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今サーバでAMD EPYCが「バズっている」理由

レンテックインサイト編集部

IT Insight 今サーバでAMD EPYCが「バズっている」理由

画像素材:日本AMD

今サーバでAMD EPYCが「バズっている」理由

  AMDが2019年8月に正式発表したサーバ向けプロセッサー「第2世代AMD EPYC」が、リリースから1年を経てますます市場での存在感を増しています。発表当初より米国メガクラウド各社での相次ぐ採用や、研究機関の大型スーパーコンピュータでの採用が報道されたほか、日本でも、まず大手サービスプロバイダーとHPCで採用が相次ぎました。その後、企業ITでの導入も、本来の得意分野である仮想化を中心に、右肩上がりで増えていると言われています。

コストと消費電力を抑えつつ処理性能は2倍に

 第2世代AMD EPYCは、x86サーバ初の64コアプロセッサーや大容量L3キャッシュといったソケット単位の機能強化に加え、3,200MT/sの最大メモリ転送速度や、PCIe Gen3の2倍のI/O帯域幅を持つPCIe Gen4の採用(それも合計128レーン)など、最新のテクノロジーでシステム全体の性能を大きく向上する設計になっています。AMDはまず第1世代AMD EPYCで、CPU、I/O、メモリコントローラを一つのLSI上に載せる従来のプロセッサーアーキテクチャを、4つの小さいLSIに分割しました。それにより、AMDの試算で製造コストを約6割削減できるからです。この方向性をさらに進めた第2世代AMD EPYCでは、x86サーバ初の7nm CPUを最大8個と、どのCPUコアからも1ホップでアクセスできる共有型のメモリコントローラ兼I/Oチップ一つを、一つのパッケージにする形へ進化を遂げました。製造コストと消費電力を抑えつつパフォーマンスを向上できるポイントが、ここにあると言えます。AMDによれば、第1世代の設計に4年、第2世代にも2年以上の期間を要したということですが、第2世代AMD EPYCは2020年7月時点で140超のベンチマークで世界記録を更新しており、その革新的なアーキテクチャと数値的な成果が、今日「バズっている」理由だと考えらます。

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米国メガクラウドが採用したセキュリティと、長期ロードマップ

 AMD EPYCを安心して検討すべき二つのポイントが、セキュリティとロードマップです。
 サイバーセキュリティはどの企業にとっても重要です。冒頭で触れた米国メガクラウド各社にとっても勿論、最優先事項であることは容易に想像できます。実はEPYCプロセッサーには、セキュリティ処理を行う専用のARMの32bitマイコンが入っており、メモリを暗号化する機能や、仮想マシン(VM)関連の暗号化機能がハードウエアレベルで実装されています。既にメガクラウドの1社は、この機能を活用した高セキュリティ特化型の新サービスを発表しています。
 もう一つの安心ポイントは、EPYCの長期ロードマップです。本日ご紹介している”ROME”こと第2世代AMD EPYCに続いて、AMDは2世代先の2022年の”GENOVA”まで開発ロードマップを公開しています。第3世代の”MILAN”に至っては、Dell TechnologiesとAMDによる米国Purdue大学のスーパーコンピュータ”Anvil”を始め、今後構築が始まる複数のスーパーコンピュータ案件で、既に採用が決まっています。

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AMD EPYCとソフトウエアライセンス

 コア数を特長に持つAMD EPYCは、特に仮想化で優位性を持ちます。Dell Technologiesのお客さまには実際に、コア数によるパフォーマンス面の利点を理由に、2,400ユーザー規模のVDI(仮想デスクトップ)基盤にAMDサーバを採用された事例もあります。ソフトウエアライセンスの観点では、VMwareのライセンス課金がプロセッサーソケット単位である点はよく知られています。同社が2020年2月に、1ライセンスあたりのコア数上限を32コアに設定して以降は、例えば64コアプロセッサーには2ライセンスが必要になりました。しかしそれでも、CPUコア数の観点でVMware製品のライセンスあたりの費用を最も有効活用できるハードウエアは、32コアまたは64コアプロセッサー搭載のAMD EPYCサーバということになります。仮想化サーバの機器選定時に、ぜひ覚えておきたいポイントです。
 一方、従来からコア単位のライセンス課金であるMicrosoft Windows Serverでは、単純にコアが多いほどライセンス費用が上がります。最新のWindows Server 2019ではこれを少しでも緩和するため、コア課金を1ソケットあたり32コアでキャッピングする所謂「コア・キャップ」ライセンスが、48コアおよび64コアプロセッサー搭載サーバを対象に提供されています。例えば64コアをフルに使うWindows Server 2019稼働サーバなら、33コア目から最大64コア目までのライセンス費用が無償化されることを意味します。Windows Server向けにAMD EPYC採用を検討する場合、ぜひ覚えておきたいポイントです。(このライセンスは現在、2021年6月までのプロモーショナルSKUとしてDell EMC PowerEdgeサーバ用OEMライセンスで提供中です。)

ITトランスフォーメーションは最新のイノベーションで

 デジタルトランスフォーメーション(DX)や働き方改革など、多くの企業がもともと考えていた、ITを中心とする変革のニーズが、新型コロナウイルスの影響で大きく加速しています。
1台のサーバにおいても、そのコストあたり処理性能、消費電力あたり処理性能がこれまで以上に重要視される時代になっています。最新の技術イノベーションで画期的な成長を遂げた第2世代AMD EPYC搭載サーバが、今こそ検討されるべき時といえるのではないでしょうか。

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