AI、CAE、デジタルツインなど、大きなコンピューティングパワーを必要とする最先端のICT技術の活用は、企業の競争力強化において重要な要素の一つです。しかし、「社内にAI/HPCの知見が不足しており、プロジェクトが前に進まない」「なかなかPoCの壁を超えることができない」という企業の声は少なくありません。
そこで注目したいのが、2020年2月にリリースされたエクストリーム-D株式会社のAI/HPCプラットフォームサービス『AXXE-L Cloud』です。
目的に合わせてカスタマイズ可能なAI/HPC環境が、英語・日本語対応の使いやすさを重視したGUIや経験豊富なスタッフによるカスタマーサポートとともに提供され、日本企業のAI/HPC利用を刷新することが期待されています。
本記事では、エクストリーム-D株式会社、CDO 最高開発責任者 蔵沢 勇理氏、CEO補佐 兼 ストラテジックセールス担当 平野 美由紀氏への取材を行い、『AXXE-L Cloud』の詳細なメリットや活用法、開発のきっかけなどについて伺いました。
エクストリーム-D株式会社は、2015年、大手ベンダーでのスーパーコンピューターの設計の経験を活かして設立されたベンチャー企業です。創業以来スーパーコンピューターおよびHPC領域で、主にエンタープライズ企業の環境構築のサポートやコンサルティングに取り組んできました。
そんな同社が2017年、AI/HPC製品の開発に乗り出したきっかけは何か?
その答えは“日本のICTプロダクト利用特有の文化に由来する”と平野氏は語ります。
「海外では業務用ICTプロダクトを通常ノンカスタマイズで使うことが一般的ですが、日本では自社の使い方に合わせてカスタマイズすることが多いのが現状です」(平野氏)
IT人材白書2017(IPA)によると、「IT企業とそれ以外の企業に所属するIT人材の割合」は、日本では「IT企業:その他の企業 = 72.0%:28.0%」なのに対し、米国では「34.6%:65.4%」、ドイツでは「38.6%:61.4%」と、日本と他国との間で大きな乖離が存在します。
ITソリューションが高度化・複雑化し、IT人材の不足が叫ばれる中で海外製のプロダクトをカスタマイズするリソースが不足、あるいはベンダー任せになってしまう……。
AI/HPC利用のコンサルティングに取り組むエクストリーム-D社は、さまざまな企業の要求や困りごとに触れてきたノウハウを生かして、日本の企業文化にフィットしたAI/HPCプロダクトの開発に乗り出しました。そして、ついにリリースされたのが国産AI/HPCプラットフォームサービス『AXXE-L Cloud』なのです。
『AXXE-L Cloud』は、Webブラウザから利用可能なAI/HPC環境が、使いやすさを重視したGUIによる統合管理システムや、安全なクラウドストレージなどとともに、オールインワンで提供されるAI/HPCプラットフォームサービスです。
「ユーザー管理機能の多様さや自社管理のセキュリティ性の高さなど、特にエンタープライズ企業に適した機能を数多く搭載しています」(蔵沢氏)。
その活用事例はものづくり、建築・土木、創薬、AI開発など多岐にわたります。
製造業ではコンピューター上でシミュレーションを行うCAE(Computer Aided Engineering)により、試験回数やそれに伴うコスト・手間の削減、製造リードタイムの短縮を実現しているとのこと。試作品とはいえ形あるものを壊すことへの心理的抵抗が低減できることも、ものづくりの現場での好評につながっているといいます。
[ エクストリーム-D: AXXE-L Cloud 開いたら 1分で 出来た シリーズ #1 ] Web版 仮想デスクトップで VMD (分子構造シミュレーションの可視化ツールがなめらかに動いた
製造・建築DXにおいて欠かせないCADやBIMの活用にあたっても、オールインワンで環境が用意され、セットアップにかかる時間をまるごと短縮でき、ブラウザ経由でいつでもどこでも利用できるのも大きなメリットといえるでしょう。一般的なスペックのPCや、iPhoneやiPadからスーパーコンピューターが動かせるのは、実際目の当たりにすると大きなインパクトが得られる光景です。
建築・土木の分野では、津波や高潮や河川の水質などのシミュレーションに『AXXE-L Cloud』を利用し、膨大な条件を踏まえたハザードマップの作成や防災情報の提供を実現した事例もあります。
[ エクストリーム-D株式会社 導入事例 #1 ] 応用技術株式会社 様
また、新型コロナウイルスの世界的流行に対し、感染シミュレーションやワクチン開発でAI/HPCが大きな役割を果たしたことは広く知られています。蔵沢氏曰く、「1分1秒を争う医療の世界。高速なAI/HPCの活用は研究開発のみならず企業の現場でのAI利用などに広がっていく」とのこと。
DXや生成AIの進展を背景に、AI/HPCはものづくりや研究開発以外の幅広い業界に広がりつつあります。そんな中で、日本語の開発環境がプロフェッショナルのサポートとともにまるごと提供されるのは『AXXE-L Cloud』のほかにない特性です。
クラウドAI/HPC市場が注目を集める中で、『AXXE-L Cloud』を特徴づけるアドバンテージはどこにあるのか?
