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AI・IoTコンサルタント 伊本貴士の経営に役立つ最新技術解体新書 正しいリモートワーク化と人事評価

レンテックインサイト編集部

 新型コロナウイルスの患者数が増加傾向にあり第二波が懸念される中、企業においても長期的な影響は避けられない状況となりつつあります。
日本においても政府が経団連などの経済団体にリモートワークの推進を依頼しており、企業としてもリスク回避という観点から積極的に導入をしています。

また、オフィスを郊外へと分散させる企業も出てきており、今後はリモートで結ばれたプロジェクトメンバーが同じ目標に向かって業務を行う機会も増えます。

ただし、リモートワーク化は企業にとって新たなリスクを生み出します。

どのように管理し評価するのか

 日本においては、古くから年功序列や時間労働制といったものをベースとして人事評価を行ってきました。
しかしながら、リモートワークになると、どれくらい業務に従事したのかを管理する事は難しいでしょう。

中には、パソコンに接続したカメラで常時従業員を監視しようとする企業も出てきているようですが、監視される側にとってはプレッシャーに感じる場合もあり、それによる効率低下の可能性と、動画として従業員の姿を動画データとして残すことによるプライバシー侵害への懸念もあり、あまりお勧めはできません。

そこで、組織として成果主義へと大きく転換する必要があります。

ただし、成果主義への転換は簡単ではありません。

何をもって成果とするのかという根本となる軸の決め方が難しいからです。

例えば、ソフトウエア開発の世界では古くから成果=開発したコード量とされてきました。
これは、一見して成果を公平に評価しているように見えますが、コード量が多いからといって優秀なソフトウエアのプログラムを開発したとは言えません。
なぜなら、コード量が多いのプログラムを開発したといっても、品質が悪くバグが多い場合は結果的に価値の高い業務を遂行したとは言えません。

そこで、最近ではGoogleやFacebookといった企業において、DevOpsと呼ばれるシステム開発のベストプラクティスに基づいた考え方に沿って成果を行うプロジェクトが増えつつあります。

DevOpsにおける成果主義では、結果として顧客に対してどれだけの価値を提供したのかという視点で成果を考えます。

つまり、どれだけ長時間をかけて凄い事を成し遂げても、それが顧客の価値に結びついていない場合は評価としては低くなります。
逆に短期でのちょっとした工夫であっても、結果として顧客に高い価値を提供したのであれば評価は高くなります。

DevOpsにおける成果定義

 DevOpsに基づいたシステム開発では、成果評価の指標として、例えば「顧客の要望に基づき実現した機能の数」「問題点を修正した回数」「障害発生時における復帰までの時間」といったものを定義します。

DevOpsも最終目標は「短期で継続的に価値の高いものを提供する」事にあります。

まず、開発時においては、システム全体の開発を評価するのではなく、要望毎に細かい機能開発に項目を分割し、段階的に開発しそれを顧客に使ってもらう事で新たな要望を獲得します。結果として、継続的に新たな要望を獲得し開発し続けます。
これは、開発側にとっても、顧客側にとってもリスクを減らすという点で大きなメリットがあります。

次に、運用時においては、問題に対して迅速に対応できるのかを重視します。
もちろん、品質管理は行いますが、それでも問題は発生するという前提で、確実・迅速に対応できる体制を作ることで顧客への提供価値の毀損を防ぎます。

システム開発以外でも同じような指標を設けると良いでしょう。
まず、どれだけの顧客要望を実現したのか、クレームなどの問題にどれくらい対応したのか、また付け加えるとすれば、どれだけ仕組みを変えて効率化に貢献したのか。
このような観点で成果主義を構築すれば、リモートワークでも正当に貢献度を評価する事ができると思います。

成果主義の注意点

 ただし、成果主義には注意点もあります。

まず、短期的な成果が全てではないという事です。
中には中長期的に見ないと成果が見えない価値もあります。
それをどう評価するのかは、組織で検討する必要があります。

また、全ての成果は数値化できるわけではないという事です。

例えばDevOpsでは実現した機能の個数を評価しますが、全ての機能において難易度や価値は一定ではありません。
機能毎の実現難易度や、価値の高さは一定のルールで数値化する事は困難なので、組織内で評価する基準は設けつつも最終的には人間がチームの同意をもって決める必要があります。

このような点に注意すれば、リモートワークにおいても業務遂行の効率や成果を落とさずに正しい人事評価ができるのではと思います。

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