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ローカル5Gの最新動向

レンテックインサイト編集部

IT Insight ローカル5Gの最新動向

ローカル5Gは、企業や自治体が独自に構築する5Gネットワークです。2022年現在、携帯事業者が提供する5Gは徐々に普及していますが、ローカル5Gはどうなっているのでしょうか。

ローカル5Gとは

ローカル5Gでは、携帯事業者ではなく企業や自治体が主体となり、特定のエリア内で自営の5Gネットワークを構築・運用・利用できます。ローカル5Gの利用には国で指定された無線局免許の取得が必要であり、2019年末から申請受付が始まりました。

ローカル5Gは、地域や産業分野における個別のニーズに応じて、さまざまな主体が柔軟に構築・利用できる新しい移動通信システムとして期待されています。制度化が決まった当初から、工場・倉庫・建設現場・農業・防災といった領域における課題の解決や新たな価値の創造に役立つ技術として、注目を集めてきました。

総務省が公表している「ローカル5Gの普及展開に向けて」では、ローカル5Gの特長を次のようにまとめています。

  • 携帯事業者によるエリア展開が遅れる地域において5Gシステムを先行して構築可能
  • 使用用途に応じて必要となる性能を柔軟に設定することが可能
  • 他の場所の通信障害や災害などの影響を受けにくい
  • Wi-Fiと比較して、無線局免許に基づく安定的な利用が可能

ローカル5Gの免許取得状況

2020年3月に5Gの商用サービスが始まってから2年以上経過した今、ローカル5Gの免許取得状況はどうなっているのでしょうか。

ローカル5Gの申請者及び免許人一覧」によると、2022年3月末時点での申請者及び免許人は108者であり、うち免許取得済みが106者となっています。過去のデータを見ていくと、2021年1月末時点では43者、2021年11月末時点では86者となっており、免許取得者は順調に増えているといえるでしょう。

事業者名を詳しく見ると、通信系事業者の割合が多いのはもちろんですが、製造業の免許取得者も目立っています。ほかには、地方自治体や大学、建設業、鉄道会社、商社なども免許を取得している状況です。

ローカル5Gの実用化状況

上述した通り、ローカル5Gの免許取得者は順調に増えています。では、免許取得後の実用化はどの程度進んでいるのでしょうか。

残念ながら、ローカル5Gの利用はいまだ実証実験レベルに留まっており、実用化には至っていないケースが多いです。例えば、総務省はローカル5Gを活用したソリューションを創出すべく、「課題解決型ローカル5G等の実現に向けた開発実証」を進めています。この開発実証は2020年度から継続して実施されており、2021年度の結果は「ローカル5G開発実証報告書」にまとめられています。どのような実証実験が行われたのか、一部を抜粋して見てみましょう。

  • ぶどう果樹園にローカル5G環境を構築し、草刈・防除ロボットの遠隔監視制御、スマートデバイスを通じたリモート指導、AIによる病虫害被害の予兆判定などを実施する。
  • 工場敷地内にローカル5G環境を構築し、AIによる工場設備の異常検知、完成した部品の検品作業、スマートグラスを用いた遠隔指導・作業支援などを実施する。
  • 土木建設現場にローカル5G環境を構築し、8Kカメラを活用したリアルタイムモニタリング技術を用いて、建設現場におけるリスクの発見・回避の早期化・遠隔化などを実施する。
  • モデル地域にローカル5G環境を構築し、プライバシーなどに配慮した上で、自動運転車両などの移動体に搭載したカメラを活用したAI顔認証・AI画像認識によって地域の見守りを実施する。

このように、スマート農場・スマート工場・スマート建設・スマートシティなどをイメージさせるさまざまな実証実験が行われていますが、その成果を実用化するためにはさらなる検討が必要となっています。「課題解決型ローカル5G等の実現に向けた開発実証」は2022年度も実施される予定であり、その成果報告についても見ていく必要があるでしょう。

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ローカル5Gの実用化に向けた課題

ローカル5Gが本格的に実用化されるには、いくつかの課題があると言われています。

例えば、ローカル5Gによって十分な費用対効果を得にくいという課題があります。これは、現行の4GやWi-Fiでも十分な通信速度を実現できているため、わざわざ5Gにする必要性が感じられないという内容です。今後、5Gでなければ実現できない用途が明確になり、ローカル5G環境の構築にかかるコストよりもメリットが大きいと分かれば、実用化が進む可能性があります。

また、5Gに対応したデバイスがまだまだ少なく、環境だけ整えても意味がないという課題もあります。5G対応のスマートフォンやタブレットPCは徐々に増えているものの、工場などで使われる専門的なデバイスやロボットは5G未対応のものが多く、5G環境下では選択肢が少なくなってしまうという内容です。5G対応のデバイスは徐々に増えていくと予想されていますが、その頃には通信事業者による5Gネットワークが充実しており、ローカル5Gをあえて構築するメリットが少なくなる恐れもあります。

ローカル5Gはしばらく実証実験が続く

2022年現在、ローカル5Gは実用化に向けた実証実験が積極的に行われている状況です。徐々に事例やノウハウが蓄積されているものの、本格的に普及するのはもう少し先になると考えられます。また、5Gが成熟期に至るのは、2023年以降と言われています。ローカル5Gの実証実験に関する情報を得ながら、自社で活用する方法についても検討していくと良いでしょう。

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