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国内におけるスマートファクトリー実践事例

レンテックインサイト編集部

スマートファクトリーは、製造業DXの一環として注目されている施策の一種です。国内での実践事例も大企業を中心に次々と登場しており、中小企業での推進も後に続くことが期待されています。

本記事では、DXの遅れがささやかれる製造業において、スマートファクトリーが注目される背景に触れながら、事例を参考にしつつ自社で実践するためのヒントをご紹介します。

スマートファクトリーとは

スマートファクトリーは、ドイツで誕生した「インダストリー4.0」という考え方を発展させて生まれた概念です。インダストリー4.0はデータ活用を推進し、単純作業にとどまらないロボット活用やロジカルな意思決定に取り組むという産業プロジェクトです。その中でも日本では「工場のスマート化」という部分を基に、スマートファクトリーという言葉が広く使われています。

製造業には、まだまだ多くの手作業が残されているとともに、技術革新にともなって可能となった、自動化の余地があります。ITの積極活用によって、現場作業から工場管理に至るまでを自動化し、無人で工場を機能させられるようになることが一つのマイルストーンとして考えられているのがスマートファクトリー構想です。

スマートファクトリーが注目される背景

スマートファクトリーが日本で注目されている理由は、人材不足、人件費や原材料の高騰、グローバル競争の激化という三つに集約することができます。すべてをスマート化とまではいかなくとも、工場の一部のスマート化に向けた何らかの取り組みが必要になっていることがこれらの理由からわかります。自社で同様の課題に直面していないか、一度振り返ってみましょう。

製造業における人材不足の深刻化

製造業界は、ほかの業界と比較しても人材不足が深刻化している領域の一つです。少子高齢化の影響で、若手人材の獲得が難しくなっていることに加え、熟練の技術を持った人材の高齢化による引退が進んでいるためです。これにより現在の生産性を維持できないリスクが高まっています。
出生率の増加が望めない日本においては、従来よりも少ない人手で現在の生産性を維持、あるいは向上させられる仕組みを作らなければ、事業の存続は困難を極めるでしょう。

人件費や原材料の高騰

少子高齢化の影響で労働人口が減少し始めており、人材獲得や人材を維持するための人件費が高騰しているため、従来のような賃金や福利厚生で既存のパフォーマンスを維持することも困難です。また、円安の進行や途上国の経済発展、物流コストの増加に伴い、原材料費の高騰も進んでいます。
製造を行うための基本的なコストが高くなっている以上、従来よりも高い生産性を目指すことはあらゆる企業に求められている取り組みです。

グローバル市場における競争の激化

途上国において物価や人件費が高まっているのは彼らが優れた生産性を実現し、業務のハイテク化を進めているためです。海外との取引も多く、外貨獲得手段が豊富にある一方、日本では海外市場に参入できるだけのコストパフォーマンスや生産性を高めていく動きが未だ遅れています。

国内市場は人口減少に伴い縮小傾向にあるため、目指すべき市場は海外にしか残されていないのが現状です。競争が激化するグローバル市場で存在感を発揮するためには、海外の優秀な工場を上回る生産性を目指す必要があるでしょう。

国内におけるスマートファクトリーの実践事例

ここで、国内におけるスマートファクトリーの実践事例を確認しておきましょう。今回ご紹介する企業はいずれも日本を代表する製造企業で、すでに高いレベルでスマートファクトリー化が進められていることが分かります。

ここまでのスマートファクトリー化を短期間で実現することは困難ですが、そのエッセンスを事例から学ぶことで、自社でスマートファクトリー化を進めるためのヒントを得られるはずです。

パナソニック

パナソニックでは、国内の主要工場へのIoTやAIの導入を進め、スマートファクトリー化に力を入れています。
個別大量生産における不良ゼロや生産性の向上に向け、工場内のデータ化を進め、データを主軸とする効果測定と改善を進めています。

キオクシア

キオクシア(旧東芝メモリー)は、3D構造のNAND型フラッシュメモリーの量産ラインにスマートファクトリー技術を導入しています。不良検査にAIとセンサーを導入し、予兆診断や遠隔による検査を可能にしました。
一部の加工設備や動力設備においてもセンサーを実装することで、稼働状況のデータ収集とメンテナンス効率化に努めています。

アサヒグループホールディングス

アサヒでは「スマートビール工場」の実現に向けた、AIやIoT導入を進めています。保守点検業務や熟練のノウハウの継承を、人ではなくAIやIoTによって代替することで、従来よりも少人数でも安全かつ高品質な状態を維持した工場運営ができる体制構築を目指しています。

まずはできるところから工場のスマートファクトリー化を

事例からも分かる通り、スマートファクトリーの実践には高度なシステム導入が必要なため、相応の初期投資が必要です。小さなスケールで工場を運営している場合、大規模で抜本的なスマートファクトリー化は困難であるため、まずはできる範囲からの技術導入を進めることが大切です。

どのような業務を効率化できそうか、どんな問題を社内で抱えているかを把握するところから始めると良いでしょう。

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