サイバーセキュリティに関連する法令や制度は数が多いため、最新の情報を個別にキャッチアップし続けることは難しいでしょう。そこで参考になる資料として、内閣サイバーセキュリティセンターが公開している「サイバーセキュリティ関係法令Q&Aハンドブック」があります。本記事では、ハンドブックの概要や掲載している主なトピックス、活用方法について解説します。
サイバーセキュリティ関係法令Q&Aハンドブックは、サイバーセキュリティ対策において参照すべき関係法令をQ&A形式で解説したものです。企業における平時およびセキュリティインシデント発生時の対応についての法令、情報の取扱いに関する法令、情勢の変化に伴い生じる法的課題などを平易な表現で解説しています。
この資料は内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)が作成しており、NISCの公式サイトからダウンロードが可能です。2023年9月に最新版のVer2.0が公開されており、これには近年のサイバーセキュリティに関する情報も追加されています。
ハンドブックでは、サイバーセキュリティに関連するさまざまな法令の情報を記載しています。主なトピックスは以下の通りで、サイバーセキュリティと関連の強い法令の内容だけでなく、労働法や契約関連、民事訴訟手続など幅広く取り上げています。
ハンドブックの内容は、サイバーセキュリティに関連する法令の基礎知識の習得、セキュリティ対策の実務、最新情報のキャッチアップなどに活用できます。
ハンドブックはサイバーセキュリティと関連する法律の基本的な理解を深めるのに役立ちます。サイバーセキュリティに関連する法令は増え続けており、事業者には法令に基づいた適切な対策が求められますが、その一方で法令を解説した資料は少ないのが実情です。
ハンドブックは単に法令がまとめられているだけでなく解説も充実しており、法律の専門家でない現場の担当者でも利用できるよう平易な表現でまとめられています。全部で87のQ&Aで構成され、それぞれについて概要と解説、法令やガイドラインなどの参考資料、裁判例といった項目でまとめられています。
ハンドブックは、特に企業の経営層、戦略マネジメント層、法務部門を主な読み手と想定して作成されました。各種法令やガイドラインなどの参考資料についての解説を確認しておけば、法令遵守を図りつつ、効果的なセキュリティ対策を策定するのに役立つでしょう。
ハンドブックは一般的なものと考えられる公刊物の内容を踏まえて作成されていますが、個別の具体的な事例について、現行法がどのように解釈、適用されるかは最終的には裁判所で判断されます。ハンドブックの内容を過信せず、あくまでも参考として捉えておくようにしましょう。
サイバーセキュリティの分野は常に変化し続けているため、関連する法令も随時更新されています。ハンドブックのVer1.0は2020年3月に公開されましたが、その後もサイバーセキュリティの制度は整備や改定が行われています。
2023年9月に公開されたVer2.0では、サイバーセキュリティインシデント発生時の対応、5G促進法、ランサムウエア対応、認証や本人確認に関する法令、ドローンやモビリティ、DXなどの最新技術についての内容が追加されました。サイバーセキュリティ関連の法令は、ハード・ローと呼ばれる正規の手続きを経た法律よりも、ソフト・ローと呼ばれるガイドラインや技術標準の方が事実上の規範となっている場合があります。
サイバーセキュリティ関係法令Q&Aハンドブックは、サイバーセキュリティの法的側面に関する理解を深めるのに役立つでしょう。ハンドブックでは、企業における通常時の運営から緊急事態発生時の対応、さまざまな法的課題への対処方法まで、幅広いトピックが網羅されています。
ハンドブックは、法律の専門家でない実務担当者が読むことを念頭に置いて作成されています。サイバーセキュリティに携わる方は、ご自身に関連するトピックスについて目を通しておくとよいでしょう。