本記事ではサイバーレジリエンスの意味や注目の背景、そしてサイバーレジリエンスを実践するメリットや獲得に向けたポイントについてご紹介します。
サイバー犯罪の増加に伴い、サイバーセキュリティ対策の見直しが進む中、注目を集めているのがサイバーレジリエンスという考え方です。サイバーレジリエンスの考え方を組織に定着させることで、リスク管理のあり方を大幅に改善することも可能となります。
サイバーレジリエンスは、サイバー攻撃を受けた後の企業の回復力を指す言葉です。例えばとある企業がサイバー攻撃を受け、サーバーに保管していたデータが全て消滅してしまったとします。サイバーレジリエンスのない企業であれば、これらのデータは全て失われたままとなってしまう一方、サイバーレジリエンスのある企業は、バックアップサーバーからデータをリストアし、すぐに業務を再開できるよう復旧することができます。
サイバー攻撃の恐ろしいところは、ただ企業の資産が盗まれるだけでなく、ビジネスが立ち行かなくなるリスクを負わされることにもあります。サイバーレジリエンスを身につけることで、サイバー攻撃からの迅速な復旧を実現し、被害を最小限に抑えることができます。
サイバーレジリエンスが注目を集める背景には、複数の理由が考えられます。企業のデジタル化が進んだとともに、サイバー犯罪の発生率も増加し、セキュリティ対策が進んでいない企業は高いリスクの中での業務を余儀なくされています。
また、どれだけ対策を講じてもサイバー攻撃を受けるリスクをゼロにはできないことも、サイバーレジリエンスの注目を集める背景となっています。
サイバーレジリエンスが注目される大きな理由の一つが、企業活動のデジタル化です。デジタルトランスフォーメーション(DX)の進展に伴い、多くの業務がアナログからデジタルに移行し、社内システムにデータや業務ツールが集約されています。
このため、企業のシステムに何らかの不具合が出てしまうと、業務が丸ごと停止してしまい、企業活動が止まってしまう可能性が大きくなっています。
デジタル化は大幅な生産性向上をもたらした反面、適切な対策に努めておかなければ、企業は甚大な被害を受けることとなります。
サイバー攻撃による被害が拡大しているのも、注目を集める理由の一つです。世界各国の企業はもちろん、日本国内の企業も例外ではなく、セキュリティ対策が追いついていない中小企業や公的機関も標的となっています。
業務のデジタル化は喫緊の課題ですが、それと両立してサイバー攻撃に対する対策も十分に練っておく必要があるでしょう。
サイバー攻撃は驚異的な被害をもたらし得ますが、そもそもこの攻撃のリスクをゼロにすることはできません。
サイバー攻撃を未然に防ぐための取り組みは大切ですが、新しい攻撃方法が次々と登場している今日においてはセキュリティ対策もいたちごっことなっており、100%被害を回避できる対策方法はありません。
「明日は我が身」ということを念頭に置いて、サイバー犯罪と向き合う必要があります。
サイバーレジリエンスはサイバー攻撃対策全般を指す言葉でもありますが、これによって複数のメリットが期待できます。経済的な損失を最小限に抑え、企業の収益性が損なわれるリスクも小さくできます。
また、サイバー攻撃のダメージを小さく抑えられる企業は、顧客も安心してサービスを利用できるため、攻撃後に客離れが進んだりするのを回避し、安全性の面から競合他社との差別化が実現します。
サイバーレジリエンスの獲得は、サイバー攻撃による経済損失を軽減する効果が期待できます。サイバー攻撃から迅速に復旧することで、企業活動を問題なく継続できるためです。
サイバー攻撃を受けた企業は顧客からの信頼が低下する懸念もありますが、サイバーレジリエンスのある企業であれば信頼の低下を回避できます。
「サイバー犯罪は起こるもの」という共通認識が生まれつつある以上、サイバー攻撃対策が万全であることは顧客ニーズの一つとして潜在していると言っても過言ではありません。
サイバー犯罪に対して手も足もでない企業は「信頼に足る相手ではない」と顧客からみなされますが、サイバー犯罪の被害に遭っても迅速に復旧できる企業は「リスク管理が適切に行われている」とみなされ、信頼を損なわない、あるいは早急な信頼の回復が期待できます。
サイバーレジリエンスの獲得は、競合に対してアドバンテージを獲得する上でも重要です。企業のセキュリティ対策の徹底度合いは今や企業の独自性としても認知されていますが、被害を受けた後の対策まで徹底している企業はまだまだ少ないため、サイバーレジリエンスのある企業はセキュリティレベルの高い企業として、見込み客の信頼を獲得することができます。
サイバーレジリエンスの獲得のためには、以下の二つのポイントを押さえておくことが大切です。社内システムを監視できる仕組みを整備することで、早急にサイバー攻撃を察知し、被害を小さく抑えることができます。また、社内のセキュリティリテラシーを高められれば、甚大な被害をもたらす攻撃を未然に防いだり、サイバー攻撃を受けた際に適切な対処を実行し、機密情報の流出などを回避したりできます。
サイバー攻撃のリスクは増加する一方ですが、攻撃を受けるリスクをゼロにすることはできません。いつか被害に遭うことを前提とした、強度の高いサイバーレジリエンスの獲得を目指しましょう。