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「仮想化」とは? コンテナとの違いとともに解説

レンテックインサイト編集部

IoT、デジタルツイン、エッジコンピューティングなどさまざまな場面で「仮想化」という言葉を耳にします。また、関連する用語として「コンテナ」という言葉を耳にした方もいらっしゃるでしょう。
しかし、仮想化とは何なのか、仮想化とコンテナとは何が違うのかといった質問にあなたは答えられるでしょうか。
仮想化が当たり前になった時代だからこそ、今さら聞けないその基本を押さえておきましょう。

仮想化とは? どんな種類が存在する?

「仮想化」とは、コンピューターのデータや機能を“仮想的に”作り出したり、一つに統合したり、目的に合わせて切り分けたりすることです。サーバー、ストレージ、ネットワーク、デスクトップなどのハードウエアには、当然ながらそれぞれの機器の容量や能力に合わせた制約が存在します。
しかし、仮想空間上には物理的な制約は存在しません。そこでソフトウエア上で各ハードウエアを再現したり操作したりし、自由で効率的なIT環境を生み出すのが仮想化です。

仮想化はその対象となるハードウエアや機能に合わせて、以下のような種類に分類されます。

サーバー仮想化

サーバー(データや情報を格納し、個々のクライアントPCに提供する大元のコンピューター)を仮想化し、物理的には1台のサーバーが複数台存在するかのように利用できます。

ストレージ仮想化

複数のストレージ(HD、SSDなどクライアントPCのデータ記憶領域)を仮想化・統合し、1台のストレージのように扱うことです。ディスク、ブロックなどストレージの仮想化の中にも複数のレベルが存在します。

ネットワーク仮想化

スイッチ、ルーター、LANケーブル、ファイアウォール、ロードバランサーなどネットワークを制御するハードウエアを仮想化することを意味します。VLAN、SDN、NFVといった手法が存在します。

デスクトップ仮想化

クライアントPCのデスクトップ(OS、アプリ、データなど)をサーバーから転送し、機能を仮想的に活用します。VDI(Virtual Desktop Infrastructure)やクライアント仮想化とも呼ばれ、BYOD(※)やリモートワークが普及する中で活用事例も増加しています。

※…Bring Your Own Device:PC、タブレットなど従業員が個人で所有するIT端末を業務に活用すること。

仮想化のメリットを三つのポイントで解説

仮想化の主なメリットについて三つのポイントで見ていきましょう。

メリット1:リソースの効率的な運用につながる

仮想化の一番のメリットは物理的な制約から解放されることで、自由度が高くリーズナブルなITリソースの活用が可能になることです。サーバー仮想化の場合は1台のサーバーを複数に分割することで従来は眠っていた余剰リソースを活用できるようになり、ストレージ仮想化の場合は反対に複数のストレージを仮想的に1台に集約することで、各ストレージのリソースを無駄のない配分で利用できるようになります。

もちろん、ハードウエアの導入・メンテナンス・リプレイスにかかるコストが削減できる点も見逃せません。ネットワーク・デスクトップの仮想化においても管理対象が集約されることで、人件費・保守費用の削減につながります。

メリット2:柔軟な運用が可能になる

企業が成長すれば、必要となるデータリソースも拡大するものです。仮想化により運用が容易になり、ハードウエアリソースの拡張に必要だった工数・手間を大幅に削減できるようになりました。また、仮想的に複数のサーバーを所有することで、複数のOSを同時に動かせます。それにより、古いアプリをサポートしていない新機種で使い続けることも可能になります。

加えて、デスクトップ仮想化では、クライアントPCにデータを残さないことでデータの紛失、漏えい防止につながり、BYODの導入障壁も下がります。

メリット3:事業の継続性を高める

事業継続計画(BCP)において、ITリソースの管理は要の一つです。サーバーやストレージの仮想化は物理的なハードウエアを「仮想マシン」としてコンピューター内でファイルのように扱える環境を提供します。それにより災害や障害が発生した際も複製や移行が容易に行えるようになるのです。
また、仮想マシン上のOSやアプリ、ネットワークを停止させることなく移行するライブマイグレーションが可能になれば、メンテナンスやテストのハードルが下がり、事業の安定継続につながります。

もちろん、上記のようなメリットだけではなく、ハードウエア1台に対する負荷が高まりパフォーマンスが低下停止する場合もある、運用やセキュリティに関して精通した人材あるいは学習が必要など注意すべき点もあります。

仮想化とコンテナの違いは?

近年よく耳にする「コンテナ技術」は、仮想化の一種です。
ただし、通常の仮想マシンとは異なり、共通のOSの上で、“コンテナ”としてまとめられた環境(アプリ、ミドルウエア、ライブラリ……)を利用します。

通常の仮想マシンでは、ハイパーバイザーと呼ばれるソフトウエアで、仮想環境ごとに別々にOSを用意し、環境を構築します。

それに対しコンテナはコンテナエンジンと呼ばれるソフトウエアを用いることで、OSのリソースを削減し、通常の仮想マシンよりも効率的に仮想環境を利用できます。また、OSの差異がなくコンテナがパッケージ化されているため、コピーが容易でメンテナンスや管理がしやすくなります。

一方、独自のOSで環境を構築したい場合にはコンテナは適しません。例えばセキュリティを維持するために実行環境とホストOSを切り離したい場合もあるでしょう。

コンテナを理解するにあたっては、現実の貨物を運ぶコンテナのように、規格化された箱をイメージしてみてください。そのメリットを生かせる適材適所の利用法を考えていきましょう。

クラウド全盛の時代だからこそ、技術としての仮想化に注目を

「仮想化」について、その種別やメリット、コンテナとの違いを含めて解説してまいりました。サーバー仮想化はすでに広く普及しており、2022年現在はテレワークの浸透を背景に、デスクトップ仮想化への熱が高まっているようです。クラウド全盛の時代だからこそ、技術としての仮想化の動向にも気を配っておきましょう。

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