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「パワーエレクトロニクス2.0」とは? 「次世代パワーエレクトロニクス」とともに広がる可能性

レンテックインサイト編集部

IT Insight 「パワーエレクトロニクス2.0」とは? 「次世代パワーエレクトロニクス」とともに広がる可能性

脱炭素やEVへの注目とともに、電力の変換や制御を行うパワーエレクトロニクス技術の重要性も高まっています。その中で大きな流れといえるのが、パワー半導体の進化による「次世代パワーエレクトロニクス」と、IT×パワーエレクトロニクスによる「パワーエレクトロニクス2.0」。
本記事では、中でも「パワーエレクトロニクス2.0」を中心にそのメリットや可能性についてご紹介します。

「パワーエレクトロニクス2.0」とは? 具体的にどんなメリットが得られる?

パワーエレクトロニクス2.0とは、IoTによるパワー半導体のセンシングや、取得したデータを用いたAI制御などにより、より効率的で柔軟性の高いパワーエレクトロニクスを実現するということです。また、同技術の変化を通じて、パワーエレクトロニクスのビジネス形態を買い切り型からサービス型へと変更することで、ものづくり全般で進む「コト化」への対応を進めることも意図されています。

IGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)、MOSFET(金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ )などパワートランジスタの制御を行うゲートドライバーを例に考えてみましょう。スイッチング速度とスイッチングノイズには通常トレードオフの関係があり、速度をとればノイズが大きくなり、ノイズの低減をとれば損失が増大します。そして、従来の信号が固定されたゲートドライバーでは、そのバランスに最適化の余地がありました。そこで、ゲートドライバーをデジタル化しソフトウエアにて制御することで、より微細なゲート駆動能力を獲得し、損失の抑制やノイズの低減、スイッチングの立ち上がり/立ち下がりの高速化を実現しようというのが「パワーエレクトロニクス2.0」の一例です。

スマートグリッド時代、各家庭や工場で配備される電力網は再生可能エネルギーや車載バッテリー、家電など多様化、複雑化しており、その中で電力の変換・制御を行うパワーエレクトロニクスの重要性も増しています。

そんな中で、ソフトウエア制御により汎用性の高い運用が可能かつ、先に述べた通りデジタル回路によるアダプティブな運用で省エネメリットが得られる「パワーエレクトロニクス2.0」の重要性が高まっています。

単なるデジタル化ではない、パワーエレクトロニクス2.0がもたらす価値

パワーエレクトロニクスのデジタル化自体は10年以上前から提案されていました。よって、「パワーエレクトロニクス2.0」と表現する場合には、単なる制御のデジタル化や効率化だけでなく、その先に新たなパワーエレクトロニクスの価値提供を見据えることが必要条件となるはずです。

例えば、超音波探傷や温度分布といったIoTセンシングによるモニタリングで可能になるのが、高い信頼性の求められるパワー半導体の故障予知と速やかな原因の理解です。機械学習によりパワーデバイスの状態を解析することで、サービス提供後の性能向上や製品開発につながるデータの取得なども可能になるかもしれません。

パワーエレクトロニクスの市場規模は、電動化や再生可能エネルギーの導入促進といった事情を背景に拡大することが見込まれています。今は、これまで欧州と並んで国際競争力を発揮してきた日本が優位性を維持したまま次世代パワーエレクトロニクスの環境に適応できるかが問われる局面といえるでしょう

そこで、パワーデバイスの性能を最大限に生かせる回路を設計すること、ビジネスモデルを構築することは重要な競争領域として押さえておくべきです。

「次世代パワーエレクトロニクス」とは?

「パワーエレクトロニクス2.0」に対し、「次世代パワーエレクトロニクス」という言葉が用いられる場合は、SiC(炭化ケイ素・シリコンカーバイド)やGaN(窒化ガリウム)といった新半導体材料の活用のことを指す場合が多いです。

半導体材料として従来メインで用いられていたSi(ケイ素・シリコン)に対し、化合物であるSiC、GaNは希少性が高く高価である代わりに、耐熱・耐圧性や高い性能指数を持つため、次世代パワーエレクトロニクスを担う素材として大きな注目を集めています。

SiCの高品質結晶を得る手法を開発するにあたって、機械学習を用いたシミュレーションや製造過程のデータ取得を用いる例もあり、次世代パワーエレクトロニクスの推進にあたってもデジタル技術が貢献することは押さえておきたいところです。

SiCはEVを中心にHEMS(Home Energy Management System:ホーム エネルギー マネジメント システム)、風力/太陽光発電などの分野で市場を広げており、GaNはスマートフォンや家電などのパワー半導体として製品化される傾向にあります。

自動車、家電、産業オートメーション……パワーエレクトロニクスの刷新は多くの業界に影響

「パワーエレクトロニクス2.0」と「次世代パワーエレクトロニクス」の二つのパワーエレクトロニクスの刷新を示唆する用語について解説してまいりました。自動車、家電、データセンター、通信事業者、産業オートメーションなどパワーエレクトロニクスは幅広い業界で避けては通れないテーマとなっています。

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