本記事では、契約DXの実施に役立つCLMの概要や、契約DXの必要性について解説します。
契約業務はいずれも作業負担が大きいため、業務効率化を考える上では優先的に対処したい領域です。契約業務を簡略化することは難しく、適切な管理と正しい手続きの遂行が求められます。このような課題を解決するため、活躍しているのがCLMです。
そもそも契約DXは、契約業務のDX全般を指す言葉です。従来の契約業務といえば、紙の書類を使った対面での手続きが一般的でしたが、毎回の契約のたびにこれを実行するのは、現場担当者の負担が大きいという問題もあります。
そこで注目されているのが、電子契約の導入をはじめとする契約DXです。日本でも電子媒体での契約手続きが法的に認められているため、紙媒体からデジタルに移行し、手続きの省力化が各社で進んでいます。
ただ、すでに契約DXに役立つツールが複数登場している現状ですが、それでもまだまだDXそのものは十分に普及しているとはいえません。ZDNet Japanが2021年に発表した調査によると、契約業務においてツールを一切活用していないと回答した企業は、38%にのぼります。
このような結果になっている主な原因として、回答者が挙げているのは、「推進者の不在」です。逆に推進者さえいれば導入を進めることは可能で、その効果に期待している企業は一定数存在するとも考えられます。
ツールの存在の周知や導入効果への理解を深めることは、こういった契約DXが進まない現状を変える上でも大切です。
契約DXの推進を後押しする新たなツールとして注目されているのが、CLMです。CLMはContract Lifecycle Management(契約ライフサイクルマネジメント)の略称で、契約オペレーション全体を最適化するために導入されます。
契約業務は、細分化すると実に多くのプロセスがあります。契約前、契約時、そして契約後と、それぞれの段階ごとの対応が求められますが、CLMがあれば全てのプロセスをまとめて管理できます。
契約業務を効率化するツールといえば、リーガルテックや契約書管理システムが脳裏に浮かぶ人もいるかもしれません。実のところ、これらのツールとCLMはある程度線引きが行われており、役割や領域が微妙に異なります。
それぞれのツールとどのような違いがあるのか、ここで確認しておきましょう。
まずリーガルテックですが、これは法務向けの製品全般を指す言葉です。契約業務は法務領域の手続きでもありますが、リーガルテックを導入する場合は、法律に特化した利便性の改善を促すことになります。
一方、CLMは法務関連業務の改善ではなく、契約業務を日常の手続き業務と捉え、改善するためのツールです。CLMを使って法務分野全般の効率化ができるわけではない点に注意しましょう。
契約書管理システムは、締結した契約書の管理を効率化するための製品です。逆にいえば、契約書管理システムは契約締結前の業務をサポートすることができず、締結された契約書の管理に適用するのが一般的です。
一方のCLMは、契約書管理はもちろん、契約書類の作成から契約締結まで、契約書管理システムよりも広範な業務に適用できます。
契約書の管理を改善したい場合は契約書管理システムで良いのですが、それ以前のプロセスを改善したい場合、CLMが必要です。
CLMが現在注目されている理由として最も大きいのは、契約の二重管理の解消です。紙媒体からデジタルへの移行の過渡期である現在、多くの企業で問題となっているのが契約の二重管理で、紙とデジタルの二つの手続きをこなさなければならない負担が発生しています。
このような契約手続きにメリットはなく、ただ負担が大きくなっているだけであることから、早急な解消が求められています。CLMは、そんな二重契約を解消し、プロセスを最適化する役割を果たします。
また、契約書を統合されたデータベースで管理したいという際にも、CLMは役に立ちます。契約業務上で発生した書類などをまとめて管理できるので、契約の進捗管理や、契約書の検索効率を高める役割を果たします。
CLM導入を推進する上で下記の点が大切です。
まずは既存の契約ライフサイクルがどうなっているのかを見直し、改善点や理想的なライフサイクルのあり方を検討します。それから導入によって達成したい目標を定めることで、適切なCLM導入と運用が推進可能です。
また、導入当初こそスモールスタートで良いかもしれませんが、最終的には全社的な運用を目指しましょう。社内で統一されたシステムを利用することで、データベースを企業の資産として活用でき、生産性向上に役立ちます。
この記事では、契約DXの必要性やCLMの役割について解説しました。契約DXにおいてCLMが果たす役割の範囲は広く、契約業務の大幅な改善に役立つことが期待できます。
リーガルテックなどのツールとは異なる領域で活躍するため、すでにこれらを導入している場合は併用による相乗効果も得られるかもしれません。まずは自社の契約業務を見直し、CLMの運用を前提とした業務フローを検討することが契約DXを進めることになります。