2022年12月、「2023年度税制改正大綱」が閣議決定され、「DX投資促進税制」の適用期限が2年間延長されることが発表されました。DXというキーワードが広まり、先行事例も知られるようになった中で、自社でもDX投資に踏み出そうとしている企業は数多く存在するでしょう。 そこで、「DX投資促進税制」の概要や受けられる税制措置、認定要件などについて分かりやすくご紹介します。また、企業の未来へ向けた投資を支える意図で設置された「CN税制(カーボンニュートラルに向けた投資促進税制)」などほかの制度についても同じくポイントを押さえて解説します。
「DX投資促進税制」は、企業のDX促進を目的として令和3年度(2021年度)3月の税制改正により、令和3年8月2日~令和5年3月31日まで、2年間の時限措置として設置されました。その対象は青色申告法人に限られ、さらに産業競争力強化法の認定事業適応事業者であることが条件となります。
そして、前述の通り2年間の延長が決定、その目的は下記の通り発表されています。
出典:DX(デジタルトランスフォーメーション)投資促進税制の見直し及び延長┃経済産業省
それでは早速、その対象設備や受けられる税制措置、認定要件や適用期間について一覧で見ていきましょう。
出典:DX(デジタルトランスフォーメーション)投資促進税制┃民間の強靱化の取組のための国・都道府県の支援施策集(内閣官房)
「対象設備」における「繰延資産」とは、クラウドシステム移行にあたって必要となる初期費用のことを指します。また、「器具備品」「機械装置」はソフトウエアあるいは繰延資産と連携して使用されるものでなければなりません。
「DX認定」とは、DX推進の準備が整った企業を国が認定する制度で、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)に申請書類を提出することで取得できます。1年を通していつでも取得可能ですが、有効期間は2年となります。認定の更新を受けるためには、認定後2年を経過する日の60日前までに、認定更新申請書を提出する必要があります。
DX認定が取得出来たら、認定を受けようとしている事業分野の主務大臣に「事業適応計画の認定申請書」を提出することになります。事業適応の目標や事業適応を行う場所の住所、必要な資金の額および調達方法、設備投資の具体的内容などを記載して原則Web(gBiZFORM)より提出することとなっており、その添付書類フォーマットや記載例はこちらの経済産業省ページにまとめられています。
「カーボンニュートラルに向けた投資促進税制(CN税制)」は、2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、DX投資促進税制と同じく令和3年度税制改正にて制定されました。
その対象設備は「需要開拓商品」(大きな脱炭素効果を持つ「化合物パワー半導体」「EVorPHEV向けリチウムイオン蓄電池」「定置用リチウムイオン蓄電池」「燃料電池」「養生風力発電設備の主要専門部品」のいずれかの製品生産設備)もしくは、「生産工程効率化等設備」(生産工程等の脱炭素化と付加価値向上を両立する設備)のいずれかです。
DX投資促進税制と同じく、その対象設備や受けられる税制措置、適用期間について詳しくは以下の表にてご確認ください。
出典:財務省ウェブサイト
CN税制の申請手続きも、該当事業を所管する省庁への事前相談を経て、申請書+添付書類を原則Webにて提出することで行います。こちらも事業適応の目標や対象事業の内容、実施時期などを示す必要があることに加え、添付書類では炭素生産性の向上率やその根拠となる資料なども用意する必要があります。
そのためのエネルギー起源二酸化炭素排出量の根拠資料や、計算ツール、申請書の記入例、過去の認定事例などは、DX投資促進税制と同じくこちらの経済産業省ページにまとめられています。
企業の未来へ向けた活発な投資を支援すべく運営されている制度は、もちろんほかにも多数存在します。
令和3年度税制改正では、企業の研究開発投資に対し税額控除が与えられる「研究開発税制」の控除率上限の引き上げや、控除率下限の引き下げが2年間の時限措置として発表されました。そして、令和5年度税制改正では、「一般試験研究費の額に係る税額控除制度」について、令和7年度末まで3年間適用期限が延長されることとともに、下記のような変更点も発表されています。
出典:令和5年度税制改正の大綱(3/10)┃財務省
また、中小企業者の研究開発を後押しする「中小企業技術基盤強化税制」ついても、3年間の特例の適用期限の延長やその内容の見直しが発表されています。なお、研究開発税制は令和2年度には8,668社、額にして5,053億円が適用されたとのことです。
「DX投資促進税制」「CN税制」「研究開発税制」など企業のイノベーションや生産性向上、カーボンニュートラルを後押しする税制についてご紹介してまいりました。毎年度の税制改正は、経営者はもちろんマネージャーや情報システム部、経理部などさまざまな立場の業務に有益な知識となる可能性があります。本記事を皮切りに、手掛ける事業に関連する税制の動向に目を向けていきましょう。