画像素材:Unsplash
本記事では、国内企業・組織の事例を参考にしながら、IT人材確保のポイントをご紹介します。
デジタルトランスフォーメーション(DX)の浸透により、IT人材の需要が高騰しています。それにより各企業や組織で人手不足が顕著になっており、IT人材確保には工夫が求められています。
そもそも日本でIT人材の不足が深刻化している理由として、以下の4つの背景が考えられます。
一つは、DXの急速な普及です。DXはここ数年で急激に注目を集め、新型コロナウイルスの影響もあり働き方改革に伴う業務のデジタル化がこれまでになく進んだことから、システムの導入および維持管理の人材が不足しています。
また、IT業務を担える人材はそもそも人数が少なく、いわゆる理系人材にあたるため、文系人材が多い日本の市場で彼らを探すことが困難となっています。
IT人材の需要はあっても、その需要をすぐに埋めることができない理由として、ITスキルを身につけるのに時間がかかるという問題が挙げられます。IT人材の育成には時間がかかることから即戦力人材は需要が高く、いつまでも十分な供給が得られない状況となっています。
国内からIT人材が流出し、海外企業に奪われてしまっているケースも散見されます。国内企業はIT人材に十分な待遇をオファーしないことから、より収入面や裁量面で優遇してもらえる海外の会社を希望するエンジニアは少なくありません。
このような状況下で、日本企業や組織はどのようにしてIT人材を確保しているのか、その事例を確認してみましょう。注目したいのは、人材育成や待遇改善のアプローチ、新しい役職の創設や入り口の拡大といった方法が採用されている点です。
日本を代表する自動車メーカーのトヨタ自動車株式会社では、会社主催の競技プログラミングを展開することで、IT人材の育成、および高度なスキルの取得を促しています。
日本最大の競技プログラミング団体と連携して同イベントを盛り上げるトヨタは、競技プログラマーに対して賞金を提供するのはもちろん、講師として社内に招き、エンジニアの育成に貢献してもらうなどして、効果的な人材育成とIT人材とのチャンネル確保に努めています。
IT大手の日本電気株式会社(NEC)は、高額年収のポジションをIT人材に向けて提供することで、海外への人材流出を防いでいます。
同社では社内研究職ポストに向けて、新入社員からでも年収1,000万円クラスのポジションを提供する制度を導入し、市場価格に見合った待遇の是正に向けた取り組みを主導します。
各社で待遇改善が進まない中、最も分かりやすい収入面での大幅な改善を実施し、他社との差別化にも努めています。
群馬県警ではIT人材の確保に向けた、サイバーセンターと呼ばれる新しい部署の設立を進めています。
サイバー犯罪捜査官のポストを増設するだけでなく、資格取得者に向けた採用優遇などのハードル緩和措置を実施することで、サイバー犯罪の増加へ迅速に対応するための組織作りを進めています。
画像素材:Unsplash
上記のような事例から、IT人材の確保においては「自社人材の育成」「IT人材の待遇改善」「ポジションの新設・権限の拡大」といった取り組みが重要であることが分かります。これらすべてを一度に実現するのは困難で、抱えている課題も企業によって異なります。喫緊の課題に合わせて自社に最適なところから進めていくのが良いでしょう。
IT人材は外部から獲得するだけでなく、時間をかけて自社で育成する取り組みが求められます。市場に十分な数が揃っていないこともありますが、自社で人材を育成することで、自社の業務にマッチしたITスキルを持った人材の確保を進められるため、長期的には大きなメリットが期待できます。
外部から人材を確保する場合には、相応の待遇を提示した上でオファーすることが大切です。海外企業からの引き抜きや大企業での高待遇ポストも増える中では、例え中小企業であってもそれなりの待遇によるオファーが求められます。
DXに向けたIT人材を確保するためには、相応のポジションを確保時にあてがう必要もあります。意思決定をスムーズに進められる、しがらみに囚われることのない社長直下の「DX推進室」などを立ち上げることで、IT人材に対して相応の裁量を与え、働きがいのある職場を提供することが大切です。
DXの普及がますます進む今後、IT人材の確保はどんどん難しくなっていくことが予想されます。国内の事例を参考にしつつ、早い段階から人材確保に向けた対策を取っていく必要があるでしょう。