対話型AIの台頭は、既存業務のあり方を大きく変えると期待されており、すでに国内外の企業が導入に向けて動き始めています。ただ、ChatGPTなど便利な対話型AIは多くの可能性を秘めている一方、運用にあたってはセキュリティリスクの存在も念頭に置いておかなければなりません。
この記事では、そんな対話型AIが内包している、運用前に知っておくべきセキュリティリスクについて解説します。
対話型AIとは、テキストチャット形式で運用可能な汎用AIのことを指します。2022年末頃からはChatGPTをはじめ、多くの対話型AIが脚光を浴び、ビジネスの最前線で活用されるケースも見られるようになりました。
対話型AIは、テキストを入力するだけであらゆるタスクに応えてくれるのが特長です。その汎用性の高さは従来のAIとは比較にならないレベルに達しています。調べ物を頼めたりできるのはもちろん、中にはプログラムのコーディングや小説の執筆を頼む事例も登場するなど、多くの人を驚かせました。
対話型AIの登場は私たちの生活に多大な衝撃を与えましたが、一方で運用においてはセキュリティリスクを内包していることも忘れてはなりません。特に気をつけたいのが下記三つの脅威です。
今後どのように自分の身や組織を守れば良いのかが注目されています。
第一の脅威は、ウイルスの生成です。対話型AIはプログラムを生成でき、ウェブアプリの開発などへの応用が期待されている一方、その能力がウイルス生成するために悪用される可能性があることも懸念されています。
ウイルスプログラムは、これまではある程度プログラミングのスキルがある人間にしか生成することはできませんでしたが、今の問題と考えられているのは、対話型AIを使って誰でもウイルスプログラムを生成できるようになってしまうことです。対話型AIが広く普及し、なおかつ悪用のセオリーが広まってしまうと、これまでにない規模でサイバー攻撃が頻発する可能性もあります。
対話型AIは、まるで人間のような会話ができることも高く評価されていますが、そんな高度なコミュニケーション能力が、なりすまし攻撃に悪用される可能性も秘めています。
フィッシングサイトへの誘導文が今よりも巧妙になり、あまりの自然さにうっかり不審なメールを開いてしまったり、リンクをクリックしてしまったりという被害の拡大が懸念されるでしょう。
対話型AIに入力した情報が、AIサービス提供者の手にわたってしまう可能性についても無視できません。というのも、対話型AIでは学習した情報がデータベースに登録され、意図せずして別のユーザーとの対話の中に表示されてしまう可能性があるためです。
対話型AIのデータベースは現状、ブラックボックス化されており、その情報のソースは何かということを把握することはできません。機密情報に関する業務にAIを関与させないなどの工夫が必要です。
対話型AI運用においては、AIを使うべきシーンとそうでないシーンを見分けることが大切です。何にAIを使って良いのかを組織でルール化することにより、仕組みとしてAIの利用を制限すると良いでしょう。
また、最近では、AIを使ったサイバーセキュリティ対策も進んでおり、AIを活用したサイバー犯罪を抑止するための技術開発に注目が集まります。
将来的にはある程度AIによるサイバー攻撃もAIで防げるようになると考えられますが、セキュリティ対策に絶対はありません。最新の情報や法整備の状況にも注意を払いながら、セキュリティ強化につながるツールやサービスの活用を進めると良いでしょう。
この記事では、対話型AIが抱えるセキュリティリスクについて解説しました。AIは便利な反面、運用上は一定のリスクも内包しています。AIの仕組みをよく理解し、リスクにも注意を払うことで、インシデントの発生を抑制できるでしょう。
AI運用を検討している場合、社内のルール整備や社員向けの研修を徹底し、正しく利用できる環境作りが必要です。