ホームIT半導体のn型、p型とドーピング

IT Insight

半導体のn型、p型とドーピング

レンテックインサイト編集部

IT Insight 半導体のn型、p型とドーピング

画像素材:shutterstock

本記事では、半導体素子を作る上で欠かせないドーピング技術について解説します。

ドーピング技術は半導体製造においてなくてはならない技術です。ドーピングとは母材に不純物を拡散させることを指し、シリコン基板上の特定部分にドーピングを行うことで部分的にn型半導体やp型半導体を作ることができます。ドーピング後、このn型の部分とp型の部分を電気的に上手く繋げると最終的にシリコンウエハ上にトランジスタなどの素子が形成され、集積回路ができあがります。

n型半導体とp型半導体を作るドーピング技術

半導体素子の基礎となるn型半導体とp型半導体を作るためにドーピングが行われます。半導体はその名の通り、絶縁体と導体の中間的な性質を持っています。金属などの導体では負の電荷を持った自由電子が電気を運びますが、半導体の場合は自由電子ともう一つ、正の電荷を持った正孔も電気を運びます。自由電子が主に電気を運ぶ場合をn型半導体、正孔が主に電気を運ぶ場合をp型半導体と呼んでいます。これらn型半導体およびp型半導体を作り出す技術がドーピングです。

高純度のシリコン単結晶などは真性半導体と呼ばれ、結晶内には自由電子がほとんど存在していません。電気抵抗も高くこのままでは半導体デバイスとして機能しないために、不純物をドーピングして自由電子もしくは正孔の数を増やします。真性半導体にドーピングを行うと電気がよく流れるようになるとともに、不純物の種類によってn型・p型半導体が作られます。そして、このn型半導体とp型半導体を組み合わせることでスイッチング作用や増幅作用などを持つ半導体デバイスが形成されます。

n型半導体とp型半導体の作り方

n型半導体はリンを、p型半導体はホウ素をそれぞれシリコンの単結晶にドーピングすることにより作られます。

半導体産業においてドーピングは主にシリコン単結晶に対して行われますが、シリコンは四つの価電子を持っており、共有結合を行う際には四つの原子と結合できます。ここで、価電子が三つの元素と五つの元素をシリコンにドーピングすると、三つの場合は完全に結合するための価電子が一つ足りず、五つの場合は一つ余ります。この一つ足りない場合が正孔を持つp型半導体に、一つ余った場合が自由電子を持つn型半導体にそれぞれなります。シリコンの場合、価電子三つのホウ素がp型半導体の、そして価電子五つのリンがn型半導体の不純物としてドーピングされています。

このドーピングの方法にはイオン注入法と熱拡散法の二種類があります。

イオン注入法は、リンやホウ素を電離させイオン化し、電界で加速させて高速のイオンビームを試料に当てることで表面を破壊し、内部へと埋め込みます。イオン化および電界による加速は不純物の少ない真空中で行います。もし、大気中で行うとうまくイオン化しない上、加速の際にも大気中に含まれる窒素や酸素分子に衝突してしまいうまく加速できずに失速してしまいます。このため、真空度は比較的高く、大部分のイオン粒子は試料まで衝突せずに真っすぐ飛ぶことができます。このドーピングの際、シリコンウエハ上にマスクをかけ、ごくわずかな部分のみにドーピングできるようにすると、規則正しく整列された微小な素子を大量に作り出すことが可能になります。

ドーピングされる元素をドーパントと呼びますが、イオン注入した際にはドーパントが侵入した部分の結晶構造は破壊されていますので、ドーピング後にはこれを修復するために高温でのアニールが必要になります。また、ドーパントの濃度や注入深さは電圧と電流により制御されます。電圧が高いとイオンビームの速度が速くなり、電流が強いとその分加速されるイオンの数が多くなります。

もう一つのドーピング方法である熱拡散法はより単純で、高温状態である物質が別の物質へと拡散していく性質を利用しています。この熱拡散法はドーパントを拡散させたい試料に接触させた状態で高温にし、アニールします。ドーパントはガスの状態の場合もありますが、試料上にドーパントとなる元素を含む膜を成膜して拡散させる場合もあります。

IT Insight 半導体のn型、p型とドーピング

画像素材:shutterstock

n型とp型の組み合わせ

ドーピングにより作られたp型半導体とn型半導体を接合させるとトランジスタやダイオード、サイリスタなどの素子が作られます。

p型とn型の接合をpn接合と呼び、これによりダイオードが作られます。ダイオードは一方行にしか電気を流さない整流作用を持つ素子であり、電気回路などに広く利用されています。発光ダイオードもpn接合により作られます。

p型とn型、さらにp型を接合させたpnp接合やnpn接合はトランジスタとなり、スイッチングや信号増幅に利用されます。

さらに、pnpn接合もあり、こちらはサイリスタになります。サイリスタは4つ用いてブリッジ回路を作ることで交流を直流に変換できる単相全波整流回路を作り出せる便利な素子です。

他にもp型半導体とn型半導体を接合して作られる素子には、メモリなどがありますが、これらの半導体素子を小型化し、一つの基板上に集積させることで集積回路が作られます。

ドーピング技術で作り出される半導体素子

半導体デバイスを構成する素子を作り出す基礎技術の一つがドーピング技術です。ドーピング法により不純物を拡散させるとp型およびn型の半導体を作り出すことができ、このn型とp型の半導体を組み合わせることで半導体素子が作られます。ドーピング法とドーピングにより作り出されるn型半導体およびp型半導体を理解することで、半導体への理解が高まるでしょう。 

IT Insightの他記事もご覧ください

Prev

Next