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GX(Green Transformation)の概要と、GX実現に向けた基本方針について解説

レンテックインサイト編集部

本記事ではGXの概要およびGX実現に向けたロードマップの中身について解説します。

2022年12月22日に首相官邸にて第5回GX実行会議が開催され、「GX 実現に向けた基本方針 ~今後 10 年を見据えたロードマップ~」が決定しました。基本方針では、今後10年間で150兆円超の投資が必要と考えられており、国としては20兆円規模の先行投資支援が実行される予定です。

GXとは

GX(Green Transformation)とは、温室効果ガスの原因となる化石エネルギーからクリーンエネルギーを中心とした産業/社会構造へ転換を図る取り組みのことをいいます。世界規模で発生する地球温暖化や自然災害の問題は人類共通の課題となっており、脱炭素を目的としたカーボンニュートラル目標を表明する国が増加しています。

日本においても、2020年10月に当時の菅総理大臣が、2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにするという、カーボンニュートラルの実現を宣言しました。また、2021年4月に開催した米国主催の気候サミットにおいて、日本は2030年度の温室効果ガスを2013年度比で46%削減するという目標を掲げています。

エネルギー資源の乏しい日本において、GX実現に向けた取り組みはエネルギーの安定供給だけでなく、経済を成長軌道へ戻す起爆剤としても期待されています。日本政府は2022年よりGX実行会議を官邸に設置し、GXの実行に向けた施策検討を進めています。

GX実現に向けた基本方針

第5回GX実行会議において、GX実現に向けた今後10年を見据えたロードマップが取りまとめられました。代表的な4つの基本方針について解説します。

GXに向けた脱炭素の取組

安定・安価なエネルギー供給は国民生活や経済活動の根幹であるため、GXを推進していく上でもエネルギー安定供給の確保は大前提となります。しかし国内では電力自由化での事業環境整備や再生可能エネルギー導入、原子力発電所の再稼働などが進んでおらず、電力需給のひっ迫やエネルギー価格の上昇などの問題が生じています。

電力の需要サイドにおいては、省エネルギー化や燃料転換により化石エネルギーへの依存からの脱却を目指す必要があります。一方で、供給サイドはエネルギーの安全保障に寄与し、脱炭素技術の強みを活かしながら経済成長につなげていくことが求められます。

成長志向型カーボンプライシング構想

国際公約の達成と経済成長の実現に向けてさまざまな分野で投資が必要となるため、官民協調によるGX投資の実現を目指す、成長志向型カーボンプライシング構想が考案されました。

本構想では、「GX 経済移行債」を活用した先行投資支援、炭素排出に値付けをしてGX関連製品や事業に取り組むインセンティブを付与するカーボンプライシング、そして公的資金と民間資金を組み合わせた金融手法の確立、という三つの措置が検討されています。

国際展開戦略

世界規模でのGXの実現に貢献するため、日本としてはクリーン市場の形成やイノベーション協力を主導していくことが掲げられています。また、アジア地域の脱炭素化を目指す「アジア・ゼロエミッション共同体」(AZEC)構想を実現していき、アジア各国と共に現実的な形での脱炭素に向けた取り組みを進めます。

具体的には、環境負荷の少ないグリーン製品が適切に評価される市場形成の進展、アジア各国の実情を踏まえた上でのカーボンニュートラルに向けたロードマップの策定支援などが掲げられています。またエネルギー投資を賄うファイナンスの支援や、脱炭素技術の発展のための人材育成支援を進めるとしています。

社会全体のGXの推進

2009年のCOP15において、国際労働組合総連合によって「公正な移行」(Just Transition)という概念が提唱されました。公正な移行とは気候変動対策の実施に伴い、負担の大きい産業分野や、これに従事する労働者、産業が立地する地域を支援する必要性を示した用語です。

GX推進のため化石燃料関連産業から低炭素産業へ労働移動を進める上でも、公正な移行の観点を踏まえながら支援する必要があります。政府としては、投資額の拡充や労働者の転職支援を通じて公正な移行を後押しするとしています。

今後10年を見据えた4つの取り組みが提示される

GXとは、クリーンエネルギーを中心とした産業/社会構造へ転換を図る取り組みのことです。第5回GX実行会議にて、GX実現に向けた今後10年を見据えたロードマップとして4つの基本方針の考え方と今後の対応が提示されました。

今後は、基本方針の具体化に向けて幅広く意見を聞くプロセスを進めるとのことです。政府が掲げる基本方針の考え方を理解した上で、私たちも企業もしくは個人でのGX実現の方針を検討するとよいでしょう。

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