スマートシティ実現に向けたデータ利活用プラットフォームとして、FIWAREが注目されています。本記事では、FIWAREの概要や技術要素について解説し、さらに実際に都市でどのように活用されているかについてもご紹介します。
FIWARE(Future Internet Software)は自治体や企業などにおける分野横断的なデータ利活用を目的として開発されたプラットフォームで、一般的に都市OSとも呼ばれるものの一つです。
このプラットフォームは、データ収集や分析などに活用できるオープンソースのソフトウエアモジュールを組み合わせて利用できます。FIWAREは、EU(欧州連合)にて官民連携のプロジェクトとして発足し、次世代インターネットをさまざまな分野で活用するための基盤開発として取り組まれました。
EUでは、物流、スマートシティ、交通輸送、街の安全、環境、メディアコンテンツ、エネルギーの8つのカテゴリで実証実験を進め、特に近年ではスマートシティの実現に向けたFIWAREの活用が進んでいます。将来的には街中の交通量データや決済データなどを収集して有効活用するようなサービスの普及が期待されています。日本企業のNECは、2011年からFIWAREの開発に参画し、さまざまな自治体と連携してスマートシティづくりに取り組んでいます。
FIWAREの技術要素として、ソフトウエアコンポーネントのGE、オープンAPIの国際標準規格であるNGSI、オープンソースソフトウエア(OSS)の三つがあります。以下、それぞれについて解説します。
GEとは、データ管理、デバイス管理、ビッグデータ解析、認証、IoT、可視化など、目的別の製品群を構成するソフトウエアコンポーネントです。機能ごとに分割されているため、自由に組み合わせて利用できます。また、独立性が高く、システムの修正時にほかのコンポーネントへの影響が少ないのも特長です。
NGSIは、API(Application Programming Interface)の国際標準規格であり、GE同士でデータの受け渡しが可能となる共通インターフェースです。オープンAPIであるため、接続の仕様が公開されており、自治体や企業を横断したデータの利活用が可能となっています。FIWAREでは標準のデータモデルを推奨していることもあり、データの汎用性や連携性を高めています。また、データの表現形式を変換するGEも提供されています。
GEはOSSで開発されており、ソースコードが公開され誰でも拡張や再配布が可能です。すべてのソースコードはFIWARE Catalogueとして公開され、システム構築に利用できます。
FIWAREは、都市データを収集・活用することで、住みやすい街づくりを目指すスマートシティの実現に貢献しています。スペインのサンタンデール市と日本の香川県高松市でのFIWAREの活用例をご紹介します。
スペインのサンタンデール市では、交通渋滞や公共サービスのコスト増、大気汚染などが課題となっていました。そこで2万個のセンサーを街中に配置して、ゴミ箱の中のゴミの量の計測や、ゴミ収集の最短ルートの算出に取り組んだ結果、人件費などのコストが15%削減できました。さらに都市データをオープンデータとして公開したり、市民が意見を投稿できるようにしたりと、民間業者や市民が参画できるエコシステムを構築しています。
日本の香川県高松市では、国内初のFIWAREによるIoT共通プラットフォームを活用した「スマートシティたかまつ」を構築して、市民全員がデジタル技術を活用できる街づくりを目指しています。観光分野、防災分野、福祉分野、交通安全分野など、幅広い分野でFIWAREを活用してきました。一例として防災分野では、河川や水路にセンサーを設置してデータを監視しています。避難所施設の情報と合わせてリアルタイムのデータを可視化し、早期の災害対策につなげています。
FIWAREは、企業や自治体を含めたさまざまな分野で、データを効果的に利活用することを目的としたプラットフォームです。特にスマートシティの実現に向けた都市OSとして活用されるようになりました。データの収集や活用に関するソフトウエアコンポーネントを組み合わせ、オープンAPIで連携することでFIWAREを構築しています。
このプラットフォームを活用すると、データを活用して適切な都市運営や市民への情報提供が可能です。国内外の広い地域でFIWAREが活用されているため、興味のある方は活用例を調べてみると良いでしょう。