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高性能電子機器に欠かせないLSIとは何か?

レンテックインサイト編集部

IT Insight 高性能電子機器に欠かせないLSIとは何か?

LSIは従来の半導体に比べて多くの素子を一つのチップに搭載させた半導体です。近年、私たちの生活に欠かせない携帯電話やパソコン、生活家電にはLSIが搭載されており、小型化、省エネルギー、低コスト化を実現してきました。

本記事では、今後もさらに技術開発が進み、普及が進むことが予想されるLSIについて、その仕組みや種類、用途などを解説していきます。

LSIは電子機器を小型・軽量化する半導体

LSIは大規模集積回路という名の通り、電子部品を半導体基板上に何百万個以上も搭載した部品です。コンデンサ、ダイオード、トランジスタ、抵抗などの電子部品が搭載されており、電子機器の小型化・高性能化・低消費電力化・低コスト化を実現しています。LSIは精度の高い抵抗や、容量が大きいコンデンサ、コイルなどの搭載には不向きです。

LSIは多くの半導体素子がシリコンウエハー上に配線結合されていて、要求される仕様に沿って論理ゲート(ANDやORなど)が構成されています。仕様を満たすためには数十万から数百万個を超える半導体素子が必要となることもあります。LSIは四角い基板の内部にシリコンチップを装着しており、見た目は四角い基板から金属製のムカデ足が生えたように見えます。

よく似た言葉に「IC」がありますが、どちらも集積回路を指す言葉です。その違いはLSIの方がより集積度が高く密度が濃いことです。LSIの方が技術的に進んでいることは、英語名を見ると分かりやすいです。

  • IC:integrated circuit
  • LSI:Large - scale integrated circuit

LSIの種類

LSIを分類すると以下の4種類になります。

メモリ

メモリはデータやプログラムを記録するLSIです。主にパソコンなどのCPUと同時に使用されています。メモリの容量が大きいパソコンほど、CPUが同時に処理できるデータ量が大きくなります。

メモリにはパソコンの電源を切るとデータが消える揮発性メモリ(RAM)と、電源を切ってもデータが残る不揮発性メモリがあります。RAMにはパソコンのメインメモリに使用されているDRAMや、携帯電話などに使われるSRAMがあります。

一方、不揮発性メモリにはフラッシュメモリをはじめとした、デジタルカメラやポータブルオーディオのデータ保存媒体などがあります。

マイクロプロセッサ

コンピューターの高速演算処理機能をつかさどるのがマイクロプロセッサと呼ばれるLSIです。マイクロプロセッサの一種であるMPUは、パソコンの中心部品として搭載されていて、CPUとその周辺制御装置などがワンチップで構成されています。

MPU以外には、マイコンやワンチップマイコンと呼ばれるMCUがあります。MPUに比べて機能が絞り込まれていて安価なため、家電製品や産業機器に搭載されています。

ASIC

ASICは専用の電子機器・システムで使われる、特定用途に対応したLSIです。デジタル家電や携帯電話などに使われていて、電子機器メーカー独自の専用設計がされています。

オリジナルな回路設計が必要なためコストが高く、開発期間が必要となります。そのためASICに比べて機能を汎用化させて、標準製品として比較的安価な価格で発売するASSPがあります。

システムLSI

システムLSIはメモリ、CPU、ASICや周辺回路を一つのチップ上にまとめた電子部品です。LSIの製造技術や設計技術の進歩により、従来のLSIに比べて搭載可能な電子部品が増大しました。一つのLSIに多くの機能が搭載されていて、近年の電気製品で頻繁に利用されるようになり、低コスト化・消費電力化に寄与しています。

アナログLSIとデジタルLSIとは

LSIが扱う情報にはアナログ量とデジタル量の2種類があります。アナログ量は音の大きさや、光の明るさなどの自然現象のように連続した情報で、デジタル量は“0”と“1”で数値化された非連続の情報です。

アナログLSIはテレビ放送電波を増幅する目的や、オーディオ機器の映像や音声を取り込む回路などで使用されます。アナログLSIは連続する情報を、そのまま増幅して出力する必要があります。

一方、デジタルLSIは“0”と“1”のデータをコンピューターなどで演算処理するために使用されます。現在ではアナログ量であっても、デジタル化してから処理をすることが多くなっています。その理由としては、アナログ量を処理するよりも処理しやすく性能や消費電力においてメリットがあるからです。

高性能電子機器に欠かせないLSIとは何か?挿絵

電子機器の小型化に向けてLSIの開発が進む

LSIは私たちの便利で豊かな暮らしの中で欠かせない電子機器として、多くの電化製品などに搭載されてきました。今後も電化製品の高性能化、省スペース化のために、LSIの技術開発への期待が高まっています。

2022年のVLSIシンポジウムで示された半導体微細化のロードマップによれば、2035年までは半導体の微細化が続けられるとされています。特に半導体素子間の微細な配線ピッチは、現在に比べて2035年にはおよそ現在の半分に収まると示されています。

世界の半導体市況はコロナ禍後に需要が供給を大きく上回る状況が続きましたが、その後は低迷期に転換してきています。一方で半導体技術は常に進歩を続けており、今後も私たちの生活の基盤として大きな存在になることが予想されています。

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