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ディスクリート半導体って何?

レンテックインサイト編集部

本記事では、近年コロナ禍の影響によって市場が低迷する中でも成長を続けているディスクリート半導体について解説していきます。

半導体の歴史は約70年前まで遡り、トランジスタラジオが製品化されて以降、テレビや電話、パソコンをはじめとした電化製品に搭載されてきました。近年ではコロナ禍の影響により、製造業の生産数が伸び悩み続けており市場全体の成長に陰りが見えています。そんな中でもディスクリート半導体の市場は2022年から2027年の間に4.5%の成長が予想されています。

その理由として、ディスクリート半導体の汎用性の高さが挙げられます。ディスクリート半導体はトランジスタ、ダイオード、パワーモジュールなど多くの電子部品に組み込まれ、幅広い産業で利用されています。さらに今後は電気自動車の普及拡大により、ますます需要の拡大が見込まれています。

ディスクリート半導体とは

ディスクリート半導体とは一つの素子で一つの機能を持つ半導体です。近年ではスマートフォンなどのモバイル、自動車産業、IT技術、エネルギー関連の分野など幅広い産業で用いられています。英語で「discrete」とは「分離した」「個別的な」という意味があります。

ディスクリート半導体は一つだけでは製品としての機能は発揮できません。複数のディスクリート半導体を組み合わせて集積回路のようにモジュール化することで、さまざまな機能を持たせて製品に必要な機能を発揮することが可能になります。

ディスクリート半導体には自動生産がしやすく低コストで作れるというメリットがあります。低コストで作れる理由は、単一機能しか持たない半導体なのでスペックが標準化されていることにあります。製造するメーカーが異なっていても、ほとんど同じ仕様のためオートメーション化が容易で大量生産に向いているという特長があります。

ディスクリート半導体が使われている電子部品

ディスクリート半導体は組み合わせてモジュール化することで使用されます。中でも一般的に多くディスクリート半導体が用いられている電子部品には以下のものがあります。

電子部品名機能
抵抗ディスクリート半導体を用いた最も基本的な電子部品。電子回路の電流抑制や電源の分圧などの用途で使用される。
トランジスタ電気の流れをコントロールして、電気回路の信号を増幅することや、回路をオンオフ制御するために使用される。
サイリスタ電流を制御する半導体素子。インバータやコンバータの整流回路に使用される。
ダイオード電気の流れを一方向に制御する部品。電圧を一定にする機能もあり、身近な部品ではLEDがある。
MOSFET動作速度が速く、リーク電流の少ないスイッチ素子。同じスイッチ素子であるバイポーラトランジスタより消費電流が少なく、動作速度が速いメリットがある。
コイル何重にも重ねて巻いた金属線からなるディスクリート半導体。電流を流して磁界を発生させる機能があり、電流の安定や電圧の返還に使われる。
コンデンサ電荷を蓄える機能があり、蓄電や電圧変動の抑制機能がある。電流を流さないため、絶縁させる機能も持っている。
イメージセンサ光を受光して電気信号に変換する半導体素子。デジタルカメラにはCCDやCMOSといったイメージセンサがよく使用されている。

ディスクリート半導体市場の動向

ディスクリート半導体の使用用途は広く、多くの産業向けでニーズがあることを解説してきました。そのためディスクリート半導体の市場は、近年半導体市場全体の成長が鈍化している中でも成長を続けています。

ディスクリート半導体の主要な市場は北米で、世界全体の10%程度のシェアを占めています。半導体の研究開発、知的財産の作成、輸出・販売が盛んであり、ディスクリート半導体を含む世界全体の約8割の半導体は米国が関係しているとされています。

また最近では、中国が半導体生産量の約半分を消費する大きな半導体市場に成長しています。中国で生産されるスマートフォンやタブレットなどのモバイル製品の市場が、世界的に拡大を続けてきたことが要因です。一方で新型コロナウイルスによりスマートフォン販売が減少に転じたことや、中国国内の工場が閉鎖されるなど短期的には市場成長に影響をおよぼしています。

今後は世界的にEV販売の拡大が予想されており、それに伴ってディスクリート半導体の需要拡大が期待されています。EVの普及により自動運転システム、センサーの搭載、安全制御システムの導入などで新たな需要が生み出されるからです。

ディスクリート半導体のこれから

ディスクリート半導体とは何か、利用例と市況の動向などについて解説してきました。

ディスクリート半導体自体は先進的な機能を持つ半導体ではありませんが、幅広い業種や産業で使われる汎用性の高い半導体です。そのため半導体市場の低迷による影響を受けにくく、今後も需要の拡大が期待できる製品です。電気自動車の普及拡大が進めば、ますます注目される可能性があります。

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