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DX時代にナレッジマネジメントが求められる理由

レンテックインサイト編集部

社会の情報化、グローバル化の進展やCSR(企業の社会的責任)の高まりにより、企業に求められるスキルは増加・多角化しています。
変化の激しい時代において生き残るための武器となるのが「知識(ナレッジ)」です。そのマネジメントに関する手法を体系化した「ナレッジマネジメント」はDX時代に多くの注目を集めています。
本記事で、DX時代にナレッジマネジメントはなぜ求められるのか、どのように実践すればいいのかなど背景や基礎的な考え方を体系立てて取り入れましょう。

ナレッジマネジメント(知識経営)とは何か 求められる理由は?

ナレッジマネジメント(知識経営)は「企業を構成する一人一人の知見や企業に蓄えられたデータを知識化し、組織の資産として戦略的に活用することで付加価値を生み出す仕組み」と定義できます。1980~90年代には使われ始めていた歴史ある概念であり、経営学者の野中郁次郎氏が生みの親として、その後の発展や浸透を支え続けてきました。

ナレッジマネジメントは、野中氏が同じく経営学者の竹内 弘高氏と共同で著した書籍『The Knowledge-Creating Company』により、米国で広がり、国際競争力を低下させていた同国の製造業の復活に寄与したといいます。

1990年代、パソコン通信~インターネットへとICT技術が発展し、ハードウエアからソフトウエアへ価値の源泉が移動する流れが始まりだしていました。情報のやり取りが加速し、ベストプラクティスの共有が容易になる中で、情報やデータを創造的な業務につながる知識に昇華させるための体系的な手法が求められたのです。

前述の『The Knowledge-Creating Company』の副題は『How Japanese Companies Create the Dynamics of Innovation(日本企業がイノベーションのダイナミクスを生み出す方法)』です。すなわち、ナレッジマネジメントは「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と呼ばれた、日本のものづくりにもともと備わっていた資質でした。

しかし、1990年代のナレッジマネジメントの体系化・仕組み化の流れに日本は乗り遅れます。それが、日本企業が情報時代のものづくりにおいて欧米に遅れをとった原因の一つだと言われています。

情報はいつでもどこでも大量に取得・発信できるようになり、データ分析やAI開発などの可能性も広がりました。しかし、情報を取捨選択し、発見を見出したり判断につなげたりと創造的な業務を行うためには、人間が情報を知識に昇華させたり、既存の知識と連結させることが不可欠です。

そのため、DX時代においてナレッジマネジメントが再度注目を集めています。

ナレッジマネジメントを実践するための三つの方法

ナレッジマネジメントをどう実践すればいいのか、具体的なイメージが浮かぶようにITツールの活用と合わせてご紹介します。

ナレッジの源泉となる文書管理のデジタル化

技術仕様書、ISO文書、議事録、クレーム報告書など、文書は社内のナレッジの源泉として代表的なものです。それらを知識につなげるにあたって、文書管理のデジタル化や、クラウド導入に取り組む企業は増加しています。

適切な文書管理システムは検索性を高め、情報の知識化やナレッジの活用を促進します。またチャットや質問フォームなどのコミュニケーション機能と連携させることで、文書と紐づいた知識のコラボレーションと資産化が進みます。

自社の目的に合わせて「ナレッジマネジメントツール」を選定

文書だけでなく、動画、音声の共有やその分析、情報の収集などナレッジマネジメントにまつわるさまざまな機能を持つITシステムは「ナレッジマネジメントツール」として提供されています。

先に挙げたような情報の蓄積・検索にフォーカスしたものもあれば、社内教育用のプラットフォームとして設計されたもの、社内wikiや顧客問い合わせへの自動対応といった用途に使えるナレッジベースなども提供されているため、自社の強化したいナレッジマネジメントのイメージをはっきりさせた上で、適したサービスを選定する必要があります。

暗黙知の活用につながる社内SNSでのコミュニケーション促進

ナレッジには、知識として体系化された「形式知」と言語化されていない「暗黙知」の2種類が存在します。暗黙知の共有にあたって効果的だと考えられるのが、チャットツールや掲示板など、社内SNSを用いた社内コミュニケーションの促進です。疑問への回答や職務上のやり取りに加え、雑談など一見業務に関係ないやり取りも活性化させることで「暗黙知の形式知化」と「知識のコラボレーション」が起こる場作りを行います。

日本企業は「暗黙知」を得意とし「形式知」を苦手とする

平成19年度 年次経済財政報告書』(出典:内閣府)の「日本企業のIT活用と生産性」に関する項目において、「なぜ日本企業は情報ネットワークを活用できないか」についての研究が紹介されています。

そこで指摘されているのが「日本企業は総じて「暗黙知」の取扱いに秀でているものの「形式知」の扱いは苦手である(※)」ということ。日本企業は「情報調整系」と「資源調整系」の二つからなる組織IQにおいて、情報調整系に分類される「内部知識発信(情報(知識)共有と組織学習)」のスコアが著しく低いことがデータにより示されています。これはすなわち、組織の成員の持つ知識や意思決定に必要な情報が流通する仕組みがきちんと整っていないということです。

平成19年度と10年以上前の資料ではありますが、現在も業務の属人化、部門間連携の不足などの問題は生じており、当時指摘された体質は現在も変わらず存在しているのではないでしょうか。

ナレッジマネジメントでは、暗黙知を形式知化する「SECIモデル」などが基礎理論として構築されており、現在も活用され続けています。

※……引用元:平成19年度 年次経済財政報告 「―生産性上昇に向けた挑戦―、第3節 日本企業のIT活用と生産性、第3節 日本企業のIT活用と生産性、コラム9 「知識創造経営」からみた情報ネットワークの質┃内閣府

ナレッジマネジメントの重要性は、AI時代においても高まり続ける

ナレッジマネジメントとは何か、DX時代に注目すべき理由、具体的な実践手法、知識の取り扱いに関する日本企業の特性などについてご紹介してまいりました。AIが急速に発達する中で、人間にしかできない業務を見出し注力することが求められています。情報やデータとは違い、「知識」を扱えるのは人間だけです。ナレッジマネジメントの重要性はAIが発達しても失われず、むしろ高まり続けるでしょう。

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