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世界で加速するEV車(電気自動車)の普及、その背景と動向

レンテックインサイト編集部

自動車産業は100年に1度の変革期を迎えていると言われています。その変革とはCASEと呼ばれる「コネクテッド化(Connected)」「自動化(Autonomous)」「シェア・サービス(Shared & Service)」「電動化(Electric)」の四つです。

中でも自動車の「電動化」が急ピッチで進んでいます。従来のガソリンや軽油が燃料のエンジンを動力とする自動車から、「バッテリー+モーター」を動力とするEV車(電気自動車)に置き換わり始めています。

2019年4月4日に発表されたカウンターポイント・テクノロジー・マーケット・リサーチ (英文名: Counterpoint Technology Market Research)のリポートによると、EV車の販売台数は2017年の120万台から大きく伸び、2019年には約200万台となる見込みです。さらに2025年までには年間1000万台を超えると予想されています。また2030年、世界の新車市場におけるEV車のシェアは最大50%に達するとも予想されています。

今回は、EV車が一気に普及し始めた背景と海外のEV市場の動向について紹介します。

EV車普及の背景

 EV車の普及が進んでいる背景には大きく分けて➀各国の環境への配慮による規制強化➁産業育成のための国策があります。

➀各国の環境への配慮による規制強化について、中国やインドなどの大気汚染が深刻な国においては電動化が一つの解決策として見られており、規制強化やEV車への優遇措置が取られています。 ヨーロッパにおいても温暖化対策としてEV車への優遇措置を取る国が出てきています。 これらの国の中には、将来的にガソリン車などの内燃機関車を販売禁止にする国も出てきています。 また、EV車普及の背景には➁産業育成のための国策という側面もあります。特に中国は国主導でEV車の普及を後押ししています。

EV車普及をリードする中国

2017年、中国で60万台を超えるEV車が販売されました。同年の米国における販売台数19.8万台の3倍以上です。さらに2018年には98万台を超え、今では中国はEV車の世界市場の半分以上を占める世界最大の市場となっています。これを強力に後押ししてきたのが中国政府です。

これまで中国政府は新エネルギー車(NEV)を推進する政策を採ってきました。乗用車のEV車支援としては、メーカーには1台あたり約5万元(約82万円)の補助金を、消費者にはEV車を購入するインセンティブを与えています(なお補助金に関しては2019年に入って減額)。また、都市部においてはガソリン車に対してナンバープレートが発給されにくくなっており購入に数年待つケースもあるのに対し、EV車含む新エネ車の場合は即時に発給されます。

これまで欧米や日本の自動車メーカーに対して後発の中国の自動車メーカーは優位性を築けていませんでした。しかしEV車はガソリン車に比べて部品数が比較的少ないことから、中国の自動車メーカーが優位に立てる可能性のある有望な産業と目されています。

実際、中国政府の後押しもあり世界でのEV車市場シェアトップメーカーが中国から出てきています。2017年、EV車の販売台数が10万9485台と世界一となったBYD(比亜迪)です。投資ファンドのバークシャー・ハサウェイの会長兼最高経営責任者(CEO)であるウォーレン・バフェットも出資していることで有名なメーカーです。BYDは元々はリチウムイオン電池を生産していましたが、2003年に「秦川自動車」を買収しハイブリッド車とEV車の生産に乗り出しました。BYDはEVバスの生産も行っており、日本でも京都のバス路線などで複数台が運行されています。

EV車普及に向けて将来的に内燃機関車販売を禁止する予定のヨーロッパ

 EV車の普及率が24%と高くEV車普及に積極的なノルウェーは2025年までに内燃機関車の販売を禁止すると発表しています。ノルウェーではEV車購入の際にかかる25%の消費税と通常100万円以上課される購入税を免除しています。さらに、EV車であれば高速道路は無料となりバスの専用レーン走行も認められています。またノルウェーだけでなく、ドイツは2030年までに、イギリスやフランスは2040年までに内燃機関車の販売を禁止すると発表しています。このようにヨーロッパではEV車普及の方向へとかじを切っています。

こうした流れの中でゼネラルモーターズ、フォード、BMW、メルセデス・ベンツ、ボルボといった欧米の自動車メーカーも続々とEV車の生産に参入しています。とりわけドイツのVW(フォルクスワーゲン)は2015年の排ガス不正問題で毀損(きそん)したブランドイメージを取り戻すためにもEV車に注力しています。VWは2028年までにEV車を2200万台販売すると発表しており、それまでに70車種のEV車を投入予定です。さらにEV車の安定した生産に欠かせないEV車用バッテリーの自社生産にも乗り出しています。EV車用バッテリーの自社生産はヨーロッパの大手自動車メーカーとしてはVWが初となります。

ヨーロッパでは各国が将来的なガソリン車の販売禁止を公表しており、大手自動車メーカーもEV車に注力し始めています。中国でも国の後押しによってEV車の普及が進んでいます。ただし米国や日本などそれ以外の国においてどのようにEV車が普及していくのかは未知数です。中国、ヨーロッパに追従してEV車普及の方向に動いていくのか、それともハイブリッド車普及の方向に動くのか。今後もその動向に注目です。

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