その質問の答えとして、HPCコンサルティングのプロフェッショナルかつ、完全ベンダーフリーであるというエクストリーム-D社の特徴を平野氏は掲げます。
コンサルティングでは、IT管理者、ユーザー、それぞれにヒアリングを実施し課題を整理した上で、お客様にとって最適なIT基盤構築・導入のサポートを行い、AXXE-L CloudをベースにしたAI環境の早期導入を支援します。また、サポートするIT基盤は著名なパブリッククラウドから企業内やデータセンターに設置するサーバー(オンプレミス)などマルチ環境をまとめてAXXE-L Cloud で管理・利用出来ることがお客様に評価されています。さらに AI/HPC構築・運用経験の豊富なスタッフによるカスタマーサポートが受けられることは大きなアドバンテージとなります。オプションの「プラチナサポートサービス」では、専任SEがホットラインサポートでAIシステム基盤やソフトウエアの利活用まで幅広くサポートを提供します。
「我々のサービスを通じて動かすインフラについては特に限定をしていません」(平野氏)。
ベンチャーの立場を生かし完全ベンダーフリーを実現されていることで、その企業にとって最も適した製品が選定される安心感もエクストリーム-D社の強みです。
製品内容が申し分ないと分かった場合、気になるのがセキュリティとコストです。
セキュリティについては、ほぼ全てのオペレーションがWebブラウザ経由のセキュアな接続を実現しています。またコストについては、クラウド利用で懸念されるコスト変動の心配がないサブスクリプション型価格設定を採用しています。
その背景には、「日本のクラウド利用の特性がある」と平野氏。研究や技術開発など多くの計算リソースが求められるAI/HPC用途の場合、従量課金では割高になってしまうケースが多く「定額に近いサブスクリプション型価格設定」がフィットしていると言います。
新型コロナウイルスの流行初期にリリースされた『AXXE-L Cloud』。その影響について伺ったところ返ってきたのが「リモートワークが普及したことで企業のクラウド利用が日常化し需要が高まった」というものです。
自社保有のコンピューターリソースに安全にアクセスするにあたって新たなソフトウエアの導入が必要になったり、VPNを導入したものの同時接続数が限られていたり……といったリモートワークの困りごとは少なくありません。そこで、Webブラウザとネットワーク接続環境さえあればすぐに使える『AXXE-L Cloud』へのニーズは高まった実感があると平野氏は語ります。
また、昨今のDXブーム、生成AI活用の本格化もAI/HPC市場拡大を後押ししています。データセンター事業者およびSI会社などのサービスプロバイダーから『AXXE-L Cloud』を用いて自社サービスを提供したいという声が上がり、サービスプロバイダー向けに『AXXE-L for Professional』も提供しています。
今後さらに活用の拡大が予想されるAI/HPCの未来はどうなるのでしょうか?
蔵沢氏は今後、サーバー、ハードウエアの小型化が進み、自動車などに搭載されプライベートな空間での活用が当たり前になるとともに、データのセキュリティ&ガバナンスや、その実現のためのフォグコンピューティングが重要になってくるといいます。
その要素として挙げられたのが「Webサービスとしての活用」「運用管理」「リソース管理」「データ管理」の4つ。
「これは、まさに我々がAI/HPC事業で培ってきたノウハウなのです」(蔵沢氏)。
エクストリーム-D株式会社の今後の目標は何なのか。
その問いに対し、平野氏は「どんな方でも気軽にAI/HPCが利用できる環境をつくっていきたい」と話します。日進月歩で技術が刷新されるITテクノロジーの世界に対応し、自社のDXや事業開発を加速させるにあたって、HPC環境の構築は大きな変革をもたらします。ITの活用される領域が拡大されたことで、情報システム部門が対応しなければならない問題が山積している現在。新しい業務に割けるリソースが不足している状況下において、環境構築から運用まで寄り添ってくれるコンサルティングの知見は、大きなメリットをもたらしてくれるでしょう。
「もちろんエンジニアとして、より便利な機能やUIの開発にも取り組んでまいります」(蔵沢氏)。
AIシステムの導入を検討している方でAI/HPCという高速な実行環境の利用について気になる方は、エクストリーム-D社にぜひお声がけください。