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分かりやすいOEEの計算方法と注意点

レンテックインサイト編集部

製造現場DXの一環として「見える化」に注目が集まっています。そこで検討が求められるのが“何を見るか”。KPI(重要業績評価指標)の標準化・見直しに取り組む生産管理・工程管理従事者の方も多くいらっしゃるでしょう。
ISO22400でも重要指標として用いられるOEEは、そんな状況下において特に注目を集める指標の一つです。
本記事でOEEの意味や計算方法、同指標を用いた改善事例について押さえましょう。

OEEとは? 計算方法と注意点を解説

OEE(Overall Equipment Effectiveness:総合設備効率)は、その名の通り、生産設備の効率性を総合的に算出し、評価するための指標です。その計算方法は以下の通り。

OEE = 設備有効性(可動率) × 工程効率 × 良品率

上記の三つの要素はそれぞれ下記の計算式により算出します。

(A)設備有効性(可動率)= 設備の実際の稼働時間 ÷ 設備の電源オン時間

(B)工程効率 = 生産数量 × 理想のサイクルタイム ÷ 設備の実際の稼働時間

(C)良品率 = 良品数 ÷ 生産数量

「設備有効性」に関して注意したいのが、基本的には「稼働率」ではなく、「可(べき)動率」を用いて算出するということです。

  • 可動率 = 設備の電源オン時間に対する実際に稼働した時間の割合。設備を動かしたいときに正常に動かせた時間の割合を示す。
  • 稼働率 = 設備の生産能力に対する生産実績の割合。製品のオーダー数量によっても左右される。

あくまで設備の生産能力を測るという目的にフォーカスした場合、受注状況などに左右され100%を超えることもある稼働率は指標として不適となります。ただし、実際の稼働時間をどのように定義するのかなど、細かい指標に関しては企業や製品によって運用が異なります。また、工程効率に関しても生産個数で測るのか、稼働時間で測るのかなど、定義が揺れる場合があります。

上記を参考に、自社の状況に合わせてあるべきOEEについても深く検討することをおすすめします。

OEEは「三つのロス」の特定につながる

OEEの価値は、導き出したOEEと、理想のOEE(100%)を比較することにより発揮されます。OEEが理想を大きく下回っていた場合、その原因は設備有効性にあるのか、工程効率か、はたまた良品率かと深掘りすることで、原因特定を進めていくことができます。

先に挙げた3要素は、以下の「三つのロス」の特定につながるとされています。

(A)設備有効性(可動率):設備ロス
(B)工程効率 :工程ロス
(C)良品率 :品質ロス

これを下記のような個別のロスの要因の例と掛け合わせれば、「○○がOEEの低下につながっているのではないか」と仮説を立てやすくなるはずです。

  • 設備の故障により生じるロス
  • 設備の不具合やチョコ停、速度低下により生じるロス
  • 仕掛け品の段取り作業や刃具交換にかかるロス
  • 設備の立ち上がりを待つまでの時間に発生するロス
  • 不良品の発生による良品率の低下が生むロス

個別のラインで不統一だった評価指標を、OEEで一元化することでTPM(全員参加の生産保全)の基盤が構築できるはずです。『2020年版ものづくり白書|出典:経済産業省』では、センサーやカメラから取得したデータをOEEと紐付け、各拠点に「OEEフォーカスチーム」を設置することで改善活動に取り組む日本ガイシ株式会社の事例が取り上げられています。

ISO22400の位置づけとOEEとの関係

ISO22400は、MES(Manufacturing Execution System:製造実行システム)にフォーカスした標準化指標です。MESは、各工程を実際の生産ラインと関連付け、その実情の計測や管理、指示出しまでを一気通貫して行うために用いられるシステムのこと。「実行」と銘打つ通り、製造が実際に行われる工程に深く紐付いていることが特長です。

ISO22400は、生産性、品質、能力、環境、在庫管理、保全の六つの領域にて、合計34の指標(KPI)を定義しています。OEEが含まれるのは、そのうち「生産性」のカテゴリです。

ISO22400は2010年代より検討を重ねられてきましたが、IoT時代のKPI標準化への要請により近年さらに注目が高まっているように思えます。34の指標すべてを管理する必要はないため、自社のスコープと一致する指標をピックアップして利用しましょう。その中でもOEEはさまざまな現場でスタンダードに用いられる代表的なKPIの一つです。

グローバルに用いられる国産の指標、OEE

生産設備のロスを減らし、効率性を高めるための指標として知られるOEEについて計算方法と注意点、活用のポイント、ISO22400との関係などを取り上げ解説してまいりました。OEEは、公益社団法人日本プラントメンテナンス協会によって開発された指標ですが、日本よりも海外での利用が活発だと言われます。
グローバルに用いられる統一的なKPIとして、この国産の指標を活発に活用していきましょう。

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