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AI・深層学習(ディープラーニング)による異常検知 人に優るメリットはどこにある?

レンテックインサイト編集部

令和2年版情報通信白書』(出典:総務省)によると、2019年時点でIoT・AI等のシステム・サービスを導入している企業の割合は14.1%、導入予定を含めても23.9%です。導入を足止めする理由についてのアンケートで最も高い割合を占めたのが「導入すべきシステムやサービスが分からないから」。
そこで、モデルケースとしてご紹介したいのが、AI・深層学習(ディープラーニング)による異常検知です。
AIは異常検知においてどのような効果を発揮するのか、深層学習は異常検知にどう影響したのか、AIが人に勝るメリットなど、気になるポイントをご紹介します。

AI・深層学習(ディープラーニング)による異常検知とは

「異常検知」とは大量に取得したデータに対して設定した「通常」と異なるパターン(=異常)を発見することです。通常のパターンから外れた異常値を見つけることはすなわち、設備・機器の異常や不良品の発生、セキュリティ攻撃など、インシデントの発見の自動化や早期化につながります。

近年AIの活用が企業の成長の源として注目を集めるようになったのには、2000年代ごろより生じた深層学習の発展が大きく影響していますが、深層学習は異常検知の実用性も大きく高めました。

多層化したデータから特徴量を抽出する深層学習は、音声や画像、動画といった非構造化データの異常検知を高い精度で行うことを可能にしました。また、異常データが不足している場合に、正常なデータからの学習をもとに「正常らしさ」のモデルを構築する精度も高めました。

深層学習による異常検知といっても、2006年に生み出されたオートエンコーダ(自己符号化器)によるもの、二つのニューラルネットワークに競わせることで「教師なし学習(「正解」を与えられない状態でデータのパターンを導き出す学習モデル)」を実現するGAN(敵対的生成ネットワーク)の異常検知、深層学習と従来の学習モデルを組み合わせたハイブリッドモデルなどさまざまな種類が存在します。

どのような学習モデルが適しているかは、対象となるデータの量や質、正解データの有無、データをセンシングする環境などの要素に左右されます。

AI・深層学習による異常検知が、人に勝る三つのポイント

AI・深層学習による異常検知は、工場において設備保全、検査・検品、生産管理などを人に代わって行います。
それによって具体的にどのようなメリットを与えてくれるのか、人に勝る三つのポイントで見ていきましょう。

ヒューマンエラーの防止になる

人間はAIよりも柔軟な対応ができるのと引き換えに、疲れやうっかりによりミスを起こすという欠点を持ちます。不良品を見逃してしまう、数値を読み間違えるといったヒューマンエラーが発生しやすい作業において、AIは人間よりも力を発揮することが期待されます。また最近では、リアルタイムの作業映像からヒューマンエラーを検出する製造現場向けAIなども登場しています。

人間には不可能な判別が可能

センサーに直接接続し、取得した情報を特定のパターンに従って判別する“脳”の役割を果たすのが異常検知におけるAIの特性です。そのため、人間には不可能な1℃の温度差や、わずかな周波数特性の変化などをキャッチし、原因の候補とともにアラートを発信するといった動作も可能になります。その結果、異常検知を基にした予知保全が、これからのメンテナンスの当たり前として推奨されています。

経済産業省が取りまとめた、これから導入にチャレンジする中小企業向けAIガイドブックにも、「製造業へのAI予知保全の導入|出典:経済産業省」がラインアップされています。

カバーできる範囲が広まる

人間が五感で一度に確認できる範囲には限りがあります。すべてをカバーしようとすればそれだけ人的コストも発生するため、AIによる中央監視システムがものをいいます。それだけでなく、河川やダム、遠方地域や海外など、簡単には足を運べない場所、あるいは24時間365日という時間の壁を超え、幅広い範囲をカバーできるのもAIによる異常検知の特性です。

AI・深層学習による異常検知の導入にあたっての注意点

AIによる異常検知は上記のように、多くのポイントで人を凌駕しますが、もちろん条件によってその精度やコストは千差万別であり、「コストに見合わない投資だった」と感じられてしまうケースがあるのも確かです。

教師データが十分にある場合でも、精度が100%に達することは基本的にありません。そのため、テストの段階でどの程度の精度ならば実用にかなうのかの基準を設けておくことが求められます。またデータをもととした予測の精度は不十分なものの、検知は満足のいくレベルで行えるという場合もあります。

AI・深層学習の限界を前提として、「この部分ならば強みを発揮できる」と適材適所を設定できたケースほど、技術導入の成功率も高い傾向にあります。導入の担当者自身が理解している場合でも、経営陣やビジネス部門などほかの社員に理解されているとは限りません。

異常検知に限ったことではありませんが、成功モデルを共有しておくことは新技術導入の必要条件なのです。

異常検知が役立つ場はマーケティングや不正検知、人材管理にも

AI・深層学習による異常検知の概要とメリットについてご紹介してきました。本記事では工場での利用にフォーカスしましたが、マーケティングや不正検知、人材管理など、ビジネスの現場で異常検知がものをいうシーンは数多く存在します。
自社における成功モデルを、視野を広く持って見出しましょう。

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