本記事ではパワー半導体材料で高いシェアを持つ株式会社レゾナック・ホールディングスをご紹介します。
2023年の半導体需要は不安定な市況が予想されていますが、パワー半導体分野の市場は今後継続的な成長が見込まれています。そうした中、パワー半導体向け材料「SiCエピタキシャルウエハー」で高いシェアを持つレゾナック・ホールディングスが世界から注目されています。
レゾナック・ホールディングスは、2023年1月1日に昭和電工と昭和電工マテリアルズ(旧住友化成)が統合して設立された会社です。代表取締役には米General Electricアジアパシフィックプレジデント、GKNドライブラインジャパン代表取締役などの経歴を持つ髙橋秀仁氏が就任しました。
新社名の「RESONAC」は、英語の「RESONATE:共鳴する・響き渡る」と、CHEMISTRYの「C」を組み合せることから生まれました。髙橋氏は社名に関して「社会課題の解決にはイノベーションが不可欠だが、一社だけで実現するのは難しく、志を共にする仲間と繋がる必要がある。」という思いを語っています。
レゾナック・ホールディングスの売上高は約1兆4千億円となり、花王や三井化学を超えて化学業界では第6位の事業規模に拡大しました。そのうち半導体関連が約4,000億円を占めます。
レゾナック・ホールディングスのビジネスは多岐にわたっており、幅広い産業に向けた先端材料を提供しています。
そのほかに再生医療等製品の製法開発・受託製造など新たな分野にも挑戦しており、総合化学メーカーとして幅広くビジネスを展開しています。
2023年に誕生したレゾナック・ホールディングスの今後の狙いは、成長産業である半導体材料に投資を集中して、会社の規模を拡大していくことです。昭和電工がもともと手掛ける石油化学事業の現状のトレンドは右肩下がりで、カーボン事業のトレンドは横ばいが予想されています。
そのため今後の成長事業として、半導体・電子材料に投資を集中することを計画しています。半導体材料のスペシャリティー企業である日立化成との統合で、シナジー効果が期待できると考えています。ただし、半導体・電子材料への投資は、現在の市場が不安定であるため、効果を表すまでには少し時間がかかる可能性があります。
レゾナック・ホールディングスが複数の事業でビジネスを展開する裏には、多くの計算科学人材を確保している背景があります。レゾナックには計算情報科学研究センターで、人工知能シミュレーションを手掛けている強みがあります。同センターは材料開発の際に、シミュレーションを活用して実験回数を大幅に低減させる役割を担っています。そのため企業規模以上に多くの計算科学人材を採用し、生産性の向上に活用しています。
代表取締役の髙橋氏は、グローバル競争で生き残るためには会社の規模拡大が必要だと考えています。目標として、売上高1兆円以上でEBITDA(利払い・税引き・償却前利益)を売上高の20%にする必要があると考えています。現在の世界トップ3の化学メーカーである米デュポン、米3M、信越化学工業と同等のレベルに引き上げることが重要と考えているからです。
レゾナック・ホールディングスの2022年通期の決算は、半導体材料不振の影響で営業赤字となりました。半導体材料への投資が実を結ぶまでは、まだ時間がかかると考えられています。
今後、半導体市況が成長市場に戻れば、半導体事業への集中投資が実を結ぶ可能性があります。そうなれば世界でトップのシェアを持つパワー半導体材料の強みを活かして、世界トップ3に入る総合化学メーカーに成長する日が訪れるかもしれません。