本記事では金融業界のDXを促進するBaaSについて、注目の背景や導入に伴うメリットを解説します。
多くの人手を必要としていた金融業界も、近年のデジタルトランスフォーメーション(DX)需要の高まりに伴い、高度なデジタル化による省人化が求められています。多くのメガバンクなどで窓口の自動化やネットサービスの拡充が進む中、注目されているのがBaaSと呼ばれる技術です。
BaaSは「Banking as a Service」の略称で、銀行が持つ機能をクラウドサービスなどとして、第三者が利用できるようにすることによりオープンな金融サービスを提供することを指します。
銀行で利用できる各種サービスはもちろん、データベースもクラウド経由でオープンに活用できることにより、多様な金融サービスの登場を促進するきっかけとして期待されています。
インターネット上であらゆるサービスを受けられるようにするクラウド化は、さまざまなサービスにおいて活躍しています。
これまでお金を扱う繊細な業務が発生する金融業界は、新技術の採用については慎重な姿勢を見せてきましたが、クラウド技術の普及に伴い、BaaSと呼ばれる形態でのクラウド活用が進みつつあります。
BaaSのようなサービスが登場した背景には、金融業界においてデジタル化が喫緊の課題となっていたことがあります。金融業界は数字を扱う領域でありながら、業務の多くを人手に任せてきたことで、行政などと同じく老朽化したシステムや、アナログな業務フローが重荷となってきました。
アナログ業務が抱える不便の問題を解消するためデジタル化が推進されてきましたが、最近ではオープンバンキングが注目を集めていることでデジタル化を後押ししています。
オープンバンキングは、金融機関が保有している取引データを外部の事業者に共有することで、金融サービスを多様化するための取り組みです。
最近はスマートフォンの普及に伴い銀行機能をスマートフォンから利用したいという声も高まっていることから、オープンバンキングによってデジタル化を進めることで、顧客満足度を向上させる機会が増えると期待されています。
BaaSの実装は、金融機関はもちろん、周辺の事業者や、消費者にも多くのメリットをもたらすことが期待できます。
金融機関がBaaSを導入することで、金融データベースをオープンにし、多様な企業との提携が可能になります。決済アプリとの連携なども容易になるので、金融機関と消費者の接点を増やし、新しい顧客の獲得を促します。
BaaSの登場によって、従来よりもはるかに金融機能の組み込みが簡単になります。また、複雑な認証などを行わずとも金融サービスが使えるようになるため、ユーザビリティを改善し、新規ユーザーの獲得や既存ユーザーの満足度向上が期待できます。
末端にいる消費者にとっても、BaaSの普及はメリットが期待できます。金融サービスをアプリで気軽に利用できるようになり、SNSなどと連携して決済や送金などをより簡単に行えるので、ATMや銀行窓口にその都度訪れる必要もなくなるでしょう。
BaaSの導入は魅力的な一方、対処すべき課題もいくつか残ります。システムの導入にはコストがかかりますし、その維持管理にも継続的な負担が発生します。
また、金融サービスの多様化は新しい取り組みであるため、正しいリテラシー共有を社内外で行わなければ、大きなトラブルや犯罪の温床となる可能性もあります。適切なサービスの互換性を確保し、連携しやすい環境の整備にも気を配ることが必要です。
当たり前ですが、BaaSのような新システムを導入する場合、開発コストが発生します。
またシステムそのものを組み上げるコストだけでなく、業務をデジタル化するための移行作業等のコストや、その際の現場のパフォーマンス低下によるコストも見越しておかなければなりません。
BaaSは幅広い人に金融サービスを利用してもらえる反面、BaaSを利用する非金融事業者のリスキリングや専門スキルを持った人材確保が必要です。
金融サービスはデリケートな領域のため、金融に明るくない事業者の場合、専門的な知識や技術がなければ、法に触れてしまい、意図せず犯罪の温床となる場合もあります。
また、各事業者が別個にサービスを立ち上げ、互換性が低いままリリースしてしまうと、サービス間の連携ができず、非常に使いにくいサービスとなってしまいます。本来の目的であったユーザビリティの改善や利便性の向上による顧客満足度向上につながらず、最悪の場合サービスを急遽終了しないといけなくなる、というケースもあるため、技術的にオープンな環境の整備は不可欠です。
金融サービスの開発には何かと制約が多かったものの、BaaSの登場は金融サービスに大きな変化をもたらしてきています。
幅広いBaaSの普及と合わせて、リテラシーやサービスの互換性といった課題の解決にも取り組み、安心・便利に使えるサービスの更なる登場が期待されています。