本記事では半導体製造の現場であるクリーンルームについて解説します。
半導体工場にはクリーンルームと呼ばれる特殊な設備があり、温度や湿度、気圧や洗浄度などが厳重に管理されている環境です。クリーンルームはルーム内の空気の清浄度によってクラス分けされており、空気を循環させる方式によってコストや清浄度が変わります。
クリーンルームでは空気中に浮遊している微粒子や不純物、ゴミの数を徹底的に管理することで、空気の清浄度を保っています。クリーンルーム内で作業することで、製品に対して微粒子レベルの異物が混入することを防ぐことができるため、食品加工工場から電子機器を扱う工場など、幅広い業界の工場で利用されています。
用途に応じて、湿度や温度、圧力、静電気などの条件を細かく設定することが可能です。ただし、クリーンルームの環境を維持するためにはそれなりの費用が必要となります。
クリーンルームは専用のパーテーションで壁と天井が構成されており、超高性能なフィルター「HEPAフィルター」を介して空気を供給する仕組みとなっています。HEPAフィルターは0.3μm以上の大きさの微粒子を99.99%捕集する性能があり、空気中に滞在しているダストをクリーンルーム内に流しません。また、クリーンルーム内は外よりも高い気圧に設定されており、清浄度が落ちる原因となる、外部からの微粒子の侵入を防ぐ機能もあります。
ルーム内は空気が常に循環するようになっており、循環する空気の流し方によって、垂直一方向流方式と乱流方式(非一方向流方式)に分類されます。
垂直一方向流方式は、クリーンルーム上部のファンから清浄な空気を一方向に流す方式です。超高性能フィルターを天井に設置し、床面に向けて垂直に清浄な空気を流します。浮遊物がクリーンルーム内に留まりにくいので、高い清浄度を実現できるメリットがあります。
半導体工場や精密機械工場では、より高い清浄度が求められるため、垂直一方向流方式が採用されていることが多いです。一方で、垂直一方向流方式のデメリットは、初期コストとランニングコストが高額になってしまうこと、クリーンルームの拡張がしにくいことが挙げられます。
乱流方式(非一方向流方式)は天井や壁の一部に超高性能フィルターを設置するとともに、排気口も配置する方式で、空気の流れは一方向ではありません。空気を循環させることでクリーンルーム内の微粒子を希釈して清浄度を保つ仕組みです。
乱流方式では空気が滞留する場所ができてしまうため、一般的に一方向性方式よりもクリーンルーム内の清浄度が劣ることが知られています。しかし、初期コストやランニングコストが抑えられるメリットがあります。
ビジネスにおいてはコストとパフォーマンスの兼ね合いを考える必要があります。生産する対象とランニングコストを考えて、クリーンルームの方式を決定します。
クリーンルームの清浄度は空気中の不純物の量によって規格が分けられています。清浄度を表すレベルを「クラス」と言い、単位体積あたりにどれくらいの不純物があるかでクラスが決められます。
クラスの指標は国際統一規格であるISOによって取り決められているものに移行されつつありますが、半導体業界では、以前より利用されている米国連邦規格を用いることが多いです。
米国連邦規格では1立方フィート(30.5cm四方)あたりの空気中に0.5μm以上の大きさの粒子がいくつ含まれるかによってクラス分けされます。例えば、1立方フィートの中に0.5μm以上の大きさの粒子が1,000個未満の場合にはクラス1000、100個未満の場合にはクラス100となります。クラスのあとに続く数値が小さいほど単位体積あたりの粒子量が少ないことになりますので、クリーンルーム内の清浄度が高いと判断することができます。
半導体の製造には特に清浄度の高い環境が必要となるため、半導体工場に設置されるクリーンルームはクラス1〜100レベルのものとなります。
クリーンルームの清浄度を保つためには4つの原則を守る必要があります。その原則は「持ち込まない」「発生させない」「堆積させない」「排除する」です。
半導体は、空気の清浄度が高く、温度や湿度も管理されている「クリーンルーム」という特殊な環境で製造されています。クリーンルームは清浄度によってクラス分けされており、半導体の製造には一般的にクラス1〜100という清浄度の高いクリーンルームが使われます。
近年、半導体に関する関心が高まっていますが、製造する環境にも目を向けてみると知見が広がるでしょう。