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ヒト・モノの位置情報可視化が工場にもたらすもの

レンテックインサイト編集部

 みなさんは、IoT化でどのような情報を得たいと考えていますか。
温度、湿度、耐久性など、IoTによって得られるようになる情報はさまざまです。ここではそんな中でも位置情報に注目して、その活用パターンや製造業にもたらすメリットについてご紹介します。

位置情報をいかにして取得するか

工場の中のヒトやモノの位置情報はGPSやビーコン、Wi-Fi、PDR(歩行者自律航法)、IMES、超音波などを用いて取得することができます。

GPSはご存知の通り人工衛星から電波を受信して現在位置を特定してくれるシステムです。ビーコンはBluetoothの無線通信技術を利用して位置情報を通信します。
両者の最大の違いは情報通信を行える範囲で、GPSは地球全土に及びますが、ビーコンは数メートルから数百メートルに限定されます。
その代わり、ビーコンは省電力・安価に使えると言われています。また、端末同士が通信できる範囲であれば地下や屋内でも通信が途切れることなく、GPS以上に正確に位置を特定してくれるのが魅力です。

Wi-Fi、PDR、IMES、超音波はいずれもビーコンと同じく範囲が限定される測位技術です。それぞれに精度や利用する機器が異なるため、目的や予算に合致した技術を選びましょう。

取得した位置情報は主に以下の三つの目的で利用されます。

  1. 作業を効率化させ危険を回避する
  2. モノを正確に管理する
  3. カイゼンに役立て生産性を向上させる

それぞれについて詳しく見ていきましょう。

位置情報を把握して適切な指示、自動アラート

直接に工場内の作業を助け、また安全性を確保するのが位置情報の第一の活用法です。
例えば現場社員の持つスマートフォンやタブレットから位置情報を収集し、常にどこにいるか把握することで管理者は適切な指示を適切なタイミングで行えるようになります。また、工場内の危険エリアへの立ち入りが感知された際、自動でアラートを送るといったソリューションも存在します。位置を把握できていれば、万が一の災害時における避難誘導も迅速かつ的確に進められるでしょう。

またヒトではなくモノの位置情報を取得することも効果的です。発信機を取り付けることで、人がわざわざ目視確認することなく効率的に荷物を搬入・搬出することが可能になります。

モノの管理しやすさが飛躍的にアップ、工程管理への応用も

モノの位置を特定する効果としてもう一つあげられるのが、管理のしやすさが飛躍的に高まるということです。現場で台車や物品が見当たらず、探すために余計な工数・労力がかかってしまったという経験はありませんか。 事前に発信機を取り付けておけば、そのようなムダが生じる心配はありません。

さらに、製造現場において仕掛品の位置を把握することができれば、今どの工程にあるのかを一目で確認できるようになります。
ある工場では、仕掛品の形状がそれぞれ異なるため、作業指示書にビーコンを取り付けて現在位置や加工状況を取得しているそうです。このように、工夫次第で位置情報を得ることで派生的にさまざまな情報を得られます。

ヒト・モノの動線を把握して生産性向上に

位置情報を取得するメリットとして最後に挙げられるのは、得た情報をもとに作業効率を見直すことで、結果として生産性向上につなげられるということです。例えば作業員の位置情報を取得することで“誰がどのエリアでどのような動線を通って作業しているのか”が一目瞭然となります。設備や生産管理システムのログと組み合わせれば、どのエリアで非効率な作業が行われているのかが突き止められるでしょう。
見える化された“事実”をもとに部品の置き場や工場全体のレイアウトを見直すことで、大きな生産性向上につなげることができた事例も報告されています。

さらにAGV(無人配送車)やフォークリフトなどのモノに設置して、工場内物流のカイゼンや最適台数の把握に位置情報を活用する例もみられます。

位置情報取得開始前の注意点

よし、自社でも位置情報を取得してみよう。そう思ったときに忘れてはならないのは“しっかりとPoC(概念実証)を実地する”ということです。

冒頭で触れた通り、位置情報を取得するための技術にはさまざまな種類が存在します。さらに、ビーコン一つとってもメーカーによって種類やスペックが異なり、種類によっては「位置が実際とズレているため使い物にならない」「電池容量がすぐに切れてしまうため充電の手間がかかる」といった困難に見舞われる可能性もあります。

いきなりコストをかけず、まずは試作と検証を通してベストな形を探るのがIoT導入の基本です。
具体的には、以下のようなポイントに注目してください。

  • 測位の精度
  • 測位を行う範囲の広さ
  • モジュールのサイズ、設置しやすさ
  • 保守運用のしやすさ
  • 導入・運用コスト

検証の際はなるべく実際の現場と同じ条件を用意しましょう。ただし、PoCが目的となっては本末転倒です。“実際に導入するとすればどうか”を常に念頭に置いておいてください。

位置情報は宝の山

IoTで得られるデータの中でも活用の幅が広い位置情報取得の基本についてご紹介しました。ヒトやモノの場所を把握することでどこにいる(ある)かだけでなく、どうすればよいのか、どこにいる(ある)べきなのかまで見えてきます。位置情報は効率化・改善における宝の山といえるでしょう。

ぜひ自社の環境に合わせて、導入できないか検討してみることをおすすめいたします。

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