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AI・IoTコンサルタント 伊本貴士の経営に役立つ最新技術解体新書 7月コラム「医療業界に求められるIoTの活用」

レンテックインサイト編集部

 日本においては、新型コロナウイルスの新規感染者が減少傾向にあり緊急事態宣言が一時的には解除されました。
世界的に見ても、日本の患者数や死亡率が比較的低い形で推移しているのは、国民一人一人の自粛に対する努力と、医療関係者の奮闘によるものだと思います。
改めて、医療関係者の方々には、敬意を表し感謝の意をお伝えしたいと思います。

一方で医療機関では、まだまだ入院している患者の治療が続いており、コロナとの戦いは決して終わりではありません。
また、緊急事態宣言の終了後も一部の病院などではクラスターが発生しており、医療施設は治療と検査と予防といった、さまざまなことに対応しなければならない状況にあります。

これからも続くウイルスとの戦いにおいて、医療機関におけるさまざまな問題点も浮き彫りになり、これまで以上にIoT活用が必要になると思います。

タッチレスマネジメントという考え

これから、人同士の接触は極力避けなければならないでしょう。
直接的な接触はもちろん、近距離間の空気接触、モノが媒介する間接的な接触も含めて予防のために極力避けなければなりません。
このように、ウイルス感染を防ぐために、あらゆる場所や場合において接触を回避させるための管理を、ここでは「タッチレスマネジメント」と呼ぶことにします。

タッチレスマネジメントには、IoTやAIなどの最新技術は欠かせません。

例えば体温に関しては、直接肌に接するタイプの体温計は使わずに、赤外線などを使った非接触型の体温計を使うように変化するでしょう。
非接触型の場合、精度に関する問題があるかもしれませんが、メーカーは需要があると見れば開発コストをかけて改善をするので精度に関しても今後向上し、結果として体温計は非接触が当たり前になると思います。

しかし、非接触型の体温計でも、医療従事者間で使い回すことでウイルス感染の原因になるかもしれません。
そこで、体温計を搭載したリストバンド型のウェアラブルデバイスを患者に装着し、ネットワークを通じて常時体温データを収集することも考えられます。それが実現すれば、そもそも医療従事者などが患者一人一人を検温するという必要性がなくなるわけです。
つまり、タッチレスの推進は、ウイルス感染予防と同時に業務のスマート化をもたらすものです。

新型コロナウイルス感染のリスクを避けるという点から退職者が増えているところもあり、より深刻な人手不足に直面している医療機関にとって、タッチレス推進は今後必須の考えだと思います。

タッチレスを推進していくためには、あらゆる活動においてセンサを備えた最新の計測機器を取り入れていく必要があります。
ただ、いきなりそのような機器を大規模に導入することは現場の混乱を招く可能性もあるため、実験的に検証を行い、段階的に導入すべきです。

機器導入において初期段階で実験的に検証を行うというプロセスは非常に重要です。
実際の機器を使ってみると、大きすぎて通路を通れない、電波状況が悪くネットワークに繋がらないなど、物理世界特有の問題が顕在化します。
それを踏まえて対策を考えた上で本格導入すべきです。

また、その機器をメンテナンスしてくれるパートナーの確保も重要です。
機械は故障するものです。その前提でいかにトラブルに対して迅速に対応するのかを考えることは、リスクマネジメントの観点で重要でしょう。

データマネジメントという視点

 体温一つでも、各患者からリストバンドのような計測器によって常時データを集めることができるようになると、38度以上の熱が出ているという異常を迅速に検知し、すぐに対応することができます。
また、AIを活用することで、現在は37度付近であっても、今後発熱する可能性が高い要注意患者を割り出すことが出来るかもしれません。

このようにデータマネジメントによって、万が一の場合に被害を最小限に抑えるという観点も非常に重要だと思います。

また、コロナ禍においては遠隔医療にも注目が集まりました。
これまでとは違い、多くの患者が来院するということは医療機関とって決して良いことではありません。

人が集まれば集まるほど、クラスターになるリスクは高まります。
患者同士の距離を取るために広い待合室を確保するといっても限度があります。
新型コロナウイルス感染が疑われる患者と一般患者との接触を避けるため、発熱外来の設置や、PCR検査のための屋外テントの設置なども必要となってくるでしょう。
またその患者が、単なる風邪なのか、インフルエンザなのか、新型コロナに感染しているのかをPCR検査などを行わずに区別することはできず、無用に感染者を増やす可能性もあります。

そう考えると、これまでの新型コロナウイルス登場以前から通院していた患者の診察をしながら新型コロナの患者を受け入れることは困難を極め、結果的に新型コロナ患者を受け入れる多くの病院が売上減に苦しみ、経営危機という新たな困難に直面しています。

今後人口が減っていく社会において、土地や建物などの資産は最低限にすることが経営上必要になります。
遠隔で可能なものは遠隔にし、それが結果として待合室に何十人もが体調が悪い状態で待ち続けるような状況を回避するスマートな医療につながるのではないでしょうか。

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