FaaS（Factory as a Service）とは、物理的な工場を所有していないユーザーに、製造に必要な設備やサービスを提供する形態のことです。FaaSは、製造業の在り方を大きく変革する可能性を秘めています。本記事では、FaaSの基本的な概念や従来の製造業の課題、そしてFaaSがそれらの課題をどのように解決するのかについて解説します。

FaaSとは何か

FaaS（Factory as a Service）は、工場の機能をサブスクリプションのサービスとして提供する新しい製造業の形態を指します。ユーザーとなる企業が物理的な工場を所有することなく、製造プロセスを実行できるようにするサービスです。

具体的には、工場の建物や製造装置、産業ロボット、制御システム、技術サポートなど、製造に必要なすべての要素をユーザー企業に提供します。すると製造業者は製品の製造と販売に専念できるようになります。また、本サービスはサブスクリプションの仕組みを取り入れているため、月額の定額料金や使用量に基づく従量課金で利用できます。

FaaSの特長としては、製造業者が大きな初期投資を必要としないため、中小企業やスタートアップも容易に製造業に参入できる点が挙げられます。また、FaaSは生産ラインを一企業が独占するのではなく、複数の企業が時間ごとにシェアリングするという概念に基づいています。生産ラインを最大限に活用できることから、製造能力の効率化と生産コストの削減が可能となります。

従来の製造業における課題

従来の製造業が抱える課題として、コストの制約、生産ラインの適応性、中小企業の競争力が挙げられます。いずれも効率的な運営を阻害したり、ビジネスチャンスを失ったりする原因となっており、企業が利益を追求する上での大きな制約となっています。

コストの制約

製造業における自動化は高速で高品質な生産を実現してきましたが、そういった設備の導入には高いコストがかかります。同一品種を大量生産するような生産ラインは比較的自動化しやすいものの、少量多品種の生産ラインでは自動化のコストは大きくなるでしょう。 また、生産ラインの設計から稼働までの期間をできるだけ短縮し、生産ラインの稼働率を上げることも求められています。

生産ラインの適応性

現代社会は変化の激しい時代であり、市場の変動に即座に対応する生産ラインの構築が必要とされています。その対応として、カメラやセンサーなどIoT技術を導入して工場内のデータを収集し、AIによるデータ分析から得られた知見を活用するアプローチが注目されるようになりました。しかし、こういった技術にはノウハウやコストが必要で、簡単に導入できるものではありません。

中小企業の競争力

自社の製品を生産するためには自前の工場が必要ですが、中小企業にとっては工場の建設や運用にかかるコストは大きな負担となり実現が困難です。特に自社の工場を海外へ展開することは難しく、製造工場を日本国内に置いているケースが多いでしょう。

FaaSによる課題解決

従来の製造業が抱える上記の課題について、FaaSを活用すると低コストで柔軟なビジネス戦略が取れるようになります。

コスト効率と迅速な対応

FaaSのサブスクリプションモデルにより、工場の建設や設備導入に必要となる高額な初期投資や維持費の問題を緩和できます。必要な時だけ工場のリソースを利用できるため、効率的な生産計画が可能です。そのため、短期間で製品を市場に出すことや新製品の試作などを迅速に実施できるようになるでしょう。

シェアリングによる生産の効率化

FaaSでは複数の企業が生産ラインをシェアリングするため、市場の変動に応じて柔軟に使用する頻度を決められます。また、工場の製造装置やシステム、測定器などのレンタルが可能です。複数の企業の生産工程から導き出された、さまざまな部品のパラメータや産業用ロボットの設計パラメータなどを蓄積し、AIの学習、企業のマーケティングや商品開発に活用することも考えられています。

中小企業のビジネス拡大へ

FaaSを活用すると、製造設備や機器への初期投資できる費用が少ない企業でも製品の製造が可能となります。高価な機器も購入することなく利用できるため、その効果を体感して製造に生かすことも期待できるでしょう。また、これまではコストの問題で製造を断念していた少量多品種の製品も、費用をかけずに生産できるようになります。

FaaSは製造業の在り方を変えるか

FaaSは従来の製造業の在り方を変革する可能性を持っています。大きな初期投資や維持費の負担を減らすことで、さまざまな企業が製造業に参入しやすくなります。特に、中小企業やスタートアップにとっては、FaaSの仕組みは製造業界への足掛かりとなるでしょう。今後もFaaSの動向や発展に注目してみましょう。