ホームITNICTとは?ICTを専門とする国内研究機関の取り組みを紹介

IT Insight

NICTとは?ICTを専門とする国内研究機関の取り組みを紹介

レンテックインサイト編集部

NICTとは?ICTを専門とする国内研究機関の取り組みを紹介

NICT(国立研究開発法人情報通信研究機構)は、日本唯一の情報通信技術(ICT)専門の公的研究機関で、ICT関連の研究を通じて社会の発展に貢献しています。基礎研究だけでなく、産官学の連携や海外の研究機関との協力活動の推進も行っています。本記事では、NICTの役割やNICTが掲げる中長期目標、重点研究開発分野の内容について解説します。

NICTとは

NICTは、ICT分野における長期的かつ戦略的な研究開発を行い、日本の科学技術および国民経済の発展に寄与することを目的としています。

NICTの役割

NICTは総務省所管の国立研究開発法人で、ICT分野に関する基礎研究や技術開発、公益事業、産官学の連携、国際的な協力活動などを推進しています。政府戦略を踏まえてICT分野における世界最先端の研究開発を推進し、その成果を社会実装へつなげてICTインフラの実用化に取り組みます。科学技術が社会と調和するための倫理や法制度、社会的な課題を検討した上で、新たな価値を創出する社会の実現を目指しています。

NICTではAI、サイバーセキュリティ、リモートセンシング分野における膨大な研究データを蓄積、活用しています。そのことが日本の国際競争力につながる強みにもなっています。情報通信分野の持続的な発展に必要な人材育成や研究支援にも力を入れており、NICTの研究成果を活用した人材育成プログラムの提供も行っています。

NICTとは?ICTを専門とする国内研究機関の取り組みを紹介 挿絵

NICTが掲げる中長期目標と重点分野

研究開発事業の特性として、長期性、不確実性、予見不可能性、高い専門性が挙げられます。研究開発の最大限の成果確保を目指すため、5〜7年の期間において達成すべき中長期目標の設定と公表が義務付けられています。

また、研究開発のみならず、その成果を社会経済全体におけるイノベーションの創出につなげるための取り組みも行います。産業界や学術界、政府との連携、研究成果の社会実装、国際的な研究ネットワークの構築、ICT人材の育成といった取り組みが挙げられます。

令和3年から令和8年の5年間におけるNICTの中長期目標では、重点研究開発分野として5つの分野を定めています。

電磁波先進技術分野

センサーを用いたデータ収集や高精度な観測における基礎技術として、電磁波技術の研究開発を行います。同技術はSociety 5.0を実現する基盤技術として期待されており、標準化や研究成果の普及、社会実装を目指します。

防災など社会的課題の解決に向けたリモートセンシング技術、通信や放送、人工衛星の安定運用などを実現する宇宙環境計測技術、無線システムの安全利用のための電磁環境計測技術などに取り組んでいます。

革新的ネットワーク分野

地上や衛星などのネットワークを多層的に接続する基礎技術の研究開発に取り組みます。これからの時代に予想されている通信量の爆発的増加に対応するため、高速かつ安全な通信環境の構築を目指します。

Beyond 5G時代の多様なネットワークを支える通信アーキテクチャ、光と電波を融合するアクセス技術、通信容量の向上や通信エリア拡大を目指す次世代ワイヤレス技術、衛星通信ネットワーク技術、テラヘルツ波の利活用推進のための研究開発などがあります。

サイバーセキュリティ分野

急増するサイバー攻撃から社会システムを守るサイバーセキュリティ技術の研究開発に取り組み、標準化や社会実装も視野に入れています。サイバー攻撃への対策はNICTに対する社会的要請として声が上がっており、研究開発および開発成果の普及に向けて体制強化を進めています。

サイバー攻撃の観測や分析・可視化・対策技術、セキュリティおよびプライバシー確保のための暗号技術の研究開発にも取り組みます。最新のサイバー攻撃の知見を踏まえた演習や人材育成、サイバーセキュリティに関する産学官連携拠点の構築なども重要なミッションです。

ユニバーサルコミュニケーション分野

人工知能などを活用し、新たな知識や価値を創造していくための基礎研究に取り組んでいます。ビジネスや国際会議でも利用可能なレベルの自動同時通訳を実現する技術の研究開発や、外国人材受け入れや観光戦略などを踏まえた重点対応言語の充実・拡大、2025年の大阪・関西万博も見据えた同時通訳システムの実装なども推進しています。

また、インターネットなどに蓄積された情報を深層学習技術で取得し、ユーザーの背景や文脈に合わせた音声対話を実現する技術や、多様なセンシングデータを連携して予測や分析を行うデータ利活用技術にも取り組んでいます。

フロンティアサイエンス分野

Beyond 5Gを支える基盤として期待される、イノベーション創出に向けた基礎研究を行っています。通信技術やセンシング技術の飛躍的発展を実現するICTシステムの創出のため、人間や環境への親和性が高い、生物を模倣した工学的手法による通信システムの開発を進めています。

さらに、宇宙など極限環境におけるICTシステムを見据えた半導体デバイス技術、解読不可能な量子暗号などの量子情報通信技術、脳情報の取得や解析なども研究対象です。

日本の情報通信技術の発展を担う組織

NICTは、日本における情報通信技術(ICT)の進展を牽引する研究機関で、社会的課題の解決に貢献しています。本記事でご紹介した重点研究開発分野の取り組みだけでなく、産学官連携の強化や標準化活動、人材育成などの分野横断的な研究を通じて、情報通信技術の新たな可能性を見出そうとしています。NICTの取り組みをチェックしておくと、ICT分野の今後の姿が見えてくるかもしれません。

IT Insightの他記事もご覧ください

Prev

Next