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AMD社が社運を賭けたZenアーキテクチャ AI時代に活躍するCPUとは

レンテックインサイト編集部

AMD社が社運を賭けたZenアーキテクチャ AI時代に活躍するCPUとは

コンピューターの頭脳、CPUのメーカーであるAMD社。近年の躍進は著しく、スーパーコンピューター性能ランキングのTOP500で同社の第3世代 AMD EPYC™ プロセッサは、2022年、2023年の上期・下期の4期連続1位を獲得。そして、Microsoft 365やAzure、AWSといったクラウド、ゲーム機、エッジコンピューティング、サーバー、ワークステーション、AIなど多くの領域でシェアを拡大しています。

同社のプロセッサはどのような点で卓越しており、なぜ快進撃を続けているのか?

日本AMD株式会社 コマーシャル営業本部 セールスエンジニアリング担当 マネージャー関根 正人氏に、その特性と機能、メリットについて実際のテスト結果や実例と併せて、お話しいただきました。

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x84-64bitの開発元のAMD社が社運を賭けた「Zen」アーキテクチャのキーワードは“高性能”かつ“小型”

「現在64bitOSの世界で主流となっているx84-64命令セットを開発したのはAMD社だとご存じでしたか?」(関根氏)

世界中のデスクトップ、ノートPC、サーバーで使用されているx84-64命令セットは1999年にAMD社によって公開され、当初はAMD64と呼ばれていました。すなわち、64bitの世界においてAMDはメインソースの提供元であり、互換性・汎用性には不安を抱く余地がないと関根氏は話します。

同社の飛躍の大きなきっかけとなったのが、2017年の新シリーズ「Zen」アーキテクチャ(AMD Ryzen™ プロセッサ、AMD EPYC™ プロセッサ)のリリース。マサチューセッツ工科大学(MIT)で電気工学の博士号を取得した代表取締役社長兼CEOリサ・スー博士が社運を賭けたプロジェクトで、4年をかけて開発されたのが、この業界のゲームチェンジャーとなる新しいCPUコアでした。

同プロセッサのキーワードは、“高性能”かつ“小型”です。それまでのCPUに比べクロックサイクルあたりで処理できる命令数は飛躍的に高まったにもかかわらず、最先端の微細化加工技術により小型化を加速させることを達成。第3世代シリーズでは1コアあたりの面積 4.11m㎡の省スペースを実現し、省スペース性、電力効率、そして1ワットあたりの性能において他製品に大きな差をつけていることが数値に表れています。

その性能は、最新の第4世代シリーズ「Zen4」アーキテクチャにおいてはさらに飛躍しています。

昨年リリースされたコンシューマー向けの『AMD Ryzen™ 7000 シリーズ プロセッサ』では、Zen3搭載の7030シリーズと、Zen4搭載の7040シリーズ・7045シリーズを展開。さらに、性能と価格のバランスを考慮し、Zen3を強化したZen3+搭載の7035シリーズがリリースされています。

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『AMD Ryzen 7040 シリーズ プロセッサ』のGPU・AI専用エンジンが次世代のPC利用を加速させる

AMD社の大きな特長として挙げられるのが、ハイパフォーマンスなCPUとGPUをともに提供しているという点です。近年はゲームのみならず、Office製品などビジネス用途にも積極利用される傾向のあるGPU。

「最新のAMD Ryzen 7040 シリーズ プロセッサでは次世代GPUアーキテクチャ『RDNA3』を採用しており、大幅にGPU性能を高めています」(関根氏)。

AMD社のハイエンド製品は、CAD、CAEなど高負荷なソフトを動かすためのモバイルワークステーションとしての活用や、コンピューティングパワーが求められるソフトウエア開発の現場でのニーズが高まってきています。

その利用で得られるのが、計算にかかる時間の大幅な短縮というメリット。さらに、開発期間や高度人材の人的コストに加え、実行時間当たりで課金されるアプリケーションのライセンス料の削減につながるということです。

さらに2022年、組込みシステムやエッジコンピューティングで大きく存在感を高めるFPGA開発メーカーのザイリンクス(Xilinx)社がグループの一員となったことで、同社はさらに市場拡大に向けての打ち手を強化しています。

AMD Ryzen 7040 シリーズ プロセッサは世界初、AI専用エンジン(NPU)を搭載したクライアント向けx86プロセッサであり、4つのユニットによる4つのAIワークロードを並列でリアルタイム・マルチタスク処理が可能となります。またこの4つのユニットを単一の大きなAI処理にも対応させることが可能で、自由度の高いNPUとなっています。

「AIサービスのニーズ増を背景に、ハイブリッドなAI利用に注目が集まっています」と関根氏。

クラウドのAIサービスと、データの発生元に設置されるローカルのAIを併用することで、データのアップロード・ダウンロードで生じる処理遅延時間やセキュリティリスク、電力コストを削減するとともに、計算の効率化を図ることも可能になります。

目線に合わせたカメラの調整や背景の自動ぼかしなど、AIエンジンを活用した高度なビデオ会議機能はすでに実用化されているとのこと。さらに加速するAI時代に向けて、AMD社は製品強化をつづけています。

AMD社が社運を賭けたZenアーキテクチャ AI時代に活躍するCPUとは 挿絵2 AIの力を引き出す

AMD社が社運を賭けたZenアーキテクチャ AI時代に活躍するCPUとは 挿絵3 近い将来の生成AI ハイブリッドAI

セキュリティ専用プロセッサ・メモリ暗号化でゼロトラストセキュリティを実現

近年の攻撃件数の増加、被害規模の拡大を背景に、関心が高まっているサイバーセキュリティ面にも他社にない特性を持つのがAMD社のプロセッサです。

AMD Ryzen プロセッサはセキュリティ専用のAMDセキュアープロセッサをSoCに内蔵し、新たな脅威にも対応可能なゼロトラストセキュリティを実現。さらに、完全システム・メモリ暗号化機能を搭載することで盗難や紛失によってメモリから直接処理中のデータを抜き出されるリスクにも対応しています。

「AMDがBtoB向けコンピューティング市場に力を入れはじめたのは、ここ3年近くのことなのです」(関根氏)。

コンシューマー向け市場で残した実績を携え参入してからの約3年間で、プラットフォーム数は150社近くに到達しました。

クラウドサービス市場が拡大を続ける中で、コンシューマー向け以上にシビアな電力面における性能の高さが決め手となり、データセンター事業者によってEPYCが選ばれるケースは増えてきているといいます。

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AMD Ryzen 7040 シリーズ プロセッサから 8040 シリーズへ、さらに性能は進化する

これからAMD社のプロセッサはどのように進化していくのか?

その回答は「すでにAMD Ryzen 7040 シリーズ プロセッサの次、AMD Ryzen 8040 シリーズ プロセッサも発表されています」というもの。CPU、GPUのみならず、前述したAIエンジン(NPU)の性能アップも見込まれています。

新製品のリリースへ市場の期待が膨らむ現在、「まずはぜひ現ラインアップからでもお手にとってその良さを実感していただきたい」と関根氏。「競争力アップやコスト削減のみならず、CO2排出量の制限にもつながり、社会的な価値も高めることができる」と自社製品への自信を語ります。

AMD社がなぜ近年飛躍を遂げたのか、CPUの未来はこれからどこへ向かうのか。この記事からその一端が伝わったのであれば幸いです。より製品やコンピューティングの未来について深く知りたいという方はぜひ、購入、あるいはレンタルを通して同社製品を一度手に取り、その性能を実感してみてください。

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