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2022年版ものづくり白書のポイント

レンテックインサイト編集部

IT Insight 2022年版ものづくり白書のポイント

2022年版のものづくり白書が、同年5月に公開されました。ものづくり白書は、経済産業省、厚生労働省、文部科学省が共同で作成している報告書であり、製造業の現状と将来を知る上で重要な資料です。製造業に関わる人であれば、毎年欠かさずにチェックしておきたいものといえます。

本記事では、2022年版ものづくり白書の重要なポイントを抜粋してご紹介します。

製造業を取り巻く社会情勢の変化

2022年版ものづくり白書では、製造業を取り巻くさまざまな社会情勢の変化について述べられています。新型コロナウイルス感染症の感染拡大や原材料価格の高騰、部素材不足といった社会情勢の変化が、製造業の事業活動に大きな影響を及ぼしているためです。

製造業各社は、社会情勢の変化を素早く捉え、柔軟に対応しながら成長の機会を伺っていかなくてはなりません。ここでは、本白書で取り上げられている社会情勢の変化の中から五つのトピックスについてご紹介します。

原油価格の高騰

2021年後半から上昇傾向にあった原油価格が、ウクライナ情勢の影響によって高騰しています。その結果、素材系の業種を中心に生産コストの増加を引き起こしている状況です。具体的には、原油を直接的に原材料とする「石油・石炭製品」、石油製品を中間投入として用いる「化学製品」、燃料として用いる「窯業・土石製品」「鉄鋼」といった業種において、生産コストが特に増加している傾向にあります。

原油価格の高騰による生産コストの増加は、製造業の利益を圧迫する恐れがあります。そのため、業務効率化に取り組んでコストを削減したり、製品やサービスの付加価値を向上させて値上げを図ったりと、利益を確保するための動きが強まっていくと予想されています。

部素材不足

2021年以降、さまざまな部素材が不足しています。日本の製造業へ特に大きな影響を与えているのが、半導体不足です。半導体不足は、自動車・輸送用機器・電機・電子といった加工組立製造業はもちろん、石油・ゴム製品・非鉄金属といった基礎素材製造業にまでマイナスの影響を及ぼしました。

政府は国民生活や経済活動に悪影響を及ぼすことがないよう、重要物資などの需給動向を注視しつつ、国内で生産拠点を整備しようとする場合の設備導入などを支援しています。特に、半導体や蓄電池といった今後さらに需要が高まっていくと予想される部素材については、手厚い支援が行われていく予定です。

デジタル

2010年前後から、製造業のIT投資額は横ばいとなっています。しかし、IT投資で解決したい経営課題は「働き方改革」や「社内コミュニケーション強化」から「ビジネスモデルの変革」へと徐々に移行しており、意識の変化が感じられます。実際に、生産設備の自動化やAIを活用したデータサイエンスによって製造現場の課題を解決し、生産性向上を目指す取り組み事例も増えてきました。

デジタル技術の活用で課題となるのは、サイバーセキュリティ対策とIT人材の確保です。そこで政府は、IPA(独立行政法人情報処理推進機構)による「サイバーセキュリティお助け隊サービス」の開始や、経済産業省が設立したIT・データ分野に関する教育訓練講座など、企業がデジタル技術を活用しやすくなるように支援を行っています。

ビジネスと人権

昨今では、欧米諸国を中心に、企業活動における人権への負の影響を特定し、それを予防軽減させ、情報発信をする人権デュー・ディリジェンス(DD)が注目されています。EU域内で事業を行う大企業へ人権および環境に関するDDを義務化する「企業持続可能性デュー・ディリジェンス指令案」や、アメリカが中国の新疆ウイグル自治区で生産された製品の輸入を禁止する「ウイグル強制労働防止法」など、法整備も進んでいる状況です。

日本でも、企業のサプライチェーンにおける人権尊重のためのガイドラインを2022年夏頃までに策定すべく、経済産業省が検討会を立ち上げています。これからは、今まで以上に人権を尊重した企業活動が求められるようになるでしょう。

カーボンニュートラル

2021年には、COP26をはじめとするカーボンニュートラルの実現に向けた国際的な議論が大きく進展しました。現在は全世界のCO2排出量の約9割にあたる150を超える国・地域が年限付きのカーボンニュートラルを宣言しています。

製造業を含む産業部門では、カーボンニュートラルとその市場形成に向けて、民間企業が主体となった取り組みが進められています。日本でも、企業主体の野心的なカーボンニュートラルに向けた取り組みを後押しする仕組みである「GXリーグ」を構築中です。

IT Insight 2022年版ものづくり白書のポイント

製造業が取り組むべきことは?

上述したように、製造業を取り巻く社会情勢は大きく変化しています。そういった状況下で、製造業は何から取り組んでいくべきなのでしょうか。

まず挙げられるのが、カーボンニュートラルの実現に向けた取り組みです。日本は2050年までのカーボンニュートラル実現を宣言しており、政府が民間企業の取り組みを後押ししています。その影響もあってか、サプライヤーも含めたサプライチェーン全体の脱炭素化やCO2排出量・削減量の可視化が国内でも拡大しています。また、大企業だけでなく、中小企業にもCO2排出量の削減が広がりつつある状況です。政府からの支援をうまく活用しながら、取り組みを進めていきましょう。

次に、DXによる競争力向上にも取り組むべきといえます。以前のものづくり白書では、社会の急激な変化に対応しながら自己を変革していく「企業変革力(ダイナミック・ケイパビリティ)」を強化する必要性が示されていました。2022年版ものづくり白書では、企業変革力の強化に活用できるデジタル技術として5GやMES(製造実行システム)の名前が挙げられています。いずれも製造現場のデータを活用する際に基盤となる技術であるため、導入を検討してみるのもよいでしょう。

ものづくり白書を参考に製造業の改革を

ものづくり白書では、製造業の現況や課題が分かりやすく整理されています。本白書内で述べられていますが、欧米企業に比べると日本企業の稼ぐ力は弱い傾向にあり、グローバルな市場で競争力を維持すべく改革が求められている状況です。毎年公開されるものづくり白書を参考にしながら、自社の改革に取り組んでいきましょう。

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