが強調されており、豊かさを追求しながら地球環境を守ることが目標とされています。

SDGsの制定過程には、1500以上の企業や団体の意見や提言が取り入れられ、国や国際機関のみならず、すべての団体が問題解決に参加することを奨励しています。日本政府も積極的にこの動きに取り組み、SDGsの実施指針として「5つの主要原則」を定めました。これに基づき、さまざまなステークホルダーが持続可能な社会の実現に協力しています。

半導体技術が社会にもたらす影響

半導体は絶縁体と導体の中間に位置する物質であり、電流の流れを制御する役割を果たしています。この特性が、さまざまな電子デバイスの基本的な動作を支えているのです。半導体技術の進化は、トランジスタやマイクロプロセッサ、メモリチップなどの重要な技術を生み出し、現代の多くのデバイスの基盤となっています。

コンピューターや家電製品、AIの開発など、半導体技術は生活を便利にして効率化するためのさまざまな分野で利用されています。また今後の技術の進化によって、エネルギーの消費が削減できたり、新しいデバイスが開発されたりするかもしれません。さまざまな場所で使用される半導体だからこそ、社会における多様な課題の解決に貢献できる可能性を秘めています。

半導体技術が貢献できるSDGs目標

半導体技術の進歩は、センサーや発電素子、マイコンの性能向上をもたらし、それによりさまざまな方面でSDGsの達成に貢献できるでしょう。以下では、SDGsが掲げる17の目標のうち4つを取り上げて解説します。

目標2：飢餓をゼロに

半導体技術を活用したセンサーや通信デバイスは、気候や土壌の状態をモニタリングするのに役立ちます。気温の変化や大雨などに迅速に対応したり、土壌の水分量を適切に管理したりすることで、収穫量の増加や品質の向上が期待されます。また、気候変動の予測精度が高まる事や土壌の管理をより厳密に行えるようになり、効率的な農業や持続可能な食糧生産が実現できるでしょう。

目標7：エネルギーをみんなに そしてクリーンに

太陽光発電において、シリコンなどの半導体が日光のエネルギーを電気エネルギーに変換する役割を果たします。半導体材料の性能改善により、エネルギーの変換効率を上げたり、太陽光発電のコストを低減したりといった効果が期待されます。高効率な発電素子の開発は再生可能エネルギーのさらなる拡大に寄与し、環境問題の解決に向けた大きな一歩となるでしょう。

目標9：産業と技術革新の基盤をつくろう

半導体技術は、コンピューターや家電製品から、医療や宇宙、AI開発にいたるまでさまざまな分野の基盤技術として不可欠です。そのため半導体技術の革新は、新しいビジネスモデルの創出や雇用の機会を増やすことにつながります。また、複雑な計算やシミュレーションを高速で行えるスーパーコンピューターの性能が向上すると、科学的な新発見や技術革新が進み、新たな産業が生まれるかもしれません。

目標11：住み続けられるまちづくりを

IoTやAI技術を活用したスマートシティの実現に向けて、半導体技術は大きく貢献しています。例えば、マイクロプロセッサの高度化により、自動車や信号機、公共施設などさまざまな機器やインフラにセンサーやマイコンが組み込まれ、リアルタイムでのデータ収集が可能となります。このデータを活用することで、交通渋滞の解消やエネルギー消費の最適化など、都市の運用の効率化が進展するでしょう。

半導体技術はSDGs達成の根幹を担う

半導体技術は私たちの身の回りのさまざまな科学技術の基盤として存在しており、技術の進化は生活を豊かにするだけでなく、SDGsの達成にも大きく寄与しています。本記事で触れたように、飢餓の撲滅、クリーンエネルギーの普及、産業と技術革新の基盤形成、そして持続可能な都市開発など、多くの分野での課題解決の鍵となります。

半導体技術の進展は、一部の企業だけで進むのではなく、関連するあらゆる企業や研究機関、さらには政府の協力も必要です。SDGsの目標達成に向け、どのように半導体技術が貢献できるのかを理解し、私たち一人一人が果たすべき役割を見つけて取り組むことが重要となるでしょう。