ホームIT今後の半導体工場の建設予定や立地に適した条件について

IT Insight

今後の半導体工場の建設予定や立地に適した条件について

レンテックインサイト編集部

今後の半導体工場の建設予定や立地に適した条件について

日本政府は、国内の生産拠点の整備やサプライチェーンの強化を目指し、新たな半導体工場の建設に向けて補助金を提供しています。その政策の影響もあり、最近では国内での新たな半導体工場の設立が活発化しています。本記事では、今後の建設が予定されている半導体工場の概要や、工場の立地に適した条件について解説します。

今後予定される半導体工場の建設

今後予定される工場建設の事例として、熊本県菊陽町に建設予定である台湾の半導体メーカーTSMCの新工場と、北海道千歳市に建設予定である日本企業ラピダスの新工場についてご紹介します。

TSMC熊本工場

台湾の半導体メーカーであるTSMCは、熊本県菊陽町で新たな半導体工場の建設を進めています。TSMCは、半導体の受託生産を手掛けるファウンドリ企業であり、半導体企業の中でも世界最大手の規模を誇ります。熊本に建設予定の新工場は、2022年4月に着工、2023年に完成、2024年までに生産開始が予定されています。TSMCの製造可能な最先端の半導体は3nmとされていますが、熊本工場では10nm~20nmオーダーの半導体の生産が行われる予定です。

なお、九州全体としては、熊本を含めて1000社以上の半導体関連企業が集積しており、かつては「シリコンアイランド」とも呼ばれていました。2000年代以降で主要企業の撤退もありましたが、今回のTSMCの新工場立ち上げに伴い、ほかの関連企業の進出も予定されており、シリコンアイランドの再興が期待されています。

ラピダス北海道工場

Rapidus株式会社(ラピダス)は、ソニー、トヨタ自動車、デンソー、キオクシア、NTT、NEC、ソフトバンク、三菱UFJ銀行といった日本国内の大手企業8社が共同出資し設立した新会社です。日本の半導体産業が世界との競争で後れを取っている現状を踏まえ、最先端となる2nmの次世代半導体開発を目指しています。

同社の北海道工場は2023年9月に着工し、2025年4月に生産を開始する予定です。また、既に2nm製造技術を開発したIBMと、EUV露光装置の技術を持つimecの協力のもと、日本国内における2nmの製造技術の開発と2027年の量産開始を目指しています。

今後の半導体工場の建設予定や立地に適した条件について 挿絵

半導体工場の立地に適した条件

半導体の製造工程は、大きく前工程と後工程の二つに分けられます。工場の立地に望ましい条件として、前工程の洗浄作業で必要となるきれいな水が豊富であること、輸送のための周辺の交通網が充実していること、ほかの半導体工場が集積していること、の三つが挙げられます。

半導体の製造工程

半導体の製造工程は、シリコンウエハー上に電子回路を形成する前工程と、ウエハーから半導体を切り出して完成品として封入する後工程に分けられます。前工程と後工程は別々の工場とされていることが多く、特に前工程では大量の超純水や電力といった資源の入手性の良さが求められます。

また、前工程の工場は試作品の生産や研究を行う場所としても機能しています。そのため研究所のある関東地方の立地が多い傾向にあります。一方、後工程の工場は人件費の影響から、シリコンアイランドと呼ばれる九州地方やシリコンロードと称される東北地方に位置することが多いです。

きれいな水が豊富

半導体製造の前工程では、シリコンウエハーの上に層を積み重ね、エッチングという技術でウエハーを加工して回路を生成します。その過程においてウエハー上の異物を洗浄し、除去するためには不純物の少ない純水や超純水が必要です。なお、製造する半導体の微細化レベルが高いほど、高純度の水が求められます。そのため周辺の水の純度が高く、容易に確保できる場所が半導体工場の立地に適しています。

周辺の交通網が充実

半導体工場で製造された半導体は、国内外のさまざまな工場、電子部品メーカー、商社などへ輸送されます。目的地への物理的かつ時間的な距離が短いほど輸送コストを削減できるため、半導体工場の立地としては高速道路や空港、港湾など、周辺の交通網が充実していることが望まれます。

半導体工場が集積する地域

自社や関連企業の工場の近くに半導体工場を設けると、輸送コストを抑えられます。新工場の建設がきっかけとなり、周辺地域に関連工場が進出することも多く見られます。

国内における半導体工場の建設が進む

日本政府が助成金を出して後押ししていることもあり、国内における半導体工場の新設が盛んに行われています。最近では、台湾の大手ファウンドリ企業であるTSMCと、日本の大手8企業が出資するラピダスの新工場が建設予定となっています。工場立地としては、きれいな水が豊富であり、周辺の交通網が整っている、また半導体工場が集積している地域が望ましいとされています。半導体工場の新設のニュースが報じられたときには、どの地域が選ばれたのかにも注目してみてください。

IT Insightの他記事もご覧ください

Prev

Next