ビジネスの海外進出を検討している場合、日本国の法令を遵守することはもちろん、進出先の国の法令にも対処しなければなりません。特に中国は日本企業の参入も盛んで、海外進出先として人気の国となっているものの、「データ3法」のような海外企業も対象となる法律の整備も進んでいます。
中国のデータ3法は、進出前にあらかじめ確認し、注意しておかなければ、思わぬ落とし穴にはまってしまうかもしれません。この記事では、中国のデータ3法の内容や、日本企業が検討すべき対応策について解説します。
中国のデータ3法とは、同国が施行した「個人情報保護法」「サイバーセキュリティ法」「データセキュリティ法」の総称です。
これらの法律は、いずれも個人情報の保護やデータセキュリティの強化を促すものですが、それぞれカバーしている領域が異なります。名前からも分かる通り「個人情報保護法」は個人情報のセキュリティ強化を、「サイバーセキュリティ法」はサイバー攻撃対策を、「データセキュリティ法」はデータの保全を目的とした法律です。
これらの法律は別々の時期に施行されましたが、3法を同時運用することで、中国におけるデータセキュリティ管理の規範化やデジタル産業の発展を促します。
中国は日本以上にデジタル化が進んでいる国ですが、同時に運用ルールも正しく設定することで、健全なデータ社会の構築を進めているといえるでしょう。
一見すると、データ3法は中国国内のセキュリティ強化や国民の安全を守るための法律であり、日本企業にはあまり関係のないルールのようにも思えます。
しかし、実際には中国に進出している日本企業にとっては極めて重要な法律であり、対策を怠ることで、新たなコンプライアンスリスクに直面する可能性があるのです。
データ3法のそれぞれのポイントとリスクについて、順に解説します。
日本企業が中国の「個人情報保護法」に対して注意する必要があるのは、中国国内における個人情報の収集や保管、移転の業務が発生する時です。個人情報を安全に管理できる仕組みづくりを行っていない場合や、個人情報を許可なく外国へ移転するなどした場合、罰則が加えられる可能性があります。
ビッグデータ活用の時代においては、データの収集や移転は当たり前です。日本国内と同じような感覚で運用してしまうと、中国の個人情報保護法に抵触するかもしれません。
「サイバーセキュリティ法」において注意したいのは、企業が中国国内においてネットワークの安全を侵害する行動に至った場合、問答無用で中国当局による取り締まりの対象となる可能性がある事です。
中国ではすでにサイバーセキュリティ法に違反しているケースが複数取り締まられており、日本企業も例外ではありません。当局のさじ加減で違反とされてしまうこともあるため、法律違反になる・ならないの線引きを明確にしておくことが必要です。
「データセキュリティ法」の施行に伴い、日本企業はデータを保全するための取り組みについて、再度確認が必要です。データの安全で自由な活用は中国も認めるところではあるものの、同国の基準に則った運用でない場合、その行動を制限される可能性もあります。
このように、データ3法への抵触機会は非常に多く、ちょっとしたルール違反が取り締まりの対象となると考えておかなければなりません。データ3法への違反には罰則が設けられており、日本企業も例外なく罰則を受けることとなります。
データ3法の違反は、最大で5000元(約10億円)、もしくは前年度売り上げ5%以下の過料が科される場合があります。違反したら確実にこれらの刑が課されるとは限りませんが、程度の差こそあれ、何らかの罰則が与えられる可能性は高いと考えられています。
そのため、データ3法で定められている内容を深く理解し、改めて現地におけるガバナンス強化を進めていく必要があるでしょう。
データ3法に抵触しないためには、現地における自社の運用ルールの見直しを進めることが大切です。データ3法に触れていないかどうかを確かめる上では、客観的な目線で評価することも求められます。
自社の評価基準では完璧に対処することが難しいため、近年は外部コンサルティングサービスの利用も活性化しています。中国の法制度に詳しい、専門家の意見を反映させることで、確実なガバナンス強化が見込めるはずです。
この記事では、中国のデータ3法の概要や、日本企業が注意しなければいけない理由、そしてどのように対処すべきなのかについて解説しました。
中国は世界最大級のマーケットであると同時に、デジタル活用については独自のルールを敷いているため、日本や欧米の定石が通用しない可能性があることを理解しなければなりません。
日本にとって、中国は隣国ということもあり、ビジネスを諦めるにはあまりに惜しい国といえます。データ3法による取り締まりは厳しいかもしれませんが、正しい対処法やガバナンスを構築することで、法律に違反するリスクを小さくできます。データ3法に対応したガバナンス強化を進め、現地への進出を滞りなく進めたいところです。