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工場ネットワークにおけるフィールドバスの役割と種類

レンテックインサイト編集部

工場ネットワークにおけるフィールドバスの役割と種類

近年の工場ネットワークの新規設置ノードは「イーサネット(Ethernet)」が主であり、その通信速度やシームレスなネットワーク接続における優位性から今後も普及は進むと考えられます。しかし、従来主流であった「フィールドバス」もその実績による信頼感の高さを背景に、存在感を失っていないことは忘れてはなりません。私たちはフィールドバスをイーサネットと比較し、どのように位置付ければよいのでしょうか?

本記事では、フィールドバスの特性やバリエーションについてご紹介し、その役割について解説します。

フィールドバスとイーサネットの違いと現在の関係性

そもそもフィールドバスとは、工場内の機器・設備間におけるデジタル接続を実現するためのネットワークであり、その特性から工場ネットワークの構築において従来主流であったのは当然のことでした。

工場ネットワークにおいて特に重要なのは、「安定性」「接続性」「安全性」の3本柱。

フィールドバスは、データを1ビットずつ逐次的に送信するシリアル通信を採用することで「ハード・リアルタイム」(※)を実現します。また、測定器とPLC、DCSなどの制御システム、現場機器とコントローラーらの相互接続をまとめてカバーすることで配線コスト削減やアナログ通信における相互干渉の防止といったメリットを得られます。

2015年ごろよりインターネット接続などでおなじみのイーサネット(産業用イーサネット)がフィールドバスを凌駕し普及しはじめたのは、DXへの注目が高まりITとOTの融合が注目を集める環境下にて、PROFINET、EtherNet/IP、EtherCATなどのリアルタイム・イーサネット(RTE)規格が発展したことが影響しています。

とはいえ、2020年代に入ってからも産業用ネットワーク自体の広がりからフィールドバスの設置実数自体は増加したというデータも報告されており、産業用イーサネットの勢い著しい状況下においてもこれまでFA(Factory Automation)・PA(Process Automation)を支え続けてきたフィールドバスはまだ信頼感を維持していることが分かります。

ただし、今後ネットワークの統合やデータ活用が求められる中で、上位のサーバ層からコントローラー、センサーまで統合管理できるイーサネットへの移行が工場ネットワークにおいて進む傾向は、全体としては変わらないでしょう。

※…定められた期限内に確実に処理を完了する特性。対義語は、許容できる範囲での遅延を許容する「ソフト・リアルタイム」

PROFIBUS、Modbus RTU、CC-Link……フィールドバスでよく用いられる規格それぞれの違い

ここで、フィールドバス規格の中でも特に大きなシェアを占める「PROFIBUS」「Modbus RTU」「CC-Link」それぞれについて概要をご紹介します。

PROFIBUS

1989年にドイツで開発され、2000年に国際規格となったオープンなフィールドバスであり、シンプルなマスター・スレーブ方式で通信を行います。オートメーション・システムと設備の接続を行う「PROFIBUS DP」とPAに特化した「PROFIBUS PA」の2種類が存在し、最大12Mbpsという通信速度の速さやグローバルにサポート・活用される信頼性が特長です。同規格を管理するPI(PROFIBUS & PROFINET International)は産業用イーサネットの主流規格の一つである「PROFINET」の管理も行っています。

Modbus RTU

1979年に米Modicon社によって開発されたPLC用のオープンな通信規格Modbus(モドバス)のフィールドバス用のプロトコルです。通信プロトコルはマスター・スレーブで規定されているものの、運営主体が存在しないことからネットワーク構成やケーブル仕様などが規定されておらず、利用の自由度が高い一方、接続可能性が保証されていない点は留意しておく必要があります。Modbusのイーサネット通信用プロトコルには「Modbus/TCP」があります。

CC-Link

1996年に三菱電機株式会社によって開発されたフィールドバス用の通信規格で、2000年6月にオープン化されました。CC-Linkとは、「Control & Communication Link」の略称です。マスター・スレーブ方式のプロトコルを採用しており、最大10Mbpsの高速通信や伝送距離の長さ、同社シーケンサへの対応といったアドバンテージを持ちます。安全性の確保に主眼を置いた「CC-Link Safety」や、イーサネットベースの「CC-Link IE」シリーズなども開発されています。

「マスター・スレーブ方式」とは?

ここまでご紹介した、フィールドバスの通信プロトコルはすべて「マスター・スレーブ方式」のプロトコルを採用していました。同方式は、データの送受信において通信を制御するマスター機器(通常はPLC、DCSなどの制御機器)とその命令に応答するスレーブ機器の主従関係を構築することでデータの衝突を防止し、安定稼働が期待できるのがポイントです。

マスター・スレーブの中でも、その配線形態には下記のようにバリエーションが存在し、ノード故障時の冗長性や伝送効率を考慮してベストなトポロジーを選ぶ必要があります。

  • バス型
  • スター型
  • リング型
  • デュアルリング型
  • フルメッシュ型
  • ツリー型

産業用イーサネットやTSNはフィールドバスの延長線上にある

産業用ネットワークにおけるイーサネットの存在感が高まる中で、今一度見つめなおしたいフィールドバスの特性や種類について解説してまいりました。産業用イーサネットやその次世代規格であるTSNはフィールドバスの延長線上にあり、ハード・リアルタイムなど工場ネットワークの安定稼働に必要な要件を満たすべく刷新が続けられてきた歴史があります。DX実現も、フィールドバスによるネットワーク構築の延長線上にあると考えると、実感を持って推進の道筋を描けるのではないでしょうか。

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