製造業でもオフィスへのIT導入が進む中で、「ミドルウエア」という言葉を見聞きする機会も増加してきています。しかし、実際にどのような役割を発揮するのかなど、その概念を十分に理解できている人は意外と多くないのではないでしょうか。
DXにも大きく寄与する「ミドルウエア」の機能や種類、DXで担う役割など、基本事項を本記事で押さえてしまいましょう。
「ミドルウエア」は、直訳すると“中間の製品”となるように、「OS」と「アプリケーション」の“中間”で役割を担うソフトウエアです。コンピューターやスマートフォンは、Windows、Mac、Linux、Android、iOSなど基本的な制御を司る「OS」に、ワープロ、表計算、図面作成など個別の役割に特化した「アプリケーション」をインストールしたりクラウド経由で利用したりすることで、さまざまな操作を可能にします。
しかし、OSに備わっているのは、ファイルやデバイス、メモリ、タスクの管理といった基本的な機能だけです。そのため、メールの送受信やデータベースの管理といったアプリケーションの要求は満たせません。そこで、ミドルウエアを中間に導入し、機能を追加することでOSの可能性を広げるというわけです。
円滑なアプリケーションの活用においてミドルウエアは欠かせない存在であり、みなさんも知らず知らずのうちに利用しているはずです。データベースやIoT環境の構築、クラウドの利用など積極的にDXに取り組むにあたって、コストの削減やポータビリティの確保に努めるにはミドルウエアの戦略的な選定・活用も重要な要素となります。
DX時代にミドルウエアに注目すべき理由はそこにあります。
ここからは、ミドルウエアの具体例について押さえていきましょう。
ミドルウエアの基本として挙げられるのが「Webサーバー」「アプリケーションサーバー(APサーバー)」「データベース管理サーバー(DBサーバー)」の三つであり、それぞれ以下のような役割を担います。
Webブラウザの要求に応じて「静的コンテンツ」や、アプリケーションサーバーに要求した「動的コンテンツ」を返す。Apache HTTP Server、Nginx、IISなど。
Webサーバーからの要求を受けて「動的コンテンツ」を生成したり、データベース管理サーバーに必要なデータを要求したりといった実際の処理を担う。Apache Tomcat、 JBoss、Unicornなど。
データが保存されているストレージを管理し、データの書き込みや引き出し、更新、バックアップなどの操作を行う。MySQL、Oracle Database、IBM Db2など。
「静的コンテンツ」とは、利用者のリクエストで与えられた値に応じて“変化しない”コンテンツを、「動的コンテンツ」は “変化する”コンテンツを指します。
説明文から伝わる通り、上記の三つのミドルウエアは連動して機能することもよくあり、その形態を3層アーキテクチャ(Web3層構造)と言います。プレゼンテーション層(Webサーバー)、アプリケーション層(アプリケーションサーバー)、データ層(データベース管理サーバー)で構成された3層アーキテクチャは長年、WebサイトやWebサービスの構成の基本となり続けてきました。
一つのサーバーに機能を集中させることも可能ですが、3層に分けることで負荷を低減し、インシデント時のリスクを減らすことにもつながります。
また、ミドルウエアには「運用ミドルウエア」という種別も存在し、バックアップやシステムの監視、サーバー冗長化、ジョブ運用などの機能をミドルウエア兼アプリケーションとして提供します。
ミドルウエアは、OSとアプリケーションの仲立ちをする役割を担います。それはすなわち、IoT時代にさまざまなアプリケーションと機器・設備に内蔵されたコンピューターの中間処理においても大きな力を発揮するということです。
例えば、PLCやロボット、成形機などメーカーや製造年度がバラバラの設備からフォーマットを統一してデータを収集するために、ミドルウエアを実装するといった事例は近年よく見られます。定期的な脆弱性チェックやアップデートといったセキュリティ対策、特定のベンダーへの依存対策などを踏まえた上で取り入れれば、スマートファクトリー化に大きく寄与するでしょう。
また、データ活用においてデータベース管理サーバー、ERPや他システムのデータを集約するためデータ連携ミドルウエアへの注目も高まっています。“つなげる”ことが価値となるDX時代においてミドルウエアは、世間で考えられている以上の存在感を発揮しています。
ミドルウエアの役割や種別についてご紹介してまいりました。現代のWebサービス利用やDXにおけるミドルウエアの重要性に驚かれた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
クラウドで提供されるPaaSなど、ミドルウエアの利用の自由度は高まっており、それに従って市場も成長を続けています。その役割を踏まえて、いかに選定・活用すべきか、実際の戦略の策定に臨みましょう。