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自動車産業を変革するCASEとは? MaaS、PACEとの違いも

レンテックインサイト編集部

 100年に一度の大変革期にある自動車産業において、近年注目を集めるキーワード「CASE」。自動車の未来について語るとき頻繁に取り上げられる言葉です。
本記事ではCASEの意味・意義をMaaS・PACEといった他のキーワードと比較しつつまとめ、2020年の新型コロナウイルス流行により生じた“ある変化”についても解説いたします。

CASEは4つの単語で構成されている──それぞれの意味は?

 CASEはこれからの自動車にとって重要なキーワードである「Connected(コネクテッド化)」「Autonomous(自動化)」「Shared & Services(シェア・サービス)」「Electric(電動化)」の頭文字で構成されています。初出は2016年9月に行われたパリモーターショー2016。メルセデス・ベンツを擁するダイムラーにより発表された中長期戦略のタイトルが「CASE」でした。

それぞれの要素について詳しく見ていきましょう。

Connected(コネクテッド化)

IoT(モノのインターネット)の発達により、自動車と他の車や道路、インターネットとの接続が進むことを意味します。接続性が盛り込まれた“コネクテッドカー”のメリットとして総務省の資料 では以下のような機能が挙げられています。

  • 事故発生時の迅速な救助を可能にする緊急通報システム
  • 運転中の行動データを測定し保険料を算定するテレマティクス保険
  • 自動で盗難を知らせる盗難車両追跡システム

その他、他の車との相互接続により渋滞や事故の発生をリアルタイムで感知・回避したり、音楽や映画、ゲームなどをより自由に楽しめたりといったメリットが示唆されています。

Autonomous(自動化)

衝突被害軽減ブレーキやオートクルーズコントロールという形で徐々に実用化され始めている自動運転技術。その流れは加速し、遠くない未来には完全自動運転(自動運転化レベル5)も実現されるのではと言われています。
法規制により自動運転の実用化で海外に後れを取っていると言われてきた日本ですが、2020年3月からはレベル3(一定の条件下でシステムに運転を任せることが可能)での自動運転が公道で行えるようになり、状況の進展が期待されています。

Shared & Services(シェア・サービス)

カーシェアリングやウーバーのようなライドシェアリングなど、自動車を共有しまた移動という体験をサービス化する流れは世界的に広まってきていました。法規制によりライドシェアリングが規制されている日本ですが、カーシェアリング市場は2020年には295億円規模への成長が見込まれるなど順調に拡大しています。皆さんの中にもオリックスカーシェアなどシェアリングサービスを利用したことがある方がいるのではないでしょうか。

ただし、新型コロナウイルスの流行によってシェアリングの普及は見直される流れもあります。その点については後半でより詳しく取り上げます。

Electric(電動化)

ガソリンや軽油といった化石燃料から電気へ自動車の動力源を移行する流れです。地球温暖化や排ガス問題への効果が期待されており、また電動化によりコネクテッド化や自動化など他のCASEの要素も実現しやすくなると言われています。

この分野において、日本はむしろ他国に先行しています。もともと燃費への意識の高い日本車メーカーは多くのハイブリッドカー・電気自動車のラインアップを生み出してきました。とはいえ実際の普及率はノルウェーやオランダに大きく水をあけられており、中国やヨーロッパでは政策により普及が後押しされる流れ もあるため、日本の電動化への取り組みはより求められるかもしれません。

CASEと並べて語られる概念が、2019年10月にドイツ自動車部品メーカーボッシュが発表した「PACE」です。CASEの「C」が取り除かれ、P(Personalized:パーソナライズ化)が加えられえています。シェアリングにとどまらず相乗りや配車サービスなど個人がさまざまな選択肢から最適な移動手段を選べる状況がPersonalizedという単語にこめられています。

CASEと並行して進められる移動革命──MaaSとは?

 ある意味CASEの“先”にある状況を指し示す言葉としてMaaSというものがあるのをご存知でしょうか。

MaaSとはMobility as a Servicesの略で「サービスとしての移動」を意味します。
車、バス、電車など移動手段全般を包括してサービスととらえ、便利に利用できるようにしていこうという考え方です。事例として取り上げられることの多いフィンランドのMaaSアプリ「Whim」では、アプリ一つで公共交通機関、ライドシェア、タクシーなどの選択肢から最適な移動手段を検索・選択し、運賃の決済までスマホ内で済ませられます。

CASEのSの要素をより拡大して移動手段全般に当てはめたものがMaaSといえるでしょう。

コロナ禍で生じた“ある変化”

新型コロナウイルスの流行により、CASEにも見直しの流れがあるという報道が複数なされています。その流れの中心にあるのは「S(シェアリング)」の見直しです。
ソーシャルディスタンスの重要性が叫ばれる中で、感染のリスク要因となりうるカーシェアリングの成長に強いブレーキがかかりました。しかし公共交通機関よりは安全という考えから車の個人利用は拡大するという見方もあります。

とはいえウィズコロナ、アフターコロナの時代において「移動のあり方」自体が大きく変わるとすれば、CASEの概念も変化を迫られることは間違いないでしょう。

自動車産業は大きく変化していく

自動車産業の変化を端的に表すキーワードであるCASE、それに関連する言葉としてMaaS、PACEについて取り上げてきました。
自動車産業はCASEに象徴される変化の渦中にあり、そのCASEすら新型コロナウイルスの流行を背景に変わりつつあります。
今後も最新の情報に目を向け続けることは、現代の自動車製造およびそれに関連する事業の舵取りをする上で不可欠です。

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