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ITを用いたダイバーシティ&インクルージョンの実現事例

レンテックインサイト編集部

社会の誰もがいきいきと働ける職場を作ることは、すべての企業に共通する目標です。しかし、簡単な道のりではないのもまた、ご存じの通りです。それではダイバーシティ&インクルージョン(D&I)の達成に向けて、先進企業は具体的にどのような取り組みをしているのでしょうか。
本記事ではものづくり企業かつITを活用したケースにフォーカスし、D&Iへの取り組み事例とそこから得られる知見をご紹介します。

「ダイバーシティ&インクルージョン」とは? ──単に“多様性を認める”だけではないその本質

まずは「ダイバーシティ&インクルージョン」とは何なのか、なぜ必要なのかについて振り返っておきましょう。

「ダイバーシティ」とは、「多様性」。「インクルージョン」は「包括」。すなわち、性別や国籍、世代、障がいの有無など多様な差異を当たり前のものとし、かつ一人一人が“企業の一員として認められ、活躍できる”状態を実現するのが「ダイバーシティ&インクルージョン」です。

単に多様性を認めるだけでなく、異なる人々が一体感を持って活躍できる状態まで標榜しているのがそのポイントといえます。

「ダイバーシティ」の効果と「インクルージョン」が求められる理由

経済産業省の資料『ダイバーシティ2.0 一歩先の競争戦略へ』では、ダイバーシティの効果として下記4点が挙げられています。

  1. グローバルな人材獲得力の強化
  2. リスク管理能力の向上
  3. 取締役会の監督機能の向上
  4. イノベーション創出の促進

その裏付けとして挙げられているのが、以下のようなデータです。

  • 就職先の選択としてミレニアル世代(特に女性)は多様性・受容性の方針を重視する傾向にあるというアンケート結果
  • ダイバーシティ戦略により人材の獲得や業績の向上にメリットがあったとする先進企業のアンケート回答
  • リーマンショック後の株式パフォーマンスにおける女性活躍企業(女性取締役を有する企業)の早期回復傾向を示すチャート
  • ダイバーシティとイノベーションの成果に相関関係があることを示すBCG(ボストンコンサルティンググループ)の調査結果

一方で、働き方は従来のままに多様性だけ高めるのは推奨されません。下記グラフでは、多様性が高まった企業におけるTFP(※)の変化が示されています。
ご覧の通り、中長期計画の策定や柔軟な働き方の実施といった取り組みを行った企業においてTFPは9~10ポイント程度増加しましたが、何の取り組みも行わなかった企業では6ポイント近く低下してしまっています。
すなわち、ダイバーシティの効果を十分に発揮させるには、インクルージョンに向けて具体的な取り組みを講じることが不可欠なのです。

【多様性が生産性に与える影響(2013 ~ 2017年度のTFPの伸び)】

IT Insight 「ダイバーシティ」の効果と「インクルージョン」が求められる理由

※…TFP(Total Factor Productivity):全要素生産性。「企業における付加価値 - 労働と資本の投入」で測られる、生産性の重要指標。

ITを用いたダイバーシティ&インクルージョンへの取り組み事例

ダイバーシティ&インクルージョン実現のための取り組みとして、ITが活用されている事例には、どのようなものがあるのでしょうか。
ここでは、経済産業省が平成24年度より毎年表彰している『新・ダイバーシティ経営企業100選』に選ばれた企業のベストプラクティス集から、特徴的な3社をご紹介します。

業務の壁を打ち壊し、具体的な成果を達成した東和組立株式会社

岐阜県で自動車用ショックアブソーバーの製造に従事する東和組立株式会社は、それまで社員の属性ごとに固定されがちだった業務の壁を打ち壊すことにITやIoTを活用したといいます。例えば従来、熟練工だけが対応していた検査工程を画像判断装置やバーコード識別装置により解放。また、光の点灯で行動開始を知らせる装置や音声変換アプリにより、障がいを持つ人材とのコミュニケーションも円滑化しました。取り組みの結果は生産能力の20%向上、納期の遵守性90%達成など具体的な成果に表れたといいます。

参考:令和2年度新・ダイバーシティ経営企業100選ベストプラクティス集

“苦手をサポートし、得意を伸ばす”ことにフォーカスする川田製作所

神奈川県で金属プレス加工や金型に従事する有限会社川田製作所は、障がい者や高齢者、外国人などさまざまな人材を採用し活躍を支え成果につなげたことで、「新・ダイバーシティ経営企業100選」に選出されました。同社ではPC作業を得意とする、発達障がいの社員の得意を生かす施策として4分割画面を表示できるディスプレイを新たに導入。さらに、苦手な電話応対をサポートするためナンバーディスプレイ式の電話機を購入したとのこと。当人の苦手をカバーし、得意を伸ばすのは、ダイバーシティ&インクルージョンの基本です。

参考:参考:平成29年度新・ダイバーシティ経営企業100選ベストプラクティス集

ITに適性がある社員も苦手な社員も活躍できる電化皮膜工業株式会社

めっき・表面処理などの高度な技術を有する電化皮膜工業株式会社は、技能継承や人材不足といった課題解決の手段として2002年よりダイバーシティ推進に取り組んだといいます。そもそも事務員として登用した女性社員の素質を見抜き、ITカイゼンの責任者に抜擢するといった柔軟な対応を特徴とする同社ですが、同時にベテラン社員に配慮してIT・手書き両方の選択肢を用意するなど、ITを得意とする社員・苦手とする社員の両者を生かす経営にトライしています。

参考:平成26年度ダイバーシティ経営企業100選 ベストプラクティス集

「ダイバーシティ&インクルージョン」はデジタル・アナログの両面で推進可能

ダイバーシティ&インクルージョンとは何か、取り組むべき理由は、そして具体的な事例とは、といった点をご紹介してまいりました。
今回はITにまつわる事例に特化しましたが、もちろん柔軟な働き方制度の創設やそもそも多様な人材を受け入れる文化づくりなど、できることは数多く存在します。
『ダイバーシティ経営企業100選 ベストプラクティス集』のほかの事例も含めた先進企業の事例を参考にしつつ、自社の多様性・包括性向上に取り組みましょう。

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