3D外観検査機は、製造業で幅広く活用されている検査機器です。以前に比べて精度や検査速度が格段に進歩しており、抜き取り検査だけでなくインラインでの全数検査に組み込む事例も増えています。検査の自動化は製造業にとっての永遠のテーマですが、3D外観検査機がその解決策の一つになるでしょう。
本記事では、改めて知っておきたい3D外観検査機の仕組みや用途を解説します。
3D外観検査機は、検査対象物を立体的な三次元データとして捉え、外観検査を行う検査機器です。検査対象物を上や横から見るだけの2D外観検査機では見つけにくい不具合や、見過ごされていた不具合であっても、3D外観検査機であれば検出しやすくなっています。
例えば、大小さまざまな電子部品が搭載されるプリント基板の検査では、平面でしか捉えられない2D外観検査機ではなく、立体的に捉えられる3D外観検査機が採用されるケースがほとんどです。
3D外観検査機にはさまざまな検査方式がありますが、大きく次の2種類に分けられています。
ここでは、パッシブ方式に含まれるステレオ式と、アクティブ方式に含まれる光切断法・位相シフト法の三つの検査方式の仕組みを簡単にご紹介します。
ステレオ式では、人間の目と同じように二つのカメラを用いて検査を行います。二つのカメラで異なる位置から撮影して得られた視差画像をもとに、「三角形の一辺とその両端角が分かれば三角形が成立する」という性質を使った三角測量によって、検査対象物の距離や高さを計算します。
ステレオ式は仕組みが単純なため、比較的安価かつ高速に外観検査が行えます。一方で、凹凸のない位置では視差画像の処理がうまくいかず、高精度に検査できない場合もあるのがデメリットです。
光切断法は、ライン状のレーザー光を検査対象物に照射し、反射光をカメラで撮影して画像処理することによって三次元データを得る方式です。照射したレーザー光は検査対象物の表面の高さに応じて変化するため、その変化量をもとに距離や高さを計算できます。
光切断法では、1回の計測で1ライン分の検査しかできないため、全体の検査結果を得るまでに時間がかかる傾向にあります。上述したステレオ方式に比べると速度は落ちてしまいますが、凹凸のない位置であっても精度よく検査できるのがメリットです。
位相シフト法は、プロジェクターから対象物に対して縞パターンを投影し、パターンの変化をもとに三次元データを得る方式です。上述した光切断法によく似ていますが、位相シフト法では縞パターンをずらしながら複数回投影することで、より高精度な検査を実現しています。
位相シフト法は検査機器自体が高価になる傾向にありますが、1ラインずつ検査を行う光切断法よりも高速かつ高精度に検査を行えます。現在は、影になる部分ができないように4方向プロジェクターを搭載した機種が多く、プリント基板のように電子部品が密集した検査対象物であっても問題なく検査できるようになっています。
では、3D外観検査機は実際にどのような用途で活用されているのでしょうか。
例えば、電子機器の製造工程では随所に3D外観検査機が使用されています。特に多いのがプリント基板の外観検査であり、表面に実装された電子部品の位置ずれ・誤配置・浮き・傾きなどを確認するために3D外観検査機は欠かせません。また、プリント基板で最も多いはんだ付け不良を検出するためには、はんだの幅も高さも同時に検査できる3D外観検査機が適しています。
ほかにも、3D外観検査機は金属加工品や樹脂成形品の外観検査に用いられているケースが多いです。例えば、金属の加工では、かしめや溶接のように加工した箇所の深さや高さをもとに品質を保証する場合があります。3D外観検査機であれば、深さや高さを正確な数値で管理できるので、品質保証に役立ちます。また、2D外観検査機では欠けや打痕といった形状の欠陥を色の違いでしか検出できませんが、3D外観検査機であれば実際の形状がどうなっているのかを視覚的に判断することが可能です。
3D外観検査機は、食品工場や自動車工場、医薬品工場など、あらゆる製造業で導入されています。画像処理技術の向上に伴って精度や検査速度が上がっているため、目視検査や2D外観検査機での検査に限界を感じているのであれば、3D外観検査機への置き換えを検討してみてもよいでしょう。
人の目に近い感覚で検査できる3D外観検査機は、目視検査からの脱却に役立ちます。また、昨今では品質要求の高まりに伴って検査結果のデータ管理が重要になっていますが、そういった観点でも3D外観検査機の導入は最適です。3D外観検査機を活用して、自社の外観検査の自動化・高度化を目指してはいかがでしょうか。