AIを活用する上で、「特徴量」という概念を理解しておくことは極めて重要です。特徴量の設計はAIを学習させるための鍵となるプロセスであり、専門的な知識やノウハウが求められます。
本記事では、AIを語る上で欠かせない特徴量とは何かを解説します。
特徴量とは、AIがデータのどの部分に着目して学習すればよいかを示す指標です。簡単に言うと、データの特徴を数値で表したものです。
例えば、私たちは人を識別する際に、顔や身長・体重・性別・年齢などの特徴をもとに判断しています。実際の身長や年齢を知らなくても、ある程度であれば推測することも可能です。
しかし、AIが人を識別する場合は、私たちのように感覚では識別できません。それぞれの特徴を具体的な数値で知ることで、ようやく識別できるようになります。そこで、特徴量という概念が必要になるのです。
AIが学習するためには膨大な量のデータを与える必要がありますが、特徴量が明確でなければAIは正しく学習できません。また、特徴量の精度が悪ければ、AIによる予測・分析の精度も悪くなってしまいます。そのため、あらかじめ人がデータを確認して特徴量を抽出し、AIが学習しやすいように整理しておく必要があるのです。この作業は「特徴量設計」と呼ばれており、AIを活用する上で重要なプロセスとなっています。
AIはすでにさまざまな用途で活用されていますが、用途に応じた適切な特徴量を設計しなければ正しく扱うことができません。ここでは、製造業におけるAIの用途を三つ取り上げて、特徴量の具体例をご紹介します。
需要予測とは、自社製品やサービスが将来的にどの程度売れるかを予測する取り組みです。例えば、食品製造業がAIによる需要予測を実施する際は、過去の売上実績や受注情報、在庫状況、気温などが主な特徴量になると考えられます。場合によっては、景気の動向や広告宣伝費なども需要に影響するかもしれません。
AIによる外観検査など、製造業において画像認識AIの活用が広まっています。画像認識では、上述した需要予測に比べると数値化しにくい特徴が多いため、特徴量設計がやや難しくなります。製品の外観検査であれば、色や形、大きさを特徴量に設定し、ある数値よりも大きければ不良品と判定する、といった流れで外観検査が行われます。
予知保全とは、設備の劣化状態を予知して故障する前に部品を交換したり、修理したりすることを指します。AIによる予知保全では、IoTで継続的に設備のデータを収集し、その変化をもとに劣化状態を予知します。特徴量としては、稼働率、稼働時間、音、振動、電流値などがあり、正常な数値から外れるデータが増えてくると故障の予兆と捉えるケースが多いです。
特徴量設計はAIを効果的に活用するために極めて重要なプロセスであり、誰でも簡単に行えるものではありません。膨大なデータから適切な特徴量を抽出するには、一般的にデータサイエンティストと呼ばれる専門知識を持った人材が必要になります。上述した特徴量の具体例は比較的分かりやすい事例であり、実際は想定外の特徴量が目的を達成する上で重要になるケースも多いです。視野を狭くしすぎず、データを俯瞰して見なければ、適切な特徴量を抽出することは難しいでしょう。
また、特徴量が少ないとAIが十分に学習できなくなりますが、多すぎてもノイズが増えて精度が悪くなってしまう可能性があります。目的を達成するためには、AIが学習する上で過不足がないように特徴量を抽出しなければならないのです。
昨今のAIで主流になっているディープラーニングでは、AI自身がデータの中から特徴量を抽出して学習できるようになっています。そのため、人が特徴量設計で苦労することは少なくなってきましたが、AIは完璧ではありません。間違った特徴量を抽出してしまったり、学習に必要なデータが増えてしまったりする可能性もあります。特徴量設計を完全にAIに任せてしまうのではなく、AIを扱う人も正しい知識を身につけておき、サポートできるようにしなければなりません。
特徴量を抽出する代表的な方法としては、次の三つが挙げられます。
こういった方法の基礎知識や、代表的なアルゴリズムの仕組みだけでも押さえておけば、AIを活用しやすくなるでしょう。
AIを効果的に活用するためには、ただ単にAIを導入するだけでは不十分です。適切な特徴量を抽出し、AIを正しく学習させられる人材が必要になります。AI活用の鍵を握る特徴量設計について、ある程度の知識は身につけておくようにしましょう。