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製造業の「革新」を支えるものづくり補助金(もの補助) 上限金額や補助条件を分かりやすく解説

レンテックインサイト編集部

 日本の基幹産業であるものづくり。
有効な取り組みを行う企業を支援する、さまざまな制度が存在します。
本記事ではその中でも中小企業向けの支援策として代表的な「ものづくり補助金」についてご紹介します。
受け取れる補助金額や申請条件、申し込み手順まで、「ものづくり補助金」を受け取るにあたって必ず押さえておきたいポイントを解説します。

ものづくり補助金の上限金額は? コロナ禍で新設された「特別枠」「事業再開枠」とは?

 ものづくり補助金は正式名称を「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」といい、中小企業・小規模事業者の「革新的サービス開発」「試作品開発」「生産プロセスの改善」などを支援することを目的に設置されています。
その補助金額の上限は一般型で1,000万円、グローバル展開型で3,000万円、ビジネスモデル構築型で1億円。2020~2022年の3年間程度を見越した中小企業生産性革命推進事業の予算(令和2年度)総額5,300億円をもとに実施されています。
ただし、一般型・グローバル展開型の場合は投資総額に対し、中小企業で1/2、小規模企業者・小規模事業者で2/3という補助率の上限も設けられています。

また、本年度は新型コロナウイルスにより打撃を受けた事業者を補助するため、「特別枠」「事業再開枠」が設けられました。特別枠では補助対象経費の1/6以上が「サプライチェーンの毀損への対応」である場合は2/3に、「非対面型ビジネスモデルへの転換」もしくは「テレワーク環境の整備」である場合は3/4に、補助上限が引き上げられます。
事業再開枠では業種別のガイドラインに基づいた感染拡大予防の取り組みに対し、上限50万円の補助金が支給され、通常枠に上乗せして受け取ることができます。

例年のものづくり補助金申請の採択率は4~5割と言われていますが、本年度は1次公募で約62.5%、2次公募で57.1%の採択率だったことが公表されています。コロナ禍の影響で設備投資への機運が下がりつつありますが、だからこそ補助金申請に適したタイミングであるともいえるでしょう。

一般型・グローバル展開型・ビジネスモデル構築型の違いは?

 ここで、一般型・グローバル展開型・ビジネスモデル構築型の違いを押さえておきましょう。

一般型・グローバル展開型はともに“革新的な事業計画を実行する際の設備投資などに対する補助”を目的としています。その対象は事業計画に必要な機械装置・システムの構築や技術の導入、専門家経費やクラウドサービスの利用費などさまざまです。その中にはIoTシステムの構築やクラウドサービスの導入、通信環境の構築なども含まれます。
グローバル展開型はそれに加えて「その施策が海外事業の拡大・強化を目的としていること」が条件となっています。

一方、ビジネスモデル構築型は革新的な事業計画の「策定」に対する補助であり、他の中小企業30者以上に対して一定の成果を与えられるプログラムの提供が条件とされています。
デジタル化支援や新技術の導入などで多くの方を支援することにつながるからこそ、最大1億円もの支援が受けられるというわけですね。

ものづくり補助金の補助規定から分かること

 ものづくり補助金を受け取る前提として、以下の規定を満たす必要があります。

  1. 中小企業者および特定非営利活動法人に該当する
  2. 補助事業実施期間にすべての事業の手続きが完了する
  3. 以下の要件をすべて満たす3~5年の事業計画を策定・従業員に表明している(ビジネスモデル構築型の場合は中小企業30者以上に対して要件を満たす策定支援プログラムを開発・提供する)
  • ・付加価値額 :+3%以上/年
  • ・給与支給総額 :+1.5%以上/年
  • ・事業場内最低賃金≧地域別最低賃金+30円

取り組みの結果成果を出し、きちんと従業員に還元することが求められていることがよく分かります。この上で、対象となる事業に技術面や政策面における革新性・実現性があると認められてはじめて審査に通過することができます。
この他にも、各型に応じて条件が設定されています。詳しくは「ものづくり補助金総合サイト」に掲載された公募要領をご確認ください。
(参照:全国中小企業団体中央会 ものづくり補助金総合サイト

なお、給与支給総額や最低賃金の増加目標が達成できなければ、規定に応じた額の補助金の返還が求められることになります。ただし、付加価値額が目標通りに伸びずやむを得ない事情がある場合は例外となります。

申請手順と必要な資料は?

ものづくり補助金の申請は100%電子化されています。
電子申請に必要なのがGビズIDの取得です。一般型・グローバル展開型の場合はそのまま「ものづくり補助金総合サイト」の電子申請システムから、ビジネスモデル構築型の場合はjGrantsから申請手続きを行います。
(参照:ものづくり補助金総合サイト」の電子申請システム
(参照:jGrants

申請の際は、以下のような書類が必要となります(一般型・グローバル展開型)。

  1. 事業計画書(具体的取組内容、将来の展望、数値目標等)
  2. 賃金引上げ計画の表明書(直近の最低賃金と給与支給総額を明記し、それを引き上げる計画に従業員が合意していることが分かる書面)
  3. 決算書等(直近2年間の貸借対照表・損益計算書等)

さらに、経営革新計画承認書、開業届、自然災害による被災状況等証明書など、審査においてプラスに働く資料を追加します。

ビジネスモデル構築型の場合は事業計画書だけでなく、事業計画の「プレゼンテーション動画」が必要となるなど、必要な資料の内容が一般型・グローバル展開型とは大きく異なります。

補助申請が採択されれば、実際に事業を実施する段階に入ります。その実績を報告し認められてはじめて補助金の支払いが行われることになります。
補助金が交付されるのは最後ということを肝に銘じて、無理のない事業計画を慎重に練ることが求められています。

ものづくり補助金の効果──平均18%の売上増加率

 中小企業の新たな取り組みに役立つ「ものづくり補助金」の基本事項について解説しました。
ものづくり補助金を活用した企業では平均18%と中小企業全体の約1.6倍の売上増加率を達成していることを報告する実績もあります。審査のハードルはありますが、採択率の高まっている現在の状況を追い風と考え、ぜひ申請を検討してみてください。

